アイルランドに来たばかりの頃、環境や文化の違いに戸惑っていたわけですが、その頃のダブリンにも小さいながらも日本人のコミュニティがあって、そこで仲良くさせていただくことで、随分慰められました。
その中で、いろいろ面白い小噺をしてくれる人がいて、当時はインターネットなんかありませんから、日本語に飢えていたこともあったと思うんだけど、ほんとに楽しませてもらいました。
それで、いま検索してみると、ほとんどの話はネットで見つかるんだけど、『ペンギンの恩返し』の話だけは見つからなかったので、ここに掲載したいと思います。
ある探検家が南極大陸に探検にいきました。
そしたら氷の隙間にはさまって動けなくなっているペンギンがいたので、助けてあげました。
探検家が日本に戻ってきたその夜、美しい娘が訪ねてきて、道に迷ってしまったので一晩泊めてくれないか、と言います。外は大雪なので追い返すわけにもいかず、探検家は娘を泊めてあげることにします。
ところが、次の日も、その次の日も、雪は降り続きます。探検家と娘はそのまま一緒に暮らし始めることになりました。
探検家は次の探検の金策に走り回るのですが、なかなかうまくいきません。見かねた娘が、「私が機を織って反物を作ります。だけど、私が作業している間は絶対に覗かないでください」といって、部屋にこもります。
あまりにも長い間機を織っているので、探検家がたまらず部屋を覗くと、あのときのペンギンが自分の羽毛を抜きながらマンシングウェアのポロシャツを織っていたそうです。
おしまい
あと、「ワニの恩返し」っていう話もあるんですけど、このお話はもういいですよね。結末は2種類あります。右向きと左向きと。