たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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ケビン・キルバーン

昨日、ワールドカップの予選があって、アイルランドはイタリアとダブリンで対戦しました。残り3分というところでアイルランドが勝ち越したんだけど、終了間際にイタリアに追いつかれて引き分け。予選グループ2位が決定して、プレイオフに進出することになりました。私はイタリアが勝つ方にちょっとお金を賭けてたんだけどダメでした。4月に行われたアウェイの試合でもイタリアに賭けてて、やはり引き分け。イタリアはここぞというところでホントに頼りになりませんね。

 

今日の新聞には、GKのシェイ・ギブン (Shay Given) 選手と左サイドバックのケビン・キルバーン (Kevin Kilbane) 選手についての記事が載ってました。2人は次の水曜のモンテネグロ戦でともに100キャップ目を獲得することになります。記事では、プレイの質もさることながら、2人とも性格がいいのが代表選手として息の長い活躍ができる秘訣なのではないかと書いてありました。性格がいいっていうのは、スター選手にありがちな驕りがない、負けん気の強さからくる激しい性格ではない、ぐらいの意味です。

 

シェイ・ギブンは能力的に他のGKとは明らかに差があるから、これだけ多くのキャップ数を獲得できたのは当然といえます。ケビン・キルバーンの方はそんなに凄いプレイヤーだったことは一度もありません。永遠の脇役です。そんな彼がこれだけ長く代表としてのキャリアを積み重ねられたのは、怪我しない、左サイドの人材が不足していた、などの要因もあると思いますが、彼の温和な性格が一因かもしれません。

 

彼が初めてプロとしてプレイしたプレストンというチームでコーチを務めていたスティーブ・ハリソンさんは、サッカー選手とだけは付き合うなと娘に言い聞かせていたそうですが、今ではキルバーンの義理のお父さんです。ハリソンさん曰く、「ケビンは普通のサッカー選手じゃない」とのこと。ナイル・クイン (Niall Quinn: 元アイルランド代表、現サンダーランド・チェアマン) も「ケビンは、すべての親がこの青年に自分の娘を嫁にやりたいと思うようなヤツ」と言ってました。昨日の試合前の国家斉唱でも、イギリスで生まれ育ったにもかかわらずアイルランド語のアイルランド国歌を普通に歌ってました。そういう人です。ただ、そういう性格の良さがスポーツ選手としては弱さと受け取られたり、まあ優等生っぽい風貌もあったりして、所属するサンダーランドのサポーターからなぜか毎試合ブーイングを受けたりしたこともありました。

 

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考えてみると、サッカーに限らず、主役よりも脇役の方が長いキャリアを楽しめるのかもしれません。マンチェスター・ユナイテッドのライアン・ギグズやポール・スコールズは、かつてはチームの中心選手でした。しかし、今は脇役としての役割を受け入れ、若い選手と交代で試合に出場しなから、チームに貢献しています。また、イングランド代表のデビッド・ベッカムも、サブのメンバーの立場で代表チームに今でも貢献しています。こういう風に、中心選手から脇役へのトランジションがうまく行った選手は長い選手生命を獲得することができます。

 

一方で、同じマンチェスター・ユナイテッドのロイ・キーンは、MUTV の番組でチームメートをおおっぴらに批判し、アレックス・ファーガソン監督に移籍を命じられました。確かにプレイに衰えが見え始めていたとはいえ、まだまだチームに役立つ選手だったと思うのですが、こういう思い切った決断が下せるのがファーガソン監督のすごいところです。監督を差し置いて、一選手が公然と他の選手の批判を始めたらチームは壊れてしまいますから、ファーガソン監督がなんらかのアクションを取るのは当然でした。ロイ・キーンはその後セルティックで1年だけプレイして引退しました。

 

もちろん引退の時期を決めるのは選手本人です。チャンピオンのまま引退するボクサーもいるように、絶頂期の終わりとともに引退するという決断ももちろんありだと思います。実際、私もギグズやスコールズよりもロイ・キーンの方が好きな選手です。ただ、もうちょっとプレイしているのを見たかったというのはあります。日本だと、中田選手、それから野球の元巨人の江川選手とか。

 

今の日本代表でいうと、中村俊輔選手がこのトランジションの時期に差し掛かっているといえます。下からは本田、石川、といった選手が実力を伸ばしてきています。攻撃の選手でありながら危険なエリアにあまり顔を出さない彼のプレイスタイルも疑問視されています。また、メディアの報道を読む限りでは、なんだか監督目線でチームを批判したり、戦術を解説したりしていることが多い。ちょっと危険な傾向です。中村選手が、チームの一メンバーとしての立場、もっと言えば脇役として立場を受け入れられるかどうかが、彼の代表選手としてのキャリアを伸ばすための鍵だと思います。これはもちろん、選手本人だけの問題ではなく、スタッフ、チームメート、そして岡田監督などのサポートがあって実現することだと思います。有能な選手が、中心選手でなくなるとともにポッキリとキャリアを終わらせてしまう、というのはもうあまりみたくありません。