たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

アイルランドの紅茶の話

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アイルランドは一人あたりの紅茶だかお茶の消費量が世界で一、二、を争う国なのです (統計によって違う)。

 

なんでお茶がそんなに好きなのかは、イギリスの影響なんだろうなあと、漠然と思っていたわけですが (たぶんそれは実際にそう)、今日のアイリッシュタイムズにアイルランドの紅茶をめぐる詳しいお話が載っていて、興味深かったです。

 

イギリスの紅茶とアイルランドの紅茶はかなり違うらしいんですよ。たしかに、リプトンとかトゥワイニングズとかの英国有名ブランドはあまり売ってないんです (なくはないけど)。

 

第二次世界大戦が始まる時点では、アイルランドは既に人口あたりのお茶消費量が世界 3 位でありまして、ロンドンから毎年 1,100 万キロものお茶っ葉を輸入していました。ところが、戦争が激しくなってイギリスが輸出制限をかけたので、アイルランドは一夜にして消費量の 75% を失ってしまったのです。

 

食い物/飲み物の恨みは恐ろしいですから、国情が不安になってはいけませんので、政府は慌てて官製の輸入会社みたいのをこしらえました。アイルランドは、世界で最も品質の高い紅茶を好むという評判があるらしいのですが (初めて聞きました)、その理由がこの官製輸入会社らしいのです。この官製輸入会社は、国内の紅茶製造会社に、生産者と直接取引するように要求したらしいのですね。

 

それで、紅茶製造会社はアフリカあたりに直接出向き、ケニアあたりで、インドやスリランカの明るい色のお茶ではなく、濃い色のお茶を見つけてきたらしいのです。

 

官製輸入会社ってのはまあ輸入のサポートをする会社みたいで、お金を貸し付ける銀行業務みたいなのもやってたらしいです。この業務が発展してやがて悪名高いアングロ アイリッシュ バンクとなるのです。アイルランドにお住まいの方はよくご存じと思いますが、アングロ アイリッシュ バンクはバブル期に無茶苦茶な貸付をやって、国を潰しかけた銀行ですね。でも、まあそれはまた別の話。

 

ビューリーズでマスター ブリュワー (お酒で言えば杜氏みたいな職人) をずっとやってたポール・オトゥールさんによると、「アイルランド人はインドの紅茶を好きではありません。インドのは薄すぎる (too thin)。人工的なベルガモットの味がするのでアールグレイもそれほど好きではありません。ダージリンは紅茶のシャンパンと呼ばれますが、これもアイルランドで人気を博したことはありません。なぜなら、私たちは酪農の国なので、ミルクを入れると食器を洗った後の汚水のようになってしまうのです」

 

1950 年代にはアイルランド国内に 50 くらい紅茶のブランドがあったそうなのですが、まず Lyons が全国ブランドとなり、そのあとをコークの Barry's が追いました。これは、群雄割拠だった日本の醤油メーカーが、近代化によりまずキッコーマンが全国ブランドとなり、それをヤマサあたりが追った姿とだぶりますね。

 

メーカー別の現在のシェアは、Lyons が 36%、Barry's が 27%、プライベートブランドが 15%、ビューリーズが 7%、Tetley's (イギリス) と Punjani (北アイルランド) がそれぞれ 6% と 4%、オトゥールさんが設立した Rob Roberts が 3% だそうです。

 

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記者はオトゥールさんに連れられて、ルワンダティー プランテーションまで行くんですね。このあたりは例のフツ族によるツチ族の虐殺があったところです。いまでもある程度の緊張はあるみたいですね。プランテーションを仕切っているのは 3 人のスリランカ人。直接雇用しているのが 2500 人で、他に 4500 人の地元農家からお茶を買っている。地元経済への貢献度はものすごいものがあります。

 

摘んだお茶はいろんな工程を経て 48 時間後にはもうパックされてます。

 

オトゥールさんによれば、ルワンダの紅茶をケニアとアッサムの紅茶と混ぜると、濃い色の香り高い紅茶ができます。それがアイルランド人の好きなお茶なんだそうです。

 

(冒頭の写真はコメディ「Father Ted」の登場人物である Mrs. Doyle。とにかく紅茶を勧めるキャラ。2 枚目は市場シェア 2 トップのライオンズとバリーズ)

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