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アイルランドの女の子の名前:Fiadh/Fia

30年アイルランドに住んでいても、初めて聞くアイルランド語由来のファースト・ネームというのがあります。

 

昨日、オコネル・ストリートのイーソンズの文房具コーナーに行ったら、いろんな名前が入ったクリスマス用靴下を売っていました。その中に Fiadh というのがあって、これは初めて見聞きする名前だったので調べてみました。

 

 

そうすると、2020年の journal.ie の記事が見つかって、けっこう詳しく書いてありました。

 

読み方はカタカナで書くと「フィア」のようです。最後の dh は黙字なのですね。意味は複数あって、「尊敬(respect)」「野生(wildness)」「美しい鹿(beautiful deer)」です。

 

この記事が書かれたのは2020年なのですが、その段階での最新である2019年の調査によれば、アイルランドで生まれた女の子の赤ちゃんの名前で3番目に多かったのが Fiadh だそうです。その上にいるのが Emily と Grace ですから、アイルランド語由来の名前としては最も人気のある名前なわけです。3年ほど前から、それまで人気の高かった Saoirse (シアーシャ) とAoife (イッファ) を上回っているとのこと。

 

それで、最新のデータはどうなんだろうと調べてみたんですよ。そうしたら、2021年のデータで Emily と Grace すら抜き去り、堂々の第1位になっていたのです。

 

こんなに人気の高い名前なのになんで私が聞いたことがなかったのかということですけど、20歳以上の人で Fiadh と言う名前の人はほとんどいないのですよ。 Journal.ie の記事によりますと、20世紀にはこの名前はデータベースにまったく入っていなかったとのこと。日本では生命保険会社とかが人気の赤ちゃんの名前を調査したりしますけど、アイルランドの調査は国の機関である中央統計局がやっている全数調査なんです。つまり、ガチのデータベースなのです。

 

ある名前が急に人気が出るのは、1つには有名人の名前にあやかったからというのがあります。Saoirse (シアーシャ) は間違いなく女優のシアーシャ・ローナンの影響でしょう。この名前は響きもいいし、「平和」という意味も魅力的です。

 

Fiadh の方は有名人とは関係ないようです。今世紀に入ってから、オンラインのフォーラムでユーザーが意見を交わすことが活発になりました。その中には妊娠中の女性が集まるフォーラムや結婚関連のフォーラムもあります。そうしたフォーラムで、生まれてくる赤ちゃんの名前を議論することもあるわけです。

 

記事によりますと、Fiadh という名前について確認できる最も古いオンラインの会話は2000年代の後半のもの。こうした会話を見ていくと、Fiadh が人気の理由の1つは、「尊敬(respect)」「野生(wildness)」「美しい鹿(beautiful deer)」という複数の意味があること。つまり、かわいくて、斬新で、フェミニスト的なエネルギーを感じさせる名前だからだということのようです。

 

Fiadh には別の綴りもありまして、それは Fia。実は2010年までは Fia の方が Fiadh よりも多かったのですが、2018年の段階では Fiadh は Fia の 9 倍になったそうです。それでも、Fia と名付けられる赤ちゃんの数も増え続けています。

 

Fiadh と Fia の綴りの違いの原因は、元のアイルランド語の綴りが定まっていないことにもあります。パトリック・ディニーンが編纂した有名なアイルランド語英語辞典を見てみると、「鹿」「野生」を意味するアイルランド語の綴りは、もともとの版では Fiadh、1959年の版では Fia となり、その後の版では foclóirí となりました。ところが、「尊敬」を意味する Fiadh は今でも Fiadh のままなのです。したがって、Fiadh の方がより深い意味を持つことになります。

 

黙字を含む名前を嫌がる人が多いのではないかと言う人もいるのですが、あまりそうとは言えないということのようです。また、Fiadh という名前の人気の高まりをみると、アイルランド語由来の名前の人気も少なくともしばらくは衰えることはなさそうです。

 

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