たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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アイルランド人、”and” 言い過ぎ問題

アイルランドでは皆さん英語をしゃべっていますが、アイルランドの第一公用語アイルランド語です。テレビでもアイルランド語の番組をやっています。RTE (日本でいう NHK みたいな公共放送) では5分ほどの短いニュース番組をアイルランド語でやっていますし、TG4 というアイルランド語専門テレビ局があって、そこではラグビーの試合を中継したりするのでけっこう見たりするのです。

 

アイルランド語を聞いていて気づくのは、「Agus」という単語が頻繁に出てくるということです。「Agus」っていうのは、英語でいうと「and」の意味だということは知っていたので、アイルランド人、めっちゃ and 言うやん、と思っていたのですが、これには理由があったのです。

 

それがわかったのも、先日ロックダウン直前に本屋さんに行って、この本を買ったからです。

 

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『The Dictionary of Hiberno-English』、つまりアイルランド英語辞典です。アイルランドでは特殊な使われ方をする英単語や特殊な意味を持つ英単語、そしてアイルランド語の単語だが日常の英語会話に入ってきている単語などが、見出し語として掲載されています。

 

で、この本の中の「and」の項を見てみたところ、アイルランド語の「agus」は単に「and」の意味だけではなく、従属接続詞全般、すなわち、「if」「because」「although」「when」などのすべての意味で使えるのだそうです。

 

そりゃ、「agus」多くなるわけだ。

 

これによって、アイルランド語は英語より意味が曖昧になるわけですが、日本語も単数/複数の区別ないとか、中国語は時制がないとか、それでもなんとかなるわけなので、アイルランド語話者も文脈で意味を区別することができるということなのでしょう。

 

そして、アイルランド人は英語をしゃべるときに使う「and」も、他の英語話者の「and」に比べて、はるかに広い意味を持つそうです。

 

あと、面白いと思ったのは、「What age are you?」。アイルランドでは、年齢を聞くときに「How old are you?」よりもずっと一般的に用いられるフレーズだと思います。「How old are you?」はとてもフォーマルな印象です。

 

私はこのフレーズは英語圏で一般的に使われるものだと思っていたのですが、そうではないようです。これもアイルランド語からの直訳でこうなっているそうです。同じゲール語圏のスコットランドでも使うそうですが、それ以外の場所で「What age are you?」を使うと、「あ、この人、ネイティブ・スピーカーではないな」という感じになるそうです。

 

あと、アイルランド英語でよく言われるのは「after」の使い方ですね。アイルランド語には現在完了形がないので、現在完了形の代わりに「after」を使うと。つまり、標準英語の「I’ve just had my dinner」が「I’m after having my dinner」になるわけです。

 

この本には、アイルランドの風俗や食べ物にまつわる単語も掲載されていて、こちらも楽しいです。

 

たとえば、「Gur-cake」(ガー・ケーキ)。これは薄いペイストリー生地の間にパンくずや干しブドウで作った焦げ茶色のペースト状のフィリングを挟んだお菓子。だいたい正方形をしています。ダブリンの貧しい子供たちの間で人気のあったお菓子と書かれています。

 

 

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「Gur」の語源については砂糖 (Sugar) の訛ったものだという説もあり、くそガキを意味するダブリンの方言 Gurrier から来ているという説もあります。ガー・ケーキはパン屋さんが余りモノから作る安いお菓子だったわけで、くそガキの皆さんにもお求めやすい価格だったということのようです。

 

そういう意味では、ダブリンのソール・フード的なものでしょうか。ダブリンのソール・フードはジャファ・ケーキだけではなかったのですね。

 

よく似たお菓子には他の地域にもあって、コークではドンキーズ・ガッジ、イギリスの一部の地域ではフライズ・グレイブヤード (蠅の墓) などと呼ばれるそうです (干しブドウが死んだ蠅に見えるため)。

 

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