たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

ダブリンの郵便博物館

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中央郵便局 (GPO: General Post Office) はダブリン市街中心部のオコネル・ストリートにあります。200年近くアイルランドの郵便事業の本部として機能してきただけでなく、1916年のイースター蜂起では独立軍がここに立てこもるなど、建物には歴史が刻み込まれています。

 

ここには切手収集家のためのコーナーがあって、私はここでいつも記念切手を買ってたんですが、去年の一時期、そのコーナーが閉鎖されていました。緊縮財政のため、日本で流行ってる言葉でいうと「仕分け」っていうんですか、そういうことで閉鎖されてしまったのかと思っていました。

 

でもそれは私の間違いで、しばらく経つと新装開店したのみならず、郵便博物館なるものが新設されていました。

 

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先週、博物館に行ってきたんですが、スペースは小さいながらも、内容は非常に充実していました。(ただし、日本語対応はしてません)

 

アイルランドの郵便事業の歴史を解説するパネルとか、昔の GPO の建物のミニチュア再現モデルとかがあって、まあこういうのはよくありますね。

 

また、郵便事業の発展に貢献した 9 人のプロフェッショナルが写真付きでパネルになっています。アイルランド近代郵便制度の父とでも言うべき人や、馬車での郵便輸送網を整備した人なんかは、わかりやすい意味で貢献した人ですけど、あとの 7 人は普通の郵便局職員です。40 年間配達員として勤めあげた人、田舎の郵便局の女性局長、女性交換手 (昔は郵便局が電話交換局もやってたので)、男の人が大勢軍隊に入ったため代用で配達員をやった女性とか。日々の仕事を黙々とこなすことで郵便制度を支えた大勢のひとたちの努力が、こういった場所で目に見える形で認められるのは素晴らしいことと思います。

 

それから、各5 分ぐらいのビデオが4本見られます。テーマは、「船の郵便輸送」(主にアイルランドがイギリスの一部だった時代)、「鉄道の郵便輸送」、「田舎の郵便屋さん」、「現代の郵便仕分け」。「船の郵便輸送」は内容がちょっと堅かったですけど、あとの 3 つはとても面白かったです。

 

「鉄道の郵便輸送」では、駅に停車しなくても郵便袋を集配する仕組みが紹介されていました。郵便袋を集めるときは線路沿いの専用の柱に袋を掛けておくと、列車通過時にその袋を引っかけて列車から突き出たネットに落ちるようになっています。郵便袋を配るときは、今度は列車から突き出た棒に郵便袋を掛けておくと、線路沿いの柱の引っかけ棒で袋が網に落ちるのです。この仕組みはおもしろかったです。

 

「田舎の郵便屋さん」は、ゲール語地域の郵便屋さんの一日を追います。会話はほぼすべてゲール語で英語字幕がつきます。

 

「現代の郵便仕分け」では、自動化された巨大な仕分けセンターでの作業が説明されます。定型の郵便物はすべて宛先をOCRで読み取って自動的に仕分けするんですねー。日本みたいに決まった位置に郵便番号を書くわけじゃないんですけど、それでも機械でできるんだなー。

 

それから、イースター蜂起のときの建物内の様子をドラマ形式にした映像。これは、なんていうんでしょう、3D ではないんだけど、ホログラムっぽい仕上がりになってます。

 

それから、アイルランドで発行された切手 (すべてかどうかわからないけど相当な数) が iPad みたいなボードに表示されていて、見たい切手を選んで拡大表示すると、その切手の情報が表示されるようなインタラクティブな仕掛けもありました。

 

ほかにもいろいろあるんですけど、最後にもうひとつだけ。昔の書斎机みたいなのが飾ってあって、そこに古い手紙が置いてある。ちょうど100年前に、ある女性が恋人に送ったラブレターなんだけど、男性の方は数年後にイースター蜂起のリーダーの一人となって処刑されてしまうんです。

 

筆記体で書いてあるから現物から読み取ることは難しいんだけど、パネルにタッチすると活字に書き起こしたものが読める仕掛けです。「私は今、シャワーから出てきたばかりなんだけど、髪の毛からしたたる水で床がプールのようになっているの」みたいな書き出しなんですが、親密でかすかなエロスも感じさせるようないい手紙です。

 

横には封筒も置いてあるんだけど、切手が天地逆さに貼ってある。これには政治的な意図が込められているんだろうとのこと。それから、当時の恋人たちは秘密のフレーズを切手の下に書く習慣があったので、切手を剥がすと何か文字が出てくるのかもしれません。

 

この郵便博物館は内容が詰まっています。郵便に限らずアイルランドの歴史に興味のある人だったら1時間は楽しめると思います。入館料は2ユーロ。館内は撮影禁止だったんで写真でご紹介できなくて残念です。