たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

アイルランドのラグビー

f:id:tarafuku10:20210702220538p:plain

 

明日はラグビーの日本対アイルランドの試合なので、アイルランドラグビーの話を書きます。ラグビー北アイルランドアイルランド共和国で1つのチームを作っていることがよく話題になるんだけど、実はラグビー同様、アイルランド島全体(北と南)を1つの団体で統括しているスポーツは多い。

 

北アイルランドができたのはたかだか100年前なのだが、近代スポーツの多くの統括団体はそれより前に設立されているので、アイルランド島が北と南に分割されても、統括団体は分裂しなかったということ。

 

例えば、北アイルランド出身のゴルファー、ローリー・マキロイはアマチュア時代にアイルランド島全体を統括するゴルフ団体に属していたし、陸上、水泳、ボクシング、バドミントン、クリケット、自転車、馬術、ホッケー、漕艇、スカッシュ、テニスなども1つの団体がアイルランド島全体を統括している。

 

f:id:tarafuku10:20210702214717j:plain

 

歴史的な事情だけかというとそうでもなくて、野球・ソフトボールなどの比較的最近入ってきたスポーツも北と南で分かれていないので、国境でスパっと切り分けられない文化的・社会的・心理的事情もあると思う。ちなみに英語では単にBorderと呼ぶので「国の境」ではなく「境界線」の意味。

 

アイルランドのほとんどの地域で、私立の学校に通わなければ楕円のボールに触る機会もないので、ラグビーの競技人口は少ない。ただ、観るスポーツとしての人気は高く、メディアの露出度はサッカーに匹敵する。これは代表チームが国際的に強いことと(現在世界ランク4位)、社会的に力のある層に人気が高いからか。(資料1)

 

あらゆる層の子供達がラグビーにアクセスできる環境にある例外的な街はアイルランド西部のリムリック。

 

f:id:tarafuku10:20210702214944p:plain

 

アイルランドにはゲーリック・フットボールおよびハーリングというドメスティックな競技ながらサッカーやラグビーに匹敵する、またはそれ以上の人気を誇る大衆スポーツがある。もともとラグビーアイルランドに入ってきたのは、19世紀後半、アイルランドに駐屯した英国軍や大学で勉強して戻ってきた学生を通じて。ラグビーの人気に危機感を感じたナショナリストが、各地で様々なルールで行われていたアイルランドフットボールや他のスポーツをまとめ、ゲーリック・フットボールハーリングを統括する組織(GAA)を作ったのが1884年

 

しかし、いろいろもめ事があって(政治をスポーツに持ち込むとか、設立者の一人である有力者の不倫とか)、1890年代の一時期、GAAは壊滅的な打撃を受ける。そこでラグビーが盛り返して、リムリックは特に熱心なラグビー関係者がいたお陰で、大衆スポーツとしての地位を現在まで維持しているという感じ。(資料2)

 

ちなみに、サッカーが北と南で分かれているのは、もともとアイルランドのサッカー協会の本部が現在は北アイルランドベルファストにあって、北アイルランドができたときに南に別の協会を設立したということです。

 

あと、アイルランドの英語での正式な国名は「Ireland」なんですが、アイルランド国内でアイルランド共和国(Republic of Ireland)という呼称を自ら喜んで使っているのはサッカー協会ぐらいしか知らない。北の協会から分かれたときに、区別のためにそう呼び始めたのだと思いますが。

 

アイルランド共和国という言い方は基本的にイギリスの言い方。アイルランドという島とアイルランドという国は別のもんだから、という政治的ステートメントが込められていると思う。1998年のベルファスト合意で南が明示的でないにせよ北の領有権を放棄するまで、英国は基本的にこの呼称を使っていた。

 

もちろん、アイルランドの方も、アイルランドという島とアイルランドという国はいっしょやでー、という政治的ステートメントを込めて、「Ireland」という国号を使っていた(る)と思う。

 

(資料1)  

Is Rugby Really The 'People's Game?' Here's What The Numbers Say | Balls.ie

 

(資料2)

http://www.limerickcity.ie/media/rugby%20107.pdf

 

 

アイルランド情報 人気ブログランキング - 海外生活ブログ