たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

クローク・パーク

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おとといの土曜日、ラグビーの 6 カ国対抗の最終戦が行われ、アイルランドはスコットランドに 23 対 20 で負けちゃいました。去年はグランドスラム (全勝優勝) 達成だったんだけど、今年はフランスに負けたのはしょうがないとして、イングランドとウェールズに勝ったんでトリプル・クラウン (フランスとイタリア以外に全勝すること) はいけるだろうと思ってたら、最後にアンダードッグのスコッツに足元をすくわれてしまった。残念。

 

クローク・パーク (Croke Park) でラグビーの試合が行われるのはこれで最後。ランズダウン・ロード競技場 (スポンサーの名前を取って、アヴィヴァ (Aviva) スタジアムと呼ぶらしい) の改築が終了してもうすぐオープンするから。

 

クローク・パークっていうのはゲーリック・フットボールやハーリングなどのアイルランド特有のスポーツを統括する GAA (ゲーリック体育協会) が所有する球戯場です。82000 人収容の最新式のスタジアムで、これはまさしく世界に誇れるスポーツ施設といっていいでしょう。

 

それでですね、GAA の規則では、GAA が所有する施設を外国のスポーツ (foreign sports) には使わせないっていう条項があります。外国のスポーツっていうのは、具体的にいうとイギリスのスポーツ、サッカーやラグビーですね。アメフトの試合はやったことがありますから。

 

中立的な立場の人からみれば、ちょっと偏狭に思えるルールですし、かなりのアイルランド人もそう思っていると思うんですが、まあイギリスとの間にはいろいろありましたし、人もたくさん死んでますから。この条項の撤廃に反対するのは、やはり北アイルランドの県、それから伝統的にリパブリカン運動のさかんなケリー県とかだったと記憶してます。

 

で、まあ、サッカーとラグビーはランズダウン・ロード競技場 (これはアイルランド・ラグビー協会の所有) で国際試合を行ってたんですが、ここを改修することになったと。改修中は当然ほかの場所で試合しないといけないんですが、ほかに国際試合を開催できるようなスタジアムがほかにないんです。クローク・パーク以外には。

 

それで、GAA も折れて、改修中だけはサッカーとラグビーの試合に使ってもいいよ、ってことになった。2007 年ぐらいの話です。で、アヴィヴァ・スタジアムが新装開店するんで、今回のスコットランド戦を最後にラグビーとサッカーは古巣に戻ることになりました。

 

もちろん、サッカーやラグビーの関係者は口をそろえて GAA への感謝の意を表しているわけですけれども、昨日の Sunday Tribune 紙を見てたら、キアラン・クローニンっていう記者が「ファンにとっては、クローク・パークって、いいことなかったよね」っていう記事を書いていておもしろかった。

 

以下、クローニン記者の意見に沿って書きますけど、彼によれば、サッカーとラグビーを見るのにクローク・パークはひどくがっかりな場所だそうです。大きな問題は、ピッチのサイズです。ゲーリック・フットボールはサッカーなんかよりずっとピッチが大きいんです。そのため、サッカーやラグビーを見に行くと、客席からサイド・ラインやゴール・ライン (ラグビーでは違う呼び方するの知ってますけど、ご了承ください) までの距離が異様に遠いんです。

 

トラパットーニ・アイルランド代表監督が就任直後、建設中のアヴィヴァ・スタジアムを視察に訪れ、W 杯予選のイタリアの試合には建設が間に合わないと聞いて取り乱したそうですが、いくつかの例外を除いて、クローク・パークは非常に静かな (観客がおとなしい) スタジアムです。これでは対戦相手を怯えさせて浮き足立たせることができません。

 

アヴィヴァよりクローク・パークの方が収容人数は 3 万人ほど多いんですが、逆説的ですけど、人数が多いからといって声が大きくなるとは限らない。キャパの大きい新しいスタジアムに最近移ったアーセナルも同じ経験をしているようです。

 

基本的に、とクローニン記者は書いてますが、スタジアムに詰め掛けてチームをどうしても応援したいと思っているラグビー・ファンやサッカー・ファンはこの国には 50000 人くらいしかいないのです。だから、残りの 30000 枚は、チケットもらったからとか、ほかに特に予定もないしとか、1 回ぐらい見とくか、雨も降ってないし、みたいなぬるーいファンの手に渡ることになる。つまり、クローク・パークに試合を見に行くのが観劇に行くのと同じになってしまった。これは国際試合のあるべき姿ではない。

 

というわけで、50000 人規模のランズダウン競技場、あ、しまった、アヴィヴァ・スタジアムにサッカーやラグビーが帰っていくのは非常によいことである。この規模だったら、競技場に入場できた人はみなその恵まれた境遇にありがたみを感じ、したがってチームを熱狂的に応援するであろう。(ここまで、クローニン記者の記事をもとにまとめました)


私も 3 回ほどクローク・パークにサッカーの試合を見に行きましたが、確かに雰囲気はランズダウンの頃に比べてぬるかったです。ランズダウンは満員になると「ギッシリ」感、スタジアムがひとつにまとまる感じがあるんですが、クローク・パークはそれがなかった。また、そういう一体感って、なぜか新しい競技場だと感じにくい気がする。なんだかまだ肌に馴染んでこないな、みたいな。

 

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私が見たのが、対スロバキア戦とか対モンテネグロ戦とか、それほど重要な試合じゃなかったっていうのもあるかもしれません。でも、一応公式戦なんだから、2 点ぐらいリードして楽勝ムードならともかく、0-0の膠着状態なのにメキシカン・ウェーブを始めるのはやめてほしいと思いました。

 

いちおう、クローク・パークの名誉のために申し添えておきますと、やっぱりゲーリック・フットボールの試合なんかでは凄い雰囲気になるらしいです。

 

日本でいうと、たぶん横浜の日産スタジアムか。行ったことないですけど、7 万人の収容能力があるスタジアムに、1~2 万人の観客を集めて試合するのは、マリノスの選手にとってもサポにとっても幸せなことではないと思う。三ツ沢 (ニッパツ) は古いけどいい球戯場だと思います。あそこに熱狂的なファンが詰め掛けて満杯になったら、凄い雰囲気が生まれるんじゃないか。もう既にそういうことになってんだったら、勉強不足ですみません。

 

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1 枚目の写真: クローク・パークの外観
2 枚目の写真: クローク・パークで行われた対スロバキア戦 (2007 年 3 月)
3 枚目の写真: 建設中のアヴィヴァ・スタジアム (2009 年 9 月ごろ)、DART (列車) の中から写したのでうまく撮れてません。