たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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トミー・ティアナン (1/2)

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トミー・ティアナン (Tommy Tiernan) はアイルランドのコメディアンです。アイルランドでは知らない人がいないほど有名ですが、人種、障害者、ゲイなどもネタにするので、物議を醸す人でもあります。

今年の夏に行われた Electric Picnic という大規模野外コンサート (何十ものバンドが複数のステージで演奏する形態) で、ティアナンさんはインタビュアーの質問に答える形でトークショーを開いていました。観客の一人 (パレスチナをサポートする緑のTシャツを着てたそうです) が、「これまであなたは反ユダヤ主義者だと非難されたことがありますか?」と質問しました。

ティアナンは「ユダヤ人はキリストを殺したのは彼らじゃないという。しかし、まさかメキシコ人が殺したわけじゃないだろう」みたいなギャグをクラブではやってたらしいのですが、ニューヨークでの公演の後、観客にいた2人のユダヤ人が楽屋を訪れ、このギャグについて彼を非難したことがあったそうです。

ティアナンは、このギャグの性質について「向こう見ずで無責任になって楽しむこと。注意深くなったり、行儀よくすることじゃないんだ。あなた自身の魂を信じ、何も真剣に受け取られることはないと人々が理解している特別に保護された環境において、あなたの中にある狂気を解き放つことなんだ」と説明します。

その上で、彼を非難しに来た2人のユダヤ人について「But these Jews, these f**king Jew c*nts came up to me. F**cking Christ-killing b*st**ds! F**king 6 million? I would have got 10 or 12 milliion out of that. No f**king problem! F**king two at a time, they would have gone! Hold hands, get in there! Leave us your teeth and glasses!」とやったのです。あんまり訳したくないのですが一応訳しますと「あのユダヤ人が、おたんこなすのユダヤ人がおれのところにやってきたんだ。キリスト殺しのろくでなしが。600 万人死んだって? おれなら 1000 万か 1200 万人やっちゃうね。全然問題ない。1 回に 2 人ずつ。この世からいなくなってたかもしれないね。手をつなげ。中に入れ (たぶんガス室のこと)。歯とメガネは置いて行けよ」

文字にすると結構きついですね。このコメントはもちろんいろんなところから批難を浴びています。

野党フィネゲール党の重鎮、アラン・シャッター下院議員は、「胸の悪くなるような容認しようのない暴言」とした上で、「観客がこれをおもしろいと思ったことが悲しい」と述べています。ダーモッド・マーティン ダブリン大司教は「コメディーだからといってすべてが許されるわけではない。コメディーが不寛容の前触れになることは十分にある」としています。アイルランドのユダヤ人協会も「このコメントは、ホロコーストの犠牲者を家族に持つ人々を悲しませただけでなく、人種差別を扇動する危険性もある。まともな考えをもった人がすべてティアナンのコメントを非難することを望んでいる」と声明を出しました。

では、ティアナンの言い分はどうでしょうか。ティアナンは自分の Web サイトにコメントを載せています。「私のコメントが誰かを傷つけたということに私はとても驚いている。なぜならそれは私の意図ではなかったのだから。Electric Picnic でのホットプレス誌 (インタビューの主催者) とのインタビューが文脈から切り離されて語られることにおおいに戸惑っている」

「観客の前で話したあのコメントは、コメディアンの義務のひとつは向こう見ずで無責任になることであり、コメディアンの語る言葉が文脈を離れて解釈されることがあってはならないという私の考えを説明するためのものだった」

「インタビューの全文を読むか、ポッドキャストを聞けば、私は暴言を吐く前に、これを深刻に受け取ってはならないと前置きしており、その議論の例として暴言を吐いているのがわかるはずだ」

「文脈を離れた場合、そして今現在はまさしく文脈を離れているわけだが、あのコメントは無神経で残酷で物知らずに聞こえる。こうしたことは以前も起こったし、これからも起こるだろう。しかし、パフォーマーとして私は、私の頭に浮かんだ突飛で、無責任で、向こう見ずな考えが、それらが語られた文脈で受け取られることを望むだけだ」

インタビュー・セッションを主催したホットプレス誌はティアナンを支援しています。同誌のナイル・ストークス編集長は「アラン・シャッター議員がインタビューを読んでティアナンがユダヤ人に対して偏見を抱いているという結論に達したのなら、致命的なユーモア欠乏症を病んでいる。早急に治療してもらったほうがいい。トミー・ティアナンの多くのインタビューがそうであるように、今回のインタビューも自然発生的なコミックパフォーマンスとなった。彼は、投げかけられるあらゆるテーマを即興で笑いに変えた。彼が発した言葉は激しかった。600 万人ではなく 1000 万か 1200 万を殺したと言ったわけだから。しかし、インタビュー全文を読めば、何が起こっていたのかを理解することができる。文脈を見れば、彼自身の感情を表現しているのではないことがわからないのは間抜けの人だけだ」

インタビューしていた同誌の常連寄稿者でジャーナリストのオラフ・ティアランセンは「観客の中で彼の発言をそのままに受け取った人はいなかった。彼のコメントはユーモラスなものとして受け取られた。なぜなら彼はそのように話を組み立てていったからだ。彼のジョークに感情を害した人の話から始め、次に感情を傷つけるとはどういうことを示すドラマテッックで大げさな例を示した。みんな笑ったし、私も笑った。なぜなら、それは「感情を傷つける」という概念を大げさに表したパフォーマンスだったからだ」

「その文脈において、彼の発言はまったく反ユダヤ主義的ではない。私は反ユダヤ主義者ではないが、私は笑っていた。なぜなら、それは、感情を実際に傷つけるにはどうすればよいかを劇的に表現する、コメディー・パフォーマーとして全力を尽くすトミー・ティアナンの姿だったからだ」

(次回に続きます --> http://blogs.yahoo.co.jp/tarascoffeeshop/21881887.html)