たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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黒いアームバンド

EURO 2012 の対イタリア戦で、アイルランドは喪章を腕に巻いて試合します。

 

試合があるのは 6 月 18 日なんですけど、ちょうど 18 年前のこの日、北アイルランドのダウン県にあるパブが UVF (ロイヤリスト側の IRA みたいなものと考えてください) に襲撃され、ワールドカップのアイルランド対イタリア戦をテレビ観戦していた 6 人が射殺されるという事件が起きました。

 

日付も同じ、対戦相手も同じということで、犠牲者の遺族がアイルランドサッカー協会に提案し、サッカー協会がUEFAに申請して認められた。

 

UEFAでは、っていうか、サッカーでは、政治的な意匠を身につけてプレーするのは絶対許可されないんですけど、これは政治というより死者を弔うという意味で解釈してくれたらしい。

 

最近も、イギリスが戦没者を追悼するためのポピーの図柄をユニフォームに付けるかどうかで問題になってましたけど、あれは結局どうなったんだっけな。

 

アイルランドが喪章を付けてプレーするのは初めてではないんだけど、一番有名なのはダイアナ妃が亡くなった直後の試合。アイリッシュ・タイムズ紙には、このときのチームは「ミック・マッカーシーが監督し、アンディー・タウンゼンドが主将を務め、この2人が喪章を巻くという決定に大きな役割を果たしたと言われる」と書いてある。これだけ書けばアイルランド人のサッカー好きには (たぶん特に好きでない人にも) ピンとくるんだけど、マッカーシーもタウンゼンドもイギリス生まれなんですね。2 人ともチャールトン監督の元で主将を務め、チャールトンの右腕として働いた。まあ、意地悪い言い方すると、イングランド人の監督がアイルランド人のチームを治めるのにイングランド生まれの選手を中間管理職に使ったということですね。マッカーシーとキーンの確執はこの頃 (マッカーシーが主将だった頃) にまで遡るといわれます。

 

評論家のエイモン・ダンフィーは、「政治的なことをサッカーに持ち込むことについては非常に注意深くなければならない」と言っています。ダンフィー自身はイングランドでの選手時代にブラディーサンデーに抗議して喪章を巻いてプレーしたのだが。協会はもちろん、これは政治ではなくて「犠牲者はスポーツイベントを見ているときに事件に巻き込まれたのだから、これはスポーツ的なジェスチャーである」と言っています。

 

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写真はダイアナ妃を悼む喪章を巻いて試合に臨むロイ・キーン、アイリッシュタイムズ紙から。