私はいつも家にいるので曜日の感覚がないっちゃーないのですが、いつも行っている近所のコーヒーショップが平日は8時半開店なのに週末は9時なので、そのあたりは気を付けています。ところが今週の月曜日の10時頃にその店に行ったら閉まってるんですよ。人通りも少ないし、どうやらバンク・ホリデーらしいというのはわかりました。
しかし、2月にバンク・ホリデーなんてあったっけ、と思っていましたら、今年から始まった祝日のようです。その名もセント・ブリジッド・デー (聖ブリジッドの日)。
聖ブリジッドの日は2月1日ですが、2月の第一月曜が休日となります。ただし、2月1日が金曜にあたる場合はその金曜が休日になるそうです。
アイルランドには守護聖人が3人おりまして、ブリジッドはそのうちの1人。あとの2人はゴルウェー生まれでアイルランドとスコットランドで布教を行ったコルンバと、言わずとしれたパトリックです。
ブリジッドはパトリックの弟子の1人で、今のキルデア県にあたる場所で男女が修行できる修道院を設立したことで有名だそうです。修道院はだいたい男女別ですからね。
彼女にまつわる話で最もよく知られているのは、彼女のマントに関する逸話です。修道院を建設する土地の譲渡をレンスター王に頼んだのですが断られたので、では「私のマントが覆うだけの土地を譲ってください」と依頼し、王の承諾を得ます。彼女の友人たちがマントの四隅をもって広げていくと、マントは何エーカーをも覆うほど大きく広がったそうです。王はその土地と修道院設立に必要な物資を与えた後、自分もキリスト教に改宗したとのことです。
このキルデアのブリジッドとは別に、ケルト神話にもブリジッドという名の女神が出てきます。こちらのブリジッドは3つの顔を持つ豊穣の女神で、戦争、詩、金属細工、癒しの神であるとされています。キリスト教がアイルランドに伝わる以前、女神のブリジッドの祝福も、ケルティック・カレンダーの春の始まりである2月1日(または2日)に行われていたそうです。この日は冬至と春分のほぼ中間点にあたり、春の訪れを祝うインボルグ(Imbolg)という名の祭りとなっていました。
さて、こちらのデザインを見たことがある方も多いと思いますが、これはブリジッド・クロスと呼ばれ、聖ブリジッドの日の象徴です。わらやイグサを編み込んだものです。真ん中に四角ができるのが特徴です。
2月1日にブリジッド・クロスを編み、家の垂木につるしておくと、その年はブリジッドの祝福にあずかることができると信じられていました。残念ながらブリジッド・クロスを編む風習は20世紀に入ってすたれてしまったようです。
今回、新しく祝日が設けられた理由ですが、COVIDのパンデミックに立ち向かった一般の人々、特に最前線で戦った医療関係者を称えるために祝日を設けようということになったようです。
ま、しかし、これは大義名分というやつで、アイルランドはヨーロッパの中でも祝日が少ないんだそうです。それでその数を増やそうという思惑が政府にあったようです。また、元旦から3月のセント・パトリックス・デーまで祝日がなかったので、その間に1つ作ろうということでもあったようです。というわけで、聖ブリジッドの日はアイルランドで10番目の祝日となりました。
参考: ブリジッドという名前の流行りすたりについて書きました。