たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

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土曜日に能を観に行きました。トリニティ・カレッジのサミュエル・ベケット劇場に、能の舞台がやってきたのです。演じるのは、日本人と西洋人の混成の能楽士集団です。日本人は、福山市の大島能楽堂の人たちです。

 

能を見るのは初めてでした。舞台の最初に解説に出てきたおじさんが、「今回の舞台は能への招待状と考えてください」ということだったので、招待状を頂いた素人が見た感想を以下につづります。たぶんものすごく的外れなことも書くと思いますがご容赦願います。

 

演目はふたつで、最初のは世阿弥の「清経」。2 つ目は、中国系イギリス人が書いた「Pagoda (仏塔)」です。Pagoda は中国を舞台にした新作で、英語で演じられます。

 

まず舞台には、ボクシングのリングよりちょっと大きいぐらいの正方形が描かれています。四隅には、ちょうどボクシングのコーナーのように、四角柱の木材が立てられています。この舞台の向こう側には、屏風絵風に松の木を描いた幕が吊り下げられています。

 

演目が始まると、お囃子の人たちがおもむろに登場して正方形の奥に座ります。次にコーラスの人たち (地謡というそうです) が出てきて正方形の向かって右側に座ります。この人たちはみなさん、黒い裃を着ています。この方たちに囲まれる形で、シテやワキなどの華やかな衣装を着た演者たちが演技します。

 

こういう基本的なことも私は知らなかったので、始まるやいなや興味津津です。

 

最初の「清経」はもちろん日本語だったんですが、正直なところ、何一つ言葉が理解できませんでした。英語訳がプログラムに掲載されていたみたいなんですが、私は持ってなかったので筋を追うことはできませんでした。

 

それでも、演者の繊細な動き、地謡の独特の抑揚での詠唱、太鼓 2 つに笛 1 本という単純な構成ながら合の手を交えてグルーブを生み出すお囃子など、見ている私は気圧されるものがありました。

 

「Pagoda」の方は英語です。ドラマの作り方は伝統的な能を踏襲しています。ワキ、シテ、ツレで前半が演じられ、アイが入って、後半はシテ、ワキ、ノチツレでの舞台となります (この辺は Wikipedia で勉強しました)。

 

最初は、英語をあの独特の抑揚で発声する必然性がないので説得力がないと思ったのですが、しばらくすると気にならなくなりました。こちらの方はある程度聞き取れるので、筋を追えます。日本語の方がまったくわからなかったのに、英語の方が筋を追えちゃうのがなんだか情けないです。

 

今回、能を見て思ったのは、演者の人たちが四角い舞台の上で感情を表現していくわけですけど、それを冷静な地謡とお囃子の人たちが囲んで見てるんですよね。そうすると、地謡とお囃子の人たちは実は神様で、神様の視点で人の喜びや悲しみを見つめているような気になってきます。人生の儚さといいますか、ちっぽけな人間の存在みたいなものを舞台構成で表しているような気がします。

 

お囃子や地謡の人たち以外にも道具係の人がいて、たとえば演者が座るときに椅子を出したりするんです。この係の人は、お囃子の人の隣でほとんどずーと何もせずに座っているんですね。でも、この何もしない人が存在することで、見る人がいろんな意味をこの人に持たせることができ (たとえば、お囃子の人は明らかにお囃子をする人っていう意味しか持たせられないから)、舞台をより立体的にしているという感じがしました。

 

K ちゃんと一緒に観に行ってたんだけど、あの道具係の人ってハッピー・マンデーズのマラカスの人みたいに重要だよね、って言ったら、K ちゃんはハッピー・マンデーズを知ってるには若すぎたので、頭の上に大きなハテナマークを 3 つぐらい出していました。

 

ハッピー・マンデーズのマラカスの人です。↓

Happy Mondays - Kinky Afro - Top Of The Pops


冒頭の写真は今回の舞台とは関係ないんですけど、能面です。著作権フリーの写真だったので。