たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

道端で楽器を弾くこと (2/2)

イメージ 1

 

ミニアンプとピックアップで確か 60 ポンド (10000 円くらい) とかそんなもんだったと思う。で、また行った。グラフトンストリートへ。アンプにシールドつないで弾き出したら、当たり前だが音が大きい。みんながみんな立ち止まって大正琴の音色に聴き惚れた後、曲が終わるとヤンヤヤンヤの大喝采、てなことはないが、ちらほらと立ち止まっては音もなく去っていくといった感じで、そのショボさが大正琴の音色にまた合っている。2 時間ほど演奏して集まったお金は約 10 ポンド。アイルランドでは単純労働アルバイトのお給料が 1 時間に 2.5 ポンドくらいだったから、たいしたもんです。

 

これに味をしめて、週末になるとグラフトンストリートに出かけた。なんかの具合で全然儲からないときもあったけれど、だいたい 2 時間演奏すれば 10 ポンドというのが平均的な稼ぎでした。ヒッチハイクアイルランド国内を旅行したときも大正琴を携え、行く先々でまでとはいかないけど、数ヶ所で演奏した。

 

その頃、通っていた英語学校の掲示板に、とある保育園からきた手紙が貼り出された。その幼稚園では、曜日ごとにいろいろな国の人を講師に招いて、おチビさんたちに異文化の香りに触れさせるというプログラムをやっていて、日本人で興味がある人がいたら応募してください、と書いてあった。そこで応募しましたよ、私は。週に一度、1 時間だけ、時給 5 ポンド。交通費を引いたら儲けは 1 ポンド 40 ペンス。バスと電車を乗り継いでダブリン郊外にあるその保育園へ。3 歳児クラスと 5 歳児クラスを担当したのだが、3 歳児クラスはたいへんでした。大正琴弾いたって 3 歳児にはわかりっこないよ。5 歳児になると曲を弾くとさすがに聞いてくれたが。

 

ある日この保育園に行こうとしたとき、早く着きすぎたので近くの喫茶店に入った。コーヒーを飲んでいると、フィリピン人のウェイターが声を掛けてきた。「その黒いソフトケースは何じゃ」。僕は大正琴を取り出しピロピロと弾いて見せた。するとそのフィリピン人 (ジョーイという名前だった)。「俺もパーカッションをやってたんだが、今は子供のために金をかせがにゃならんので、ウェイターをやってるんだ。今は時々近くのパブで仲間と一緒にやるだけだけど、もし興味があったら、土曜日の 3 時にダンレアリのキングストンホテルの 1 回のパブに楽器持って来いよ」。

 

ホテルのパブに着いてみると、演奏しているのはアイリッシュのトラディショナルバンド。で、ジョーイに紹介されて一緒に演奏を始めると、結構音が合う。まあバンドのメンバーは物珍しい楽器だから勝手に弾かせておいても害はないだろう、ぐらいに考えてたと思うけど。ここで定番の「ダーティー・オールド・タウン」とか「ジャック・スチュアート」とかを覚えました。

 

この後、ヨーロッパを旅行したときも大正琴を弾いて回って、結構おもしろかったりしたんだけど、そのうちだんだん弾く回数が減ってきて、最後には止めてしまいました。やっぱり動機が不純だもん。大した腕もないのに大正琴でヨーロッパ人のジャポネスクへの興味をあおったりして、ちょっとあざといなあ、と思いだしたのが運のつき。どうしても俺が歌わなきゃならん、という歌ができたら、下手なギターを鳴らして、もう一度グラフトンストリートに行きます。
Bye
****ここまで****

 

うーん、でもさすがにもうやることはないかな。

 

イメージ 2