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アルスター・バンクがアイルランド共和国から撤退

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 アルスター・バンクがアイルランド共和国からの撤退を決める可能性が大きくなってきました。今日 (2/18) の夕方、親会社のナットウェストの取締役会で決定するようです。

 

www.irishtimes.com

 

撤退するのではないかという新聞報道が昨年の 9 月に流れて以来、憶測が飛び交っていたようですが、これで決着しそうです。撤退が決まれば160年以上にわたってアイルランド共和国で営業を続けてきた銀行が消えることになります。昨年9月の報道では、決定から撤退完了まで 6 年ぐらいかかると書かれていましたので、すぐに支店がクローズするということではなさそうです。

 

アルスター・バンクは 1836年にベルファストで設立された銀行です。1917年にナショナル・ウェストミンスター銀行 (当時の名前はロンドン・カウンティ・アンド・ウェストミンスター銀行) の子会社となりました。ナショナル・ウェストミンスター銀行が2000年にロイヤル・バンク・オブ・スコットランド (RBS) に買収され、2020年にRBS がナットウェスト・グループに改称されたというわけです。

 

私がアイルランドに来た1990年代前半には、大きな市中銀行が4つありました。バンク・オブ・アイルランドAIB、ナショナル・アイリッシュ・バンク、そしてアルスター・バンクです。ナショナル・アイリッシュ・バンクはデンマークの銀行に買収されてダンスケ・バンクと名前を変えた後、2013年にリテール・バンキングから撤退して街なかの支店を全部閉じてしまいました。2000年代の後半ぐらいにバンク・オブ・スコットランドの子会社のハリファックス市中銀行業務を始めたんですが、すぐに (5年ぐらい?)で撤退してしまいました。

 

アイルランド共和国におけるアルスター・バンクの現在の市場シェアは、住宅ローンが15%、中小企業向け貸付が 20%。コーポレート・バンキングも好調です。その意味で、リーマンショック後に撤退したダンスケやハリファックスよりも社会に与える影響は大きいといえます。

 

リーマンショック後にアルスター・バンクは RBS から 150 億ポンドの救済資金を得ています (これは RBS がイギリス政府から受けた救済資金の 3 分の 1)。現在でもアルスター・バンクはリスク・アセットの 28% の資本準備金を用意することを要求されており、これは他の銀行の長期的な目標の2倍にあたります。これにより、ナットウェストの利益を圧迫されています。

 

アルスター・バンクの融資ポートフォリオは 205 億ユーロに上りますが、これにはAIB、パーマネントTSB、ノンバンクのディロスクなどが興味を示しています。

 

またアルスター・バンクは220億ユーロの預金を抱えていて、撤退に伴い、この預金が他の銀行に行くことになるわけですが、これが問題になる可能性もあるとのこと。いま、ヨーロッパ中央銀行金利はマイナスなので、お金を預けると金利が付くどころか手数料取られちゃうんですよ。

 

アルスター・バンクの従業員は共和国で2800人。北アイルランドでの営業は続けますが、北アイルランドの社員の中にも、共和国のオペレーションのサポート業務を行っている人がかなりいるとか。雇用の面でも大きな影響が出そうです。

 

 

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