たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

ノートルダム・ファイティング・アイリッシュとKKK

以前、アメリカのノートルダム大学の「ファイティング・アイリッシュ」というニックネームについて記事を書いたことがありますが、その由来について今日のアイリッシュ・タイムズのフランク・マクナリーさんのコラムに新たな情報が書かれていたのでご紹介したいと思います。

 

www.irishtimes.com

 

前回の私のブログ記事では、諸説ある中で最も有力なのは「第3代の大学学長を務めたウイリアム・コービー神父が、南北戦争時にアイリッシュ系兵士で構成される旅団の従軍聖職者だったから、というもの。」と書きました。

 

今回のマクナリーさんのコラムでは別の説が紹介されています。まず「アイリッシュ」の部分。これは、プロテスタント系のライバル大学がカトリック系のノートルダム大学につけた蔑称から来ているというもの。「Papist」(教皇主義者: イギリス宗教改革の時に英国国教会(プロテスタント)側がカトリック教徒に対して使った言葉)、「Dirty Irish」、「Horrible Hibernians」(ハイバーニアはアイルランドの美称)などと呼ばれていたそうです。

 

さて、「ファイティング」の部分ですが、1924年5月に学生と地元のKKK支部との間で発生した紛争に由来するところが大きいようです。当時、ノートルダム大学のあるインディアナ州KKK支部の会員は425000人いて、これはディープ・サウスのアラバマジョージアミシシッピの会員を合わせたよりも多かったようです。

 

KKKは黒人差別で有名ですけれども、黒人以外のマイノリティーも迫害してしました。ノートルダム大学とKKKインディアナ州支部の本部は同じサウス・ベント市にあり、ここではKKKのターゲットは主にカトリックで、特にノートルダム大が目の敵にされていました。

 

KKKインディアナ支部1924年に「アメリカ的価値観が脅かされている」として集会を計画します。学長さんなどは、これは暴動を誘うための罠だとして挑発に乗らないようにと警告していましたが、結局のところ暴力的な衝突が発生し、それは3晩にわたって続きました。

 

この衝突は学生側の勝利に終わり、KKKは敗走します。学生の運動能力も大きな武器になったようで、これが「ファイティング」のイメージの強化にもつながりました。KKK本部の2階にともっていた最後の電球を壊すために、アメフト・チームのスター選手だったクォーターバックが起用され、正確なスローで目的を達成したそうです。

 

また、じゃがいもを投げつけてKKK本部の窓を壊したなんていうディテールを聞きますと、さすが「ファイティング・アイリッシュ」の名に恥じないと納得してしまいますね。

 

もちろん、前回も書いたように、エイモン・デ・ヴァレラが1919年にこの大学を訪れて独立運動の支援を訴えたことも「ファイティング」および「アイリッシュ」とノートルダム大学を関連付けた決定的要素の1つにもなっています。

 

 

ノートルダム大学は1927年に以前は蔑称だった「ファイティング・アイリッシュ」を公式ニックネームとして採用します。かつての嘲りの言葉を自らのブランドに代えたのは、

 

  • クエーカー教徒 - もともとはこの派の人びとが神秘体験にあって身を震わせることからクエーカー(震える人)と俗称されるようになった
  • フランス印象派 - モネの『印象・日の出』を批評家が揶揄して印象派といったことからこの名前がついた
  • サフラジェット - 参政権を求める人々は正式にはサフラジストと呼ばれていたが、婦人参政権運動を行う特定の団体を矮小化する意図で、女性を意味する接尾語であるetteを組み合わせて造られた言葉

 

などがあるそうです。

 

 

 

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”ゴールデン・ヴィザ”が急遽停止に

アイルランドには俗に”ゴールデン・ヴィザ”と呼ばれる富裕層向けヴィザ・プログラムがあったのですが、その申し込みが昨日終了となりました。決定したのは一昨日のことですから突然といってもいいと思います。アナウンスしてから実際の停止までに時間があると、かけこみ申請が増える可能性があるので、それを警戒したということです。停止の理由は中国からの申請が急激に増えているからのようです。

 

このプログラムは正式には移民投資家プログラム(IIP)と呼ばれます。個人資産が200万ユーロある人が対象になります。アイルランドの会社に100万ユーロ投資するか、50万ユーロ(場合によっては40万ユーロ)を寄付することが条件となります。

 

2012年以降、このプログラムにより合計12.5億ユーロの資金がアイルランドに入ってきたとのこと。資金を受け取ったのは、不動産会社のBartaやFitzwilliams、トリニティ大学やアイルランド国立大学コーク校、住宅関連の慈善団体であるiCareやPeter McVerry Trustだそうです。

 

2022年の申請者は1316人だったのですが、そのうち41人を除きすべてが中国人。このプログラムが終了するのではないかという憶測がでていたことから駆け込み申請が増えたようで、これは過去最高の人数だったそうです。

 

2022年に申請後にヴィザが認められたのは306人。そのうち282人が中国人でした。2021年は264人中251人が中国人でした。

 

このプログラムはリーマン・ショック後の2012年に導入されました。その頃はアイルランドの経済も傷んでいましたので、そこに投資を呼び込みたかったということのようです。理想としてはちゃんとした投資戦略を持つ投資家に来てもらい、雇用の創出にもつなげたい思惑もあったのですが、単にお金をだして「ヴィザを買う」だけの人が増えてしまったようです。そこで、このプログラムの役割は終了したと判断されたようです。

 

中国の人がなぜ増えたかというと、やはりエージェントみたいな人がいて、宣伝してるみたいですね。

 

このヴィザで滞在している人が追い出されるというわけではありません。既に申請している人の審査も続けられるそうです。

 

www.irishtimes.com

 

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2022年に見た映画

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2022年は11本の映画を見ました。

 

Belfast (2021 年、イギリス)

邦題:ベルファスト

2/8 at Light House Cinema

監督: ケネス・ブラナー

出演: ジュード・ヒルカトリーナ・バルフ、ジェイミー・ドーナンジュディ・デンチ

北アイルランド紛争時のベルファストを舞台にした映画。ストーリーの中心はプロテスタントの労働者階級の一家。主人公は末っ子バディー。両親と兄、そして父方の祖父母と暮らしています。紛争に翻弄されながらも、家族の絆やコミュニティとのつながりを大切にしながら日々を送る様子が描かれます。重たいテーマですが、思っていたよりは軽いタッチのハートウォーミングな映画でした。昨年のアカデミー賞では、ケネス・ブラナー脚本賞を受賞。監督賞・作品賞にノミネートされたほか、キアラン・ハインズ助演男優賞ジュディ・デンチ助演女優賞にノミネートされました。

 

Jujutsu Kaisen 0 (2021 年、日本)

原題: 劇場版 呪術廻戦 0

3/20 at Cineworld IMAX

監督: 朴 性厚

まったく予備知識はなかったのですが、日本のアニメを劇場でやっているということで見に行きました。IMAX版で見たんですよね。IMAXで映画見たのはじめてかも。

 

Top Gun: Maverick (2022 年、アメリカ)

邦題:トップガン マーヴェリック

6/12 at Light House Cinema

監督: ジョセフ・コシンスキー

出演: トム・クルーズマイルズ・テラージェニファー・コネリージョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマン、エド・ハリスヴァル・キルマー

実は私は最初の『トップガン』を見てないのですよ。でもすごく評判がよかったので見に行きました。前作を見てなくても大丈夫。流れはだいたいわかります。現場をあがる寸前の型破りな一匹オオカミが、若い飛行士を率いて無茶なミッションをやりとげる。見ごたえあります。

 

Pompo: The Cinephile (2021 年、日本)

原題: 映画大好きポンポさん

7/4 at Light House Cinema

監督: 平尾隆之

これも日本のアニメが劇場公開ということで見に行きました。映画好き向けのいろんな仕掛けがあって楽しいです。上映時間が90分ぴったりなんですよね。

 

Elvis (2022 年、アメリカ)

邦題: エルヴィス

7/14 at Light House Cinema

監督: バズ・ラーマン

出演: オースティン・バトラー、トム・ハンクス、オリヴィア・デヨング、

エルヴィス・プレスリーの伝記映画。オースティン・バトラーかっこいいですね。最初トム・ハンクスが出てるのわからなかった。私はエルヴィスが太ってからの頃しかリアルタイムでは知らないのですよね。腕の下にひらひらのついた白い服着ていた頃。でも、若い頃はかっこよかったんだろうなというのはわかりました。なんで海外公演しなかったのかも。

 

Bullet Train (2022 年、アメリカ)

邦題: ブレット・トレイン

8/4 at Light House Cinema

監督: デヴィッド・リーチ

出演: ブラッド・ピットジョーイ・キングアーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之マイケル・シャノンサンドラ・ブロック、ベニート・A・マルティネス・オカシオ、ローガン・ラーマン、ザジー・ビーツ、マシ・オカ福原かれん

日本の新幹線を舞台にした荒唐無稽な痛快アクション映画。原作は伊坂幸太郎の『マリアビートル』。登場人物が複雑にからみあい、ヤクザやゆるキャラなどお約束の不思議の国ニッポン的アイコンがたくさんでてくる、スピード感とユーモアいっぱいの怪作。真田さんがかっこいいです。

 

An Cailin Cifin (2022 年、アイルランド)

8/15 at Light House Cinema

監督: Colm Bairéad

出演: Catherine Clinc、Carrie Crowley

この映画がアイルランド語映画として初めてアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたのでアイルランドではちょっと盛り上がっています。母親の妊娠中に親戚の家に預けられる少女。その家の秘密がしだいに明らかになっていくというストーリーです。

 

Where The Crawdads Sing (2022 年、アメリカ)

邦題: ザリガニの鳴くところ

8/26 at Light House Cinema

監督: オリヴィア・ニューマン

出演: デイジーエドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、マイケル・ハイアット

家族がちりぢりになったあと、ノースカロライナの湿地帯で1人で生きる少女。街の少年の1人と仲良くなり、読み書きなどを教わるが、少年は大学進学のため街を離れる。少女は成長し、別の青年と結婚の約束までするが、その青年は別の女性とも婚約していたことがわかる。その翌日、青年の死体が発見された。少女は殺人の嫌疑をかけられるが。。。

 

Decision To Leave (2022 年、韓国)

邦題: 別れる決心

10/26 at Light House Cinema

監督: パク・チャヌク

出演: Park Hae-il、Tang WeiLee、Jung-hyun

韓国のロマンチック・ミステリー映画。ある入国審査官が趣味の山登りに出かけ転落死。中国生まれの妻が殺人の疑いをかけられるが取り調べを担当した刑事と恋仲となり、最終的には立件とならず。恋仲となったのは刑事の持つ証拠を破棄させることが目的だったのではないかと刑事は疑う。女性は再婚したのだが、その相手がまた殺されてしまい、刑事と女性は再び対峙することになる。

 

The Banshees of Inisherin (2022 年、アイルランド/イギリス/アメリカ)

邦題: イニシェリン島の精霊

10/27 at Light House Cinema

監督: マーティン・マクドナー

出演: コリン・ファレルブレンダン・グリーソンバリー・コーガン、ケリー・コンドン

今回のアカデミー賞では、作品賞・監督賞のほか、ファレルが主演男優賞。グリーソンとコーガンが助演男優賞にノミネートされています。アイルランド西部の島に暮らす2人の男。長い友人だったのだが1人が絶交を言い出す。お前と話すのは時間の無駄だからと。今度話しかけたら自分の指を一本づつ切っていくからと。で、実際に切っていく。アイルランドののどかな田園風景を舞台にしたブラック・コメディー。

 

Nothing Compare (2022 年、アイルランド/イギリス/アメリカ)

11/2 at Light House Cinema

監督: Kathryn Ferguson

出演: シネイド・オコナー

シネイド・オコナーのドキュメンタリー映画フェミニスト的な視点から彼女のキャリアを描きます。アイルランドではここ10年ほどで中絶がある程度認められるようになったりしたわけだけど、オコナーはそうした女性の権利運動のグランドマザーなのだ、という作りです。最後に今のオコナーが出てきて一曲歌うんだけど、酸いも甘いもかみ分けた年輪を感じさせます。

 

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デイリーマウント・パークで蚤の市

先日、近所を歩いていたら、こんなポスターが目にとまりました。

 



フィブスボロで蚤の市があるようです。場所はデイリーマウント・パークの駐車場です。ポスターの一番上のところに、「ボヘミア・フリー・マーケット」と書いてありますが、これはデイリーマウント・パークがボヘミアンズFCのホーム・グラウンドだからでしょう。

 

このマーケットは LE Zeitgeist Flea Market という組織が運営しているもののようです。この組織は去年はうちの近所の学校の校庭を借りて月に一回ぐらいの割合で蚤の市を運営していました。今年から場所を代えてということなのでしょうか。

 

というわけで昨日の日曜日に行ってきました。屋外と屋内と両方あって、屋内は結構広いです。近所の学校でやってたときよりもお店は2倍以上に増えているんじゃないでしょうか。

 

 

売っているものはファッション関係が多かったです。女性用の古着やアクセサリーなど。また絵などの美術関係の出店もありました。私が欲しいようなガラクタといいますかビンテージの小物を売っている店は3店舗ぐらいしかなかったです。残念ながら私は欲しいものが見当たらず、手ぶらで帰りました。

 


夜はお友だちとモロッコ料理の店に行ってきました。ウィックロー・ストリートのEl Bahia という店。私はチキンのベルベル・クスクスというのを食べました。おいしかったです。

 



 

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ブリジッドという名前の復活はあるのか

聖ブリジッドの日の話を先日書きましたが、今日はブリジッドという名前について。

 

アイルランド人の男性のことを総称してパディー (Paddy) と言うのはご存じと思いますが、アイルランド人の女性のことを総称してブリジット (Bridget)ということもあります。アイルランドの 3人の守護聖人のうち女性はブリジッド (Brigid) であり、BridgetはBrigidのスペル違いの名前として最も一般的なものですから当然といえば当然なのですが、使用頻度はパディーに比べると圧倒的に少ないようです。

 

さて、この名前は19世紀にはとても一般的な名前だったようですが、最近はアイルランドでブリジッド、またはそのスペル違いの名前 (Bridget、Breda、Brid/Bríd、Bridie、Breege など) を持つ人も少なくなってきているのだそうです。

 

アイルランドでは中央統計局がその年に生まれた赤ちゃんの名前を全数調査しているのですが、Brigid という名前の赤ちゃんが何人生まれたのか、2015、2016、2017、2021年には発表していません。プライバシーの観点から、3人以上いる名前しか発表しないきまりなのです。

 

中央統計局は1964年からこの統計をとっているのですが、その翌年には293人の赤ちゃんがBrigidと名付けられており、これは女の子の名前として26位でした。その後、Brigidちゃんは次第に減っていきます。1995年はまだ82人と中位を保っていましたが、2018年、2019年、2020年にはそれぞれ11人となり、2021人には3人未満となったわけです。

 

Bridgetちゃんは1964年がピークで595人。これは8位にあたります。しかし、1988年にトップ100から陥落したあと、2020年には23人、2021年には20人 (228位) にまで減りました。

 

Bredaちゃんは1964年には37人でしたが、1982年に49人まで増えてピークを迎えます。しかし、その後、徐々に数を減らし、2020年に6人、2021年には3人未満になりました。

 

Brid ちゃんのピークは1980年で58人。2017年の5人を最後にファーダ (i の上についている記号) なしのBrid ちゃんは統計記録から消えています。

 

中央統計局は2018年からアイルランド語のファーダ付きの名前の統計を取り出したのですが、Bríd ちゃんは2018年には8人、2020年には3人未満、2021年には6人いたそうです。

 

珍しい綴りとしてはBridgid とBrighid があります。1967年から1971年までに合わせて23人のBridgid ちゃんが生まれています。しかし、1980年にもう一度統計に登場した以外は、3人未満ということで記録に残っていません。Brighid ちゃんは1964年に6人いたのですが、1982年以降は3人未満のようです。

 

聖ブリジッドの日ができたことで、ブリジッドちゃんは今年は増えるのか。私は増えると予測します。今年の統計が出てくるのが楽しみです。

 

 

www.irishtimes.com

 

 

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アイルランドに来てから30年たちました

先月末でアイルランドに住み着いてから30年が経ちました。1993年の1月末にきて、最初はたしかダンレアリのB&Bに泊まったのでした。最初にしたことで覚えているのは、オコネル橋のそば、エデン・キーにあった映画館で「ホーム・アローン2」を見たこと。最後尾にはカップル用の2人掛けの椅子がありましたね。今はラフター・ラウンジというコメディ劇場になっています。

 

先日いろいろ整理をしていたら、昔乗っていた車の写真がでてきたので、それを見ながら30年を振り返ってみたいと思います。

 

まず、こちら。ルノー4です。アイルランドに来てから2年ほど経った1995年の12月に「Buy & Sell」という雑誌で探して買いました。10年落ちの中古で値段は980アイリッシュ・ポンドでした。

 

 

この車は何といっても形がかわいいですよね。手入れも綺麗にしてあって、買った当初は赤い色がピカピカしていました。この車はギアの位置が変わっていて、ハンドル左手のダッシュボードから運転手に向かってスティックが突き出しているんですよ。一番手前のところが少し上に曲がっていて丸い玉がついており、それを上から握って操作したと思います。

 

この車はいろいろトラブルがありました。ラジエーターに穴が開いたのですが、ラジエーターを交換するお金がありません。当時ラネラに住んでいてブランチャーズタウンの会社に通っていたのですが、途中のフェニックスパークでオーバーヒートの赤いランプが点くのです。そこで水を入れた2リットルのペットボトルを用意しておいて、フェニックスパークでランプが点灯したらラジエーターにその水を入れて冷やしたりしていました。

 

 

AAのお世話にもずいぶんなりました。2年ほど乗ったのですが最後には故障があまりにも多くなり、最終的には廃車にしました。当時はケルティックタイガーの前で私のも含めておんぼろな車がいっぱい走っていたのですが、政府の主導でスクラップ・スキームというのをやって、車の買い替えを促進したんですね。スクラップ・スキームでは、2年以上保有した10年落ち以上の車を廃車にして新車を買うと1500ポンドだかもらえるというものでした。私もこれを利用して買ったのが次の車。フィアットのブラーヴァです。

 



この頃、会社を初めてちょっとお金に余裕ができたので新車を買ったのですね。値段は15000ポンドぐらいだった気がします。ブランチャーズタウンのトラクタモーターズというところで買いました。

 

この車には正直あんまり思い出がないんですよ。買った当初から調子が悪くて、あんまりエンジンが回らないんです。たぶん初期不良だったと思う。会社の近くにあったボールブブリッジの個人経営のガレージにいつも見てもらってたんだけど、そこは老夫婦が経営してて、たぶんお二人とも70歳を超えていたと思う。それで、事務を担当してた奥さんの方が、これは初期不良に違いないということでわざわざトラクタモーターズの方に電話してくれたんだけど、どうにもならなかった。この頃はまだ個人経営の修理工場では車のことをSheと言ってましたね。

 

さて、次に買ったのがベンツのC200。2002年のことです。値段は43000ユーロぐらいだったと思います。セルティック・タイガーの真っただ中で、会社の調子もよかったので、40歳の記念にということで買ったのでした。まあいま考えるとこんな贅沢はしなくてもよかったかなという気も正直します。でもいい車でしたね。私は色が気に入りました。アラゴナイト・ブルーという色で、この色を指定したので3か月ぐらい待ったのかな。南アフリカ製です。

 

 

私はいつもジーンズでみすぼらしい恰好をしてたんですけど、そういう恰好でベンツとかを運転しているとハックニーかと思われるんですよ。ハックニーというのはタクシーみたいなものなんですけど、上にタクシーのランプとかはついていないのです。道で拾うことはできずに予約のみ。今はもうなくなったと思う。

 

それで、仕事の帰りに午前0時ごろバゴット・ストリートのスパーによってお菓子を買ってたんですが、そのスパーはタクシーの運転手さんのたまり場でもあったんです。それで、ある若い男の人が私をハックニーの運転手だと思って、家まで送ってくれといってきたんです。いや私は違うんだと言ったんですが、5ユーロあげるから、といわれて私も引き受けちゃいました。当時はタクシーもつかまりにくかったですしね。ブラックロックあたりまで送っていきました。

 

私はこのベンツをずっと乗り続けようと考えていたんですけど、思いがけず廃車にせざるをえなくなりました。アパートの地下の駐車場に停めてたんですけど、駐車場が放火されて丸焦げになってしまったんですね。2008年のことです。保険会社は廃車にするか修理するか迷ったようですが、最終的に廃車ということになりました。外は黒焦げでしたが、エンジンはかかってちゃんと走ったんですよ。

 

 

放火犯は結局捕まりました。私もぼやけた防犯カメラの写真を見せられて警察に話を聞かれたりしたんですが、あの写真でよく捕まえたなと思います。当時、駐車場に金色 (私には黄土色に見えましたが) のBMWがいつも停まっていて、その車がヤクの売人の車だったらしいのです。その売人が金を払わなかったということで見せしめに車に火をつけられ、私の車を巻き添えを食った。これが私が管理会社から聞いたオフィシャル・ストーリー。

 

というのは、隣に住んでいたショーンさんという人とときどき話をする仲だったのですが、彼によると真相は違うらしい。放火のある半年ほど前に1階の店舗エリアにスパーが入ったんです。ところがこのスパーにあんまり客が入っていなかった。それで、オーナーが悪い人に頼んで放火してもらって保険金をせしめた。これがショーンさんのストーリー。たしかに燃えたのが売人の車だけでなく、店舗の下に位置する広範囲のエリアが焼けて20台くらいが巻き添えになったんですよ。スパーは廃業して今もその店舗エリアは空いたままです。ショーンさんがこの話をどこから聞いたのかはわかりません。だからまあ、管理会社のストーリーの方が真相なんでしょう。たぶん。

 

さて、この火事のせいで駐車場がしばらく使えなかったのですね。それで1年ほど車なしで過ごしたあと、日産ノートを1年落ちの中古で買いました。11000ユーロぐらい。保険金で賄うことができました。保険金はもうちょっと交渉すればもう少しもらえたかな、と今になると思います。

 

 

この車を今も乗っているのですが、もう13年目にもかかわらず元気に走ってくれます。この車を買ってからはずっと家で仕事をしているので、あんまり乗る機会がないのですよね。去年、写真を撮りに行っていたころはよく乗りましたが、それ以外は月に2~3回乗るかどうか。でもやっぱりあると便利です。

 

しっかり走っているので今のところ買い替えるつもりもありません。もしかしたらこの車が私の最後の車ということになるのかもしれません。

 

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聖ブリジッドの日

私はいつも家にいるので曜日の感覚がないっちゃーないのですが、いつも行っている近所のコーヒーショップが平日は8時半開店なのに週末は9時なので、そのあたりは気を付けています。ところが今週の月曜日の10時頃にその店に行ったら閉まってるんですよ。人通りも少ないし、どうやらバンク・ホリデーらしいというのはわかりました。

 

しかし、2月にバンク・ホリデーなんてあったっけ、と思っていましたら、今年から始まった祝日のようです。その名もセント・ブリジッド・デー (聖ブリジッドの日)。

 

聖ブリジッドの日は2月1日ですが、2月の第一月曜が休日となります。ただし、2月1日が金曜にあたる場合はその金曜が休日になるそうです。

 

アイルランドには守護聖人が3人おりまして、ブリジッドはそのうちの1人。あとの2人はゴルウェー生まれでアイルランドスコットランドで布教を行ったコルンバと、言わずとしれたパトリックです。

 

ブリジッドはパトリックの弟子の1人で、今のキルデア県にあたる場所で男女が修行できる修道院を設立したことで有名だそうです。修道院はだいたい男女別ですからね。

 

彼女にまつわる話で最もよく知られているのは、彼女のマントに関する逸話です。修道院を建設する土地の譲渡をレンスター王に頼んだのですが断られたので、では「私のマントが覆うだけの土地を譲ってください」と依頼し、王の承諾を得ます。彼女の友人たちがマントの四隅をもって広げていくと、マントは何エーカーをも覆うほど大きく広がったそうです。王はその土地と修道院設立に必要な物資を与えた後、自分もキリスト教に改宗したとのことです。

 

このキルデアのブリジッドとは別に、ケルト神話にもブリジッドという名の女神が出てきます。こちらのブリジッドは3つの顔を持つ豊穣の女神で、戦争、詩、金属細工、癒しの神であるとされています。キリスト教アイルランドに伝わる以前、女神のブリジッドの祝福も、ケルティック・カレンダーの春の始まりである2月1日(または2日)に行われていたそうです。この日は冬至春分のほぼ中間点にあたり、春の訪れを祝うインボルグ(Imbolg)という名の祭りとなっていました。

 

さて、こちらのデザインを見たことがある方も多いと思いますが、これはブリジッド・クロスと呼ばれ、聖ブリジッドの日の象徴です。わらやイグサを編み込んだものです。真ん中に四角ができるのが特徴です。

 

 

2月1日にブリジッド・クロスを編み、家の垂木につるしておくと、その年はブリジッドの祝福にあずかることができると信じられていました。残念ながらブリジッド・クロスを編む風習は20世紀に入ってすたれてしまったようです。

 

今回、新しく祝日が設けられた理由ですが、COVIDのパンデミックに立ち向かった一般の人々、特に最前線で戦った医療関係者を称えるために祝日を設けようということになったようです。

 

ま、しかし、これは大義名分というやつで、アイルランドはヨーロッパの中でも祝日が少ないんだそうです。それでその数を増やそうという思惑が政府にあったようです。また、元旦から3月のセント・パトリックス・デーまで祝日がなかったので、その間に1つ作ろうということでもあったようです。というわけで、聖ブリジッドの日はアイルランドで10番目の祝日となりました。

 

www.officeholidays.com

 

参考: ブリジッドという名前の流行りすたりについて書きました。

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