神戸からスコットランドのセルティックに移籍した古橋享梧選手が、8月8日のダンディー戦に初先発し、ハットトリックを決めるという大活躍を見せました。
1点目の得点をきめたところでアナウンサーが「セルティックのジャパニーズ・ボーイ、キョウゴ」と言うシーン。(↓ 頭出ししてあります)
今年の4月にバイデン大統領がゴルフのマスターズで優勝した松山英樹選手のことを「ジャパニーズ・ボーイ」と呼んで、バカにしてんじゃないよ、と話題になりましたが、古橋選手の場合は違います。こちらの綴りは「Boy」ではなく「Bhoy」です。
セルティックの選手たち、またはサポーターたちを指して Bhoys と呼びます。これはアイルランドのアクセントで Boy を発音するときに、柔らかい h の音が b の後に入るからだそうです。また、綴りに h を加えると、アイルランド語っぽく見えるという理由もあったようです。Bhoysという愛称は、セルティックというクラブとアイルランドのリンクを象徴するものなわけです。
普通名詞としての bhoy という単語はちゃんとした辞書には入ってないことが多いようですが、俗語を解説する資料によりますと、単に「少年」という意味よりも、「快活な若い男」または「荒っぽい若い男」の意味になるようです。
こちらの Celtic Wiki というウェブサイトによりますと、Bhoy という語は、19世紀にニューヨークで生まれ (おそらくアイリッシュ系移民のあいだで)、その後、大西洋を越えて逆輸入されてきたものと考えられています。
セルティックが「Bhoys」を自称した歴史は、記録にあるものだけでも1900年頃にまで遡ります。クラブが当時配布した絵葉書に「The Bould Bhoys」と書かれたものがあるのです。Bould は Bold のことでしょう。
ただし、その頃は、「Bhoys」はセルティック以外にもアイルランド系のさまざまなサッカー・クラブの愛称として使われていた可能性があります。たとえば、エジンバラのハイバーニアンズも Bhoys と呼ばれていましたし (「ハイバーニア」は「アイルランド」の美称です)、1892年のアバディーンの新聞には、地元の小さなアイルランド系クラブのことを Bhoys と呼んだ記事が載っています。
しかし、セルティックでジャパニーズ・ボーイと呼ばれた元祖はもちろん中村俊輔選手です。2006/07のチャンピオンズ・リングのマンチェスター・ユナイテッド戦@オールド・トラッフォード、中村選手がフリーキックを決めたシーン。アナウンサーが絶叫します。「Is this the moment for the Japanese bhoy, UP HIGH, OH MY GOOOOOOAAAAAAALLLLLLLL, IT IS THE MOMENT FOR THE JAPANESE BHOY」
ちなみに Bhoys の女性形は Ghals ですが、こちらはあまり目にしたことはありません。
あと余談ですが、スコットランドとジャパニーズ・ボーイといいますと、思い出すのが1981年の英国チャートNo1のヒット曲、アニーカが歌う「Japanese Boy」。こちらの綴りは Boy です。アニーカさんはスコットランド出身のシンガーで、ヒット曲はこの曲だけのいわゆる一発屋さん。日本でも発売したいと日本のレコード会社にもちかけたのだが、曲調が中国風すぎるということで断られたそうです。