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私の好きな日本語 - 「歌合戦」

イングランドラグビー代表のフレディー・バーンズ選手が、日本の豊田自動織機シャトルズに移籍するというニュースが流れていました。ラグビーの世界統括団体「ワールド・ラグビー」の日本語公式ツイッター・アカウントは、「バーンズ選手に日本語の単語を 1 つ教えるとしたら?」なんていうツイートを投稿していました。

 

私は「歌合戦」という単語がすごく好きで、バーンズ選手に教えたいかなとも思ったのですが、それはたぶん迷惑なのでやめておきます。普通は「ありがとう」とか「いただきます」とかでしょうから。

 

さて「歌合戦」と言う言葉なんですけど、何がいいかといいますと、まず音の響きがいいですね。「おと」とヌルっと始まって、「がっせん」で急にアクセルを踏んで速度を上げる感じ。ゆっくりと川を下っていたら、いきなり急流に巻き込まれる感じです。

 

おなじカテゴリの言葉としては、日本語ではありませんが、「しゃう」っときて「えっせん」のシャウエッセン、「でりか」ときて「てっせん」のデリカテッセンなどがあると思います。

 

また、意味の上から言っても、「歌」という長閑でピースフルな言葉から、いきなり「合戦」です。生きるか死ぬかの戦争ですよ。緩和と緊張の対照が際立ちます。ギャップ萌えですね。

 

また、イメージが広がるというか、想像力が掻き立てられる言葉でもあります。「歌合戦」と聞くと、私は映画『ブレイブハート』のあるシーンを思い出します。スコットランド軍とイングランド軍が距離をとって対峙しています。号令とともに両軍がそれぞれ横一列になって突進してきます。スコットランド軍はもちろんスコットランド人が兵士なのですが、イングランド軍の方はアイルランド人が前線をまかされていたのです。

 

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手を伸ばせば敵に届きそうな距離まで走ってきた後、戦闘が始まるかとおもいきや、両軍が和気あいあいと挨拶を交わすのです。アイルランド人もスコットランド人もケルト民族ですからね。同族なのです。

 

さて、両軍が一列に並んで対峙したこの瞬間に、歌合戦が始まってしまうことを想像してみてください。わくわくしますね。

 

最初はお互いに代表を出して一曲二曲、ジャブを打ち合った後、次第に興が乗ってきます。コール&レスポンスが始まったりするのかもしれません。片方が「ハー・ディ・ハー・ディ・ハー・ディ・ハ」と呼びかけると、他方も「ハー・ディ・ハー・ディ・ハー・ディ・ハ」と応えるでしょう (キャブ・キャロウェイです。『ブルースブラザーズ』観てね)。そのうち輪唱も始まるでしょう。「カエルの歌が」と一方が歌い出すと1小節遅れて他方が追いかけるのです。King Gnu の『白日』をオクターブ・ユニゾンで歌ったりするのかもしれません。そのうち、「はないちもんめ」を踊り出したりもするでしょう。

 

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キャブ・キャロウェイ

最近は年末の紅白歌合戦ぐらいしか「歌合戦」という言葉を聞く機会がなくて寂しい限りですね。逆に言うと紅白歌合戦があったからこそ「歌合戦」という言葉が生き残っているのかもしれませんが。

 

私の好きな言葉にもうひとつ「貝合わせ」というのがあるのですが、これはどうしても下ネタの方に行きそうなので、やめておきます。

 

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イングランドでは Paw と Pour と Poor は同音異義語

私は日本にいた頃にベルリッツの英会話教室に100万円近く使ったのですが、最近は便利な世の中になりました。YouTube で英会話レッスンの動画を見ることができますし、生の英語にも触れることができます。そして、無料です。英語の自動字幕もかなり正確です。

 

先日、「English Like A Native」という英会話レッスンのチャンネルを見ていました。アナさんというイングランド人女性が先生です。

 

 

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イギリス国内の方言または他の英語圏の国のアクセントをイギリス標準英語と比べるというシリーズがあるのですが、北アイルランド編がけっこうおもしろかったのでご紹介します。

 

最初は北アイルランドでよく使われるフレーズの紹介から。

 

What’s the craic? (What’s going on?)

Dead on (Fine)

Eejit (idiot)

Aye (Yes)

Scundered (embarrased)

 

最初の 3 つはダブリンでも言う。Aye はあんまり使わないと思う。どちらかというとスコットランドっぽい。Scundered は初めて聞きました。

 

それから発音の話に移るんだけど、北アイルランドで特徴的なのは「aʊ」の発音 (動画の 2:09 あたり)。たとえば、Now はカタカナで書くと「ナウ」ですけど、北アイルランド人が言うと「ナイ」に聞こえる。Cow は「カイ」に聞こえる。

 

ほかにもいろいろ興味深くて、イギリス標準英語は -er、-or などの r を発音しないが、北アイルランドはしがちとか、-ing の g はイギリス標準英語では鼻濁音になるが、北アイルランドではならない。Father とかの a の音は、イギリス標準英語では口を開けて (下あごを落として) 発音するが、北アイルランドではそうではない (日本語の「あ」の音に近い)。Cat、Hat など、単語の最後に来る t は北アイルランドでは発音しないのだが、同様に t を発音しないコックニー訛りとは舌の位置が違うとか、新発見がいっぱい。

 

しかし、私が驚愕したのは、イギリス標準英語では Paw と Poor と Pour を全部「ポー」と同じに発音すること。北アイルランド人の男性が「ポー」「ピュア」(アイルランドの人はたぶんアイルランド語の影響だと思うんだけど j の音が入ることが多い。だからプアではなくてピュア)「ポア」と発音すると、アナさんが (愛情を込めて) 「crazy!」というんだけど、いやいやいやいや、それはこっちのセリフやで。イギリス人に言ったら怒られるか (笑)。

 

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このあと、リバプールの訛りの動画も見たんだけど、ほんとに知らない言い回しばかりでびっくりしました。

 

 

そのほかの英会話レッスンのチャンネルをご紹介しますと、きれいなお姉さんに英語を教わりたいならこちら。「English with Lucy」の Lucy さん。イギリス人です。

 

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それから、強烈な個性のお姉さんに英語を教わりたいなら、「EnglishLessons4U - Learn English with Ronnie!」の Ronnie さん。この人の教え方やテーマの選び方は型破りでほんと面白いです。カナダの方。

 

www.youtube.com

 

 

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色砂絵のテキ屋

小学校低学年のころ、私は高知市内に住んでいました。1960年代の終わりごろです。通学の途中に小高坂 (こだかさ) 小学校という私が通っていたのとは別の小学校があったのですが、その小学校の前の道に、週に一度、色砂絵のテキ屋が露店を出していました。

 

色砂絵のことをふと思い出して、インターネットで検索してみたんですが、ほとんど情報が出てこないんですよね。ですので、記録という意味も込めて、私が覚えている限りで書いてみたいと思います。ちなみに、私たちは砂絵と呼んでいたのですが、砂絵というといろんな種類が思い浮かびますので、ここでは色砂絵ということにさせていただきます。

 

まず、色砂絵とは何かを説明しまが、紙の上に筆を使って液体の糊を塗り、その上に色の付いた砂を振りかけて絵を書くのです。紙は一万円札よりも少し大きいくらいの長方形で、材質は色紙と同じものだったと思います。記憶では、色紙 (しきし) と同様に金色の縁が付いていました。糊は透明で、いわゆる液体のりよりも粘度が低く、薬瓶のようなガラス瓶に入っていました。色の付いた砂と言うのはほんとうの砂ではなくて、たぶん人工の砂状の素材に色を付けたものだと思います。色ごとに小さな透明のビニール袋に入っています。ちょっといい喩えが思い浮かばないのですが、サイズとしては小分けした砂糖の袋ぐらいかな。

 

うろ覚えなのですが、仕組みは確かこんな風でした。まず、色紙、糊、筆、色砂の袋をいくつか購入します。おうちに帰って頑張って砂絵の作品を作ります。テキ屋のおじさんは毎週決まった曜日に店を構えますので、そのときに自分の砂絵を持っていきます。その作品の出来をおじさんが判断して、いい作品には色砂の袋を 5 つぐらいくれて、できの悪い作品には 1 つだけくれます。作品はおじさんがキープして、返却してはくれなかったと記憶しています。

 

私はほんとに絵の才能がなくて、平面的な絵しかかめませんでした。もらえる袋はいつも 1 つです。当然、夢中になることもできなくて、すぐにやめてしまいました。

 

だけど、才能のある子って、本当にすごい作品を作ってくるんですよ。立体感のあるゴージャスな絵です。上手い人は楽しいだろうな、と思います。

 

テキ屋のおじさんは、地べたにゴザみたいなのを広げて、そこに商品や商売道具を並べていました。おじさんは椅子に座っていたんだろうな、たぶん。おじさんは普通の人で、私の記憶の中ではランニングを着ています。縞のシャツを着てベレー帽を被っているとか、そういうことはありませんでした。

 

私自身はすぐにやめてしまったので定かではないのですが、テキ屋がでていた期間は 3 か月とか、そんなに長くなかったような気がします。

 

ちょっと懐かしくなったので書いてみました。同じような体験をされた方がいらっしゃいましたら教えてください。

 

Wikipedia で「砂絵」の項を見てみたんですが、江戸時代にはリクエストに応じて砂絵を描く大道芸人がいたようです。

 

あと、私は香川県西部の出身なのですが、あのあたりの人にとっては、砂絵というと観音寺市琴弾公園銭形砂絵なんですよ。縦122メートル、横 90メートルという巨大なものなのですが、江戸時代に作られたらしいということはわかっているものの、何のために作られたのか、はっきりしたことがわかっていないという謎めいた砂絵です。

 

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アイリッシュ・ウイスキーの絵葉書

雑談です。

 

私は郵便関係全般が好きで、古い郵便ポストを見に行ったり (アイルランドでは100年以上前のポストが現役で使われています)、絵葉書を集めたりしています。

 

ウイスキーをテーマにした絵葉書も結構あるのでご紹介したいと思います。

 

まず、ウイスキー蒸留所に見学に行ったときにギフト・ショップで買った絵葉書から。

 

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こちらはダブリンのオールド・ジェムソン蒸留所で買ったものです。エイダン・ケリー (Adan Kelly) さんというフォトグラファーの撮影した写真です。ウイスキーに直接関係するのは樽の写真だけ。他はダブリンのストリートの夜を切り取った写真です。この方は写真の上に文字を書くのが作風なんですね。宛名を書く面にはジェムソンのロゴが入っています。

 

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次はピアース・ライオンズ蒸留所の絵葉書。5枚セット。こちらは使われなくなった教会を再利用した蒸留所で、ステンドガラスが特徴です。そのステンドグラスをテーマにした絵葉書が中心ですね。

 

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上の2つの蒸留所の絵葉書は、このようにセットになって販売されています。

 

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それから、ブッシュミルズの蒸留所で買った絵葉書。11枚あります。蒸留所の外観の写真から貯蔵所、蒸留器、ブッシュミルズのテーストの図解など、いろいろ取り揃えられています。

 

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そして、ロウ&コ蒸留所。こちらの絵葉書は木製です。1枚7ユーロとお値段も張りますが。

 

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次に、土産物屋さんで売っている絵葉書。Real Ireland という観光客向けの絵葉書を作っている会社があるのですが、そこの製品です。パディ・ウイスキーの看板をそのまま絵葉書にしたもの。私が持っているのはこれだけですが、ジェムソンなどその他のウイスキーの看板を絵葉書にしたものもあります。最近見ないので、ありました、というべきかな。

 

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続きまして、パブ・ミラーの絵葉書。どちらもパワーズウイスキーですね。上が Real Ireland。下は Insight Diblin というこれも観光客向け絵葉書を作っていた会社のものです。

 

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それからもう1つ。左の絵葉書は3年ほど前にオンラインで買ったんだけど、ドイツの方が趣味で作っている絵葉書かな、と思うんだけど。パブのキャビネットの前でおじさんが幸せそうにしています。手にもっているのはパワーズウイスキー。右側はこれも Real Ireland の絵葉書で、パブの外観ですが、こちらもパワーズウイスキーのミラーが写っています。パワーズのパブ・ミラーは金色をちりばめたデザインが美しいので写真映えしますね。

 

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それからこちらは、かなり昔に買ったものですが (25年以上前)、アイリッシュ・コーヒーアイリッシュ・ホット・トディの絵葉書。宛名を書く方の面にレシピが記載されています。写っているのはブッシュミルですが、ジェムソンが写っている別バージョンもあったはず。リーシュ県のエモ (Emo) という小さい村にある会社が出していたものですが、その会社はいま検索しても見つかりません。

 

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最後は、ルイヴィトン社がルーベン・トレド (Ruben Toledo) というアーチストに依頼して世界の100都市のイラストを描いてもらい、絵葉書セットにして販売したのですが、その中のダブリン編。パブの中で男女が語り合っている図。背後にはやはりパワーズウイスキーのパブ・ミラーが描かれています。

家族の複数の人が一度に亡くなる事件が1週間に3件立て続けに起きました

ここ1週間ぐらいのうちに、悲劇的な事件が 3 件ほど立て続けに起きました。

 

先週木曜日には、ダブリン郊外のルーカンという町で、30代のお母さんと7か月になる赤ちゃんが死んでいるのが見つかりました。お母さんの方はM50のあたりで車を降りて挙動不審な人がいるということで通報があり、警察が駆け付けたところ亡くなっていたのとこと。

 

www.irishtimes.com

 

車のナンバーから住所を割り出し、彼女の自宅を訪れたところ、赤ちゃんが死んでいるのが見つかったと。

 

警察の発表では、「Family Tragedy」(家族内の悲劇) ということで、この事件については「not looking for anyone else」(捜査対象として誰も捜していない) とのこと。こういうとき、アイルランドの警察ははっきりとは言わないんですね。

 

赤ちゃんは事故でなくなったか、もしくはお母さんが殺してしまった。そしてお母さんは自殺したということでしょう。

 

それから、今週の月曜日には、コークのカンターク (Kanturk) という村で、50代の父親と20代の2人の息子が死んでいるのが見つかりました。

 

www.irishtimes.com

 

どうやら長男は父親と次男に銃で殺され、父親と次男は銃で心中したようです。母親の遺言に関して争いがあったようです。病気を患っている (たぶん死期の近い) 母親がひとり残されました。

 

今日の水曜日は、ダブリンのバリンティア (Ballinteer) という地区で、30代の母親と 2 人の子供が死んでいるのが見つかりました。応答がないので近所の人が通報。警察が踏み込んだところ遺体が見つかったそうです。

 

www.irishtimes.com

 

新聞にははっきりとは書いていないのですが、父親が犯人ではないかと疑われているような書き方でした。このご家族はインドの出身だそうです。

 

同じ家族内の複数の人が亡くなる事件が 1 週間に 3 件も起きたのはちょっとショックですね。コロナのロックダウンでいつも一緒にいるので、家族間の関係がぎくしゃくする傾向にあるのかな、などと思ってしまいます。

 

重たい話の後でするような話ではないのかもしれませんけど、今日の明け方、夢を見まして、珍しくサイコ・スリラーみたいな悪い夢でした。登場人物の1人に「サイコパスは歌を最後まで歌い切る」と言われた。怖くなって目が覚めました。(←ここまで事実   ここから妄想→)すると、どこからともなく歌声が聞こえ、なかなか止まず、やっと終わったな、と思った瞬間。。。ぎゃあぁぁぁぁぁ。

 

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ウイスキー・アンド・ティー・ブラック

アイリッシュタイムズ紙に、ウイスキーと紅茶を使ったブラックという焼き菓子のレシピと解説が掲載されていたので訳してみました。

 

ブラックは英語で綴ると Brack。黒を意味する Black ではありません。正式にはバームブラック (Barmbrack) というのですが、日常的にはだいたいブラックまたはティー・ブラックと呼ばれることが多いと思います (材料に紅茶を使うため)。

 

なぜこの時期にブラックのレシピが新聞に載るかというと、アイルランドではハロウィンに食べるお菓子ということになっているからです。

 

記事の中にもありますが、いろいろな小物がブラックの中に入れられています。私の知る限りでは、入っているのは指輪で、それの入ったスライスが当たった人はラッキーという話だったのですが、記事によれば他にもいろいろ入れたりするようです。

 

記事を書き、レシピを提供してくれたのは、マーティン・ドワイヤーさんという元シェフで、今はフランスでB&Bを営んでいる方です。

 

記事の中に出てくる固有名詞について先に解説しておきます。

 

セオドーラ・フィッツギボン (Theodora FitzGibbon, 1916–1991): アイルランド人の女優。料理本を何冊も出している。

 

アビー劇場 (Abbey Theatre): グレゴリー夫人などが設立に貢献した劇場。こけら落としは 1904年。アイルランド文芸復興運動の作家たちと密接に結びついていた。

 

グレゴリー夫人 (Lady Gregory, 1852–1932): アイルランドの劇作家、詩人。ケルト文学復興運動の中心人物。

 

クール・パーク (Coole Park): アイルランド西部のゴルウェー県にある自然公園。もともとはグレゴリー家の敷地だった。

 

 

 (翻訳ここから)

やっぱり基本はブラック: 簡単なハロウィンの焼き菓子

2020年10月27日

マーティン・ドワイヤー (Martin Dwyer) 

 

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我が家で作る伝統的アイリッシュ・ケーキの種類はそれほど多いわけではないが、作るケーキについてはじっくりとレシピを育てていく。そのケーキとは、ティーブラックである。伝統的なバームブラックは、パンと同様にイーストを使って作られていた。しかし、ここで紹介するのは、もっと家庭的な我が家のレシピである。

 

私が使っていた元々のティーブラックのレシピは、セオドーラ・フィッツギボンの本に載っていたものである。この本で彼女が教えてくれたヒントに私はいつも従っている。「私の祖母は、同じ量の紅茶とウイスキーを混ぜた液体にフルーツを浸していた。これは男性陣には非常に好評だった」

 

セクシズムは気にしないで。とにかくおいしくなるのだ。

 

私のレシピはこうだ。パウンドケーキ型 3 つ分の材料を示すので、作る個数に応じて材料の量を調節してほしい。

 

アビー劇場が設立された当初、ハロウィンになるとグレゴリー婦人がクール・パークの自宅で作った大きなブラックをもって楽屋にやってきたそうだ。

 

ハロウィン用のブラックは、焼く前にさまざまな小物を中に入れる (耐油紙にしっかり包むこと)。グリーンピースは貧困を意味する。豆は近いうちに富が手に入ることを意味する。指輪は結婚を意味する。コインは富が期待できることを意味する。布切れは信仰生活を意味する (注: take the cloth は「聖職者になる」という意味の熟語)。

 

(グレゴリー婦人にならって) クリスマスケーキ型でより長い時間をかけて 1 つの大きなブラックを焼くと、しっとりとした素晴らしいクリスマスケーキができる。それほど日持ちはしないが、我が家ではそれが問題になったことはない。

 

 

マーティン・ドワイヤーのウイスキー・アンド・ティー・ブラック

 

500g のパウンドケーキ型 3 つ分

材料
干しブドウ: 775g
干しアプリコット: 225g

ステムジンジャー: (ショウガのシロップ漬け) 60g

紅茶 (ミルクなし) : 2 カップ (1 カップは約175ml)

ウイスキー: 1 カップ

ダークブラウンシュガー: 450g

小麦粉: 450g

卵: 3  個

ベーキングパウダー: 小さじすり切り 3 杯

 

料理方法

  1. ブラックを作る前の晩、アプリコットとステムジンジャーを小さく刻み、干しブドウと砂糖と一緒に紅茶とウイスキーに一晩浸す。

 

  1. 翌日、前日用意したフルーツを液体と共に大きなボールにあける。

 

  1. 卵を泡立てる。

 

  1. ベーキングパウダーを小麦粉に追加する。

 

  1. 小麦粉の3分の1をフルーツに入れてかき混ぜ、次に卵の3分の1を入れてかき混ぜる。よくかき混ぜて、混ぜ合わせる。残りの小麦と卵を順番に追加する。使用する場合は、小さな飾りを入れる。

 

  1. 3つのパウンドケーキ型にバターを塗り、こびり付き防止用のベーキングシートを底に敷く(または、こびり付き防止用のケーキライナーを使用する)。

 

  1. 混合物を3 つのパウンドケーキ型に入れる。

 

  1. 150度で1 時間焼く (可能であれば、オーブンのファンをオフにする)。串でつついて焼けたかどうか確認する。中は非常に湿っているけれども、焼きあがっているはずである。必要であれば、あと 20 ~ 30 分焼く。

 

  1. パウンドケーキ型から取り出し、ラックの上で冷ます。

 

(翻訳ここまで)

アイルランド人、”and” 言い過ぎ問題

アイルランドでは皆さん英語をしゃべっていますが、アイルランドの第一公用語アイルランド語です。テレビでもアイルランド語の番組をやっています。RTE (日本でいう NHK みたいな公共放送) では5分ほどの短いニュース番組をアイルランド語でやっていますし、TG4 というアイルランド語専門テレビ局があって、そこではラグビーの試合を中継したりするのでけっこう見たりするのです。

 

アイルランド語を聞いていて気づくのは、「Agus」という単語が頻繁に出てくるということです。「Agus」っていうのは、英語でいうと「and」の意味だということは知っていたので、アイルランド人、めっちゃ and 言うやん、と思っていたのですが、これには理由があったのです。

 

それがわかったのも、先日ロックダウン直前に本屋さんに行って、この本を買ったからです。

 

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『The Dictionary of Hiberno-English』、つまりアイルランド英語辞典です。アイルランドでは特殊な使われ方をする英単語や特殊な意味を持つ英単語、そしてアイルランド語の単語だが日常の英語会話に入ってきている単語などが、見出し語として掲載されています。

 

で、この本の中の「and」の項を見てみたところ、アイルランド語の「agus」は単に「and」の意味だけではなく、従属接続詞全般、すなわち、「if」「because」「although」「when」などのすべての意味で使えるのだそうです。

 

そりゃ、「agus」多くなるわけだ。

 

これによって、アイルランド語は英語より意味が曖昧になるわけですが、日本語も単数/複数の区別ないとか、中国語は時制がないとか、それでもなんとかなるわけなので、アイルランド語話者も文脈で意味を区別することができるということなのでしょう。

 

そして、アイルランド人は英語をしゃべるときに使う「and」も、他の英語話者の「and」に比べて、はるかに広い意味を持つそうです。

 

あと、面白いと思ったのは、「What age are you?」。アイルランドでは、年齢を聞くときに「How old are you?」よりもずっと一般的に用いられるフレーズだと思います。「How old are you?」はとてもフォーマルな印象です。

 

私はこのフレーズは英語圏で一般的に使われるものだと思っていたのですが、そうではないようです。これもアイルランド語からの直訳でこうなっているそうです。同じゲール語圏のスコットランドでも使うそうですが、それ以外の場所で「What age are you?」を使うと、「あ、この人、ネイティブ・スピーカーではないな」という感じになるそうです。

 

あと、アイルランド英語でよく言われるのは「after」の使い方ですね。アイルランド語には現在完了形がないので、現在完了形の代わりに「after」を使うと。つまり、標準英語の「I’ve just had my dinner」が「I’m after having my dinner」になるわけです。

 

この本には、アイルランドの風俗や食べ物にまつわる単語も掲載されていて、こちらも楽しいです。

 

たとえば、「Gur-cake」(ガー・ケーキ)。これは薄いペイストリー生地の間にパンくずや干しブドウで作った焦げ茶色のペースト状のフィリングを挟んだお菓子。だいたい正方形をしています。ダブリンの貧しい子供たちの間で人気のあったお菓子と書かれています。

 

 

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「Gur」の語源については砂糖 (Sugar) の訛ったものだという説もあり、くそガキを意味するダブリンの方言 Gurrier から来ているという説もあります。ガー・ケーキはパン屋さんが余りモノから作る安いお菓子だったわけで、くそガキの皆さんにもお求めやすい価格だったということのようです。

 

そういう意味では、ダブリンのソール・フード的なものでしょうか。ダブリンのソール・フードはジャファ・ケーキだけではなかったのですね。

 

よく似たお菓子には他の地域にもあって、コークではドンキーズ・ガッジ、イギリスの一部の地域ではフライズ・グレイブヤード (蠅の墓) などと呼ばれるそうです (干しブドウが死んだ蠅に見えるため)。

 

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