たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

新型コロナウイルスがアイリッシュ・ウイスキー業界に与える影響

5月15日付のアイリッシュ・タイムズ紙に、「アイリッシュ・ウイスキーの売り上げに悪影響。400人の職が失われる可能性」という記事が掲載されていたので、かいつまんでご紹介します。

 

www.irishtimes.com

 

アイリッシュ・ウイスキーの2019年の年間売り上げは1億3700万本を記録。これは2010年と比較して2倍の数字だそうです。しかし、アイリッシュ・ウイスキー協会(IWA)の最高責任者であるウィリアム・ラベル氏によると、ロックダウンにより世界中でパブや空港のデューティー・フリーが閉鎖されているため、成長が脅かされているとのこと。

 

「発注はキャンセルされ、在庫を引き取ってくれという要請もある」

 

蒸留所のビジター・センターで働く409人のうち、その多くは政府のCovid-19賃金支援を受けているとのこと。

 

「別の部署に回って仕事を続けている人もいれば、賃金支援を受けている人もいる。状況は毎日のように変わっており、IWAのメンバー企業は雇用を確保することに懸命に取り組んでいる」

 

ウイスキーの生産部門で働く約1000人のほとんどは現在も仕事を続けているとのこと。

 

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ジェムソンを生産するアイリッシュ・ディスティラーズ・グループ(IDG)やタラモア・デューのブランドを持つウィリアム・グラント社は、自社の製造ラインを活用してハンド・サニタイザー用のアルコール・ジェルを生産しています。

 

さらには、新進の小規模蒸留所もサニタイザーの生産に協力しています。たとえば、コナハト・ウイスキー社は、80,000本の250mlボトルを医療機関に提供し、個人消費者にも販売しています。

 

Ibec (アイルランドの経営者の団体、日本で言えば経団連みたいなところ) 傘下にあるアルコール飲料の業界団体のドリンクス・アイルランド (Drinks Ireland) は、ウイスキーの売り上げを推進するため、大学のマーケティング学科の卒業生をウイスキー業界で雇用するにあたって、その賃金の70%を支援してくれるようにアイルランド政府および北アイルランド自治政府に要請するとしています。70%の支援というのは過去にも事例があるそうです。

 

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ラベル氏は、こうした支援は、パンデミック後のウイスキー業界の再興と、マーケティング学科の卒業生の雇用促進に役立つとしています。

 

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ロウ&コ蒸留所

2019年の夏の終わりにオープンしたロウ&コ (Roe & Co Distillery) 蒸留所は、リバティーズ地区で操業する4番目の蒸留所となりました。

 

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ロウ&コ蒸留所は、ディアジオ社が親会社です。ご存じのようにディアジオ社は、アイルランドのビール会社であるギネスと、イギリスのグランド・メトロポリタン社との合併により1997年に生まれた会社です。ディアジオ社は、スミノフジョニー・ウォーカーベイリーズ、そしてもちろんギネスなどのブランドを所有しています。

 

合併に先立つ1986年、ギネス社はスコッチ・ウイスキーの代表的メーカーであったザ・ディスティラーズ社を買収しています。したがって、ディアジオ社は数多くのスコッチ・ウイスキーのブランドを所有しているのです。例をあげれば、ジョニー・ウォーカーのほか、ベルズ、ブラック&ホワイト、ブキャナンズ、オールド・パー、ヘイグ、ホワイト・ホース、タリスカーなどです。

 

巨大アルコール飲料企業であるディアジオは、バーボン (IWハーパー)、カナディアン・ウイスキー (クラウン・ロイヤル)などのブランドも傘下に収めていました。ところがアイリッシュウイスキーのブランドはまったく持っていなかったのです。そこで、アイリッシュウイスキーポートフォリオに加えたい、と思ったのがロウ&コ蒸留所を作った1つの理由ではないかと思います。

 

また、歴史のある有名ブランドが古臭いと感じる人が多くなっているようで、ビールでもクラフト・ビールの人気が高まっています。ギネスでも、ホップ・ハウス13、ギネス・ウェスト・インディーズ・ポーターなど、クラフト・ビール風の製品をプロデュースし、コマーシャルなどにもかなりの予算を使っています。同様に、ウイスキーに関しても、マイクロ・ディスティラリ―に投資することで、若々しくてチャレンジ精神旺盛なイメージを打ち出したかったというのもあるのでは、と私は思っています。

 

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ロウ&コ蒸留所は、ギネスビール工場/ビジター・センターのすぐそばにあります。また、ピアース・ライオンズ蒸留所も目と鼻の先です。蒸留所の建物は、もともとはトーマス・ストリート蒸留所の一部でした。1800年代後半の全盛期にはダブリン最大の生産量を誇った蒸留所だったのですが、残念ながら1920年代に財政難から操業をストップしてしまいました。

 

ギネスに譲渡されたこの建物は、ギネス工場用の発電所としてしばらく使用されました。その務めを終えたあと、しばらく廃屋になっていたのですが、ディアジオ2,500万ユーロを投資したことにより、蒸留所として生まれ変わったのです。

 

蒸留所ができてすぐの20199月に私はさっそく蒸留所見学ツアーに参加してきましたので、そのときの様子をご紹介したいと思います。

 

25ユーロでチケットを買い、ショップ兼バー/カフェみたいなスペースで時間が来るまで待ちます。

 

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平日ということもあってか、私以外の見学者は8人ほど。全員がアイルランド人でした。2階に上る階段のところでガイドさんの説明を聞きます。下の写真にあるように、階段の壁にはアイリッシュウイスキーの歴史が書いてあります。

 

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次は渡り廊下の上から、実際に稼働している蒸留過程を見ることができます。アイリッシュ・ウスキーは伝統的に3回蒸留すると言われますから、ここにも3つ蒸留器がありますね。

 

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次は、Room 106 という部屋に入ります。

 

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106というのは、最終的に商品を完成させるまでに試したサンプル・ブレンドの数だそうです。ここでは、実際のウイスキーを味見しながら、原料や作り方などについて説明を受けます。

 

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次の部屋は Flavours Room という名前なのですが、ここがこの蒸留所のツアーのユニークなところになります。好みに合わせて自分でカクテルを作りましょう、という趣向なのです。

 

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甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の中から1つを選び、ロウ&コ・ウイスキーをベースにして作るのです。私はカクテルを作るのも初めてだし、メジャー・カップを触るのすら初めてじゃないかなと思います。これはおもしろかったです。

 

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最後はバーでのんびりワン・ドリンク。せっかくなので私はカクテルをいただきました。

 

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この見学ツアーの特徴は、カクテルに重点を置いていることや、バー/ショップの内装からもわかるように、若い男女をターゲットとしていることです。ウイスキーと言うと、渋めの男性がロック・水割り・ストレートで飲んでいるという印象が強いと思いますが、そういうイメージとは別の路線を目指しますよ、ということなのでしょう。ボトルのデザインにもその意思は表れているように思います。

 

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ロウ (Roeという名前は、トーマス・ストリート蒸留所を経営していたロウ一族にちなむものです。1800年代後半に、世界最大のビール醸造所であったギネスと、世界最大のウイスキー蒸留所を所有していたロウ一族が、21世紀になって合体したということになります。

 

私は見学ツアーに1人で参加したのですが、カクテルを作るときにわいわいできるので、お友達と出かけた方が楽しいと思います。いまウェブページを調べてみたら、時間帯によっては、17ユーロで入場できるようです。

 

マスクした方がいいの?

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新型コロナウイルスが流行する前は、アイルランドでマスクをしている人はほとんどいませんでした。現在でも、マスクをしている人は圧倒的に少ないです。1~2割くらいでしょうか。

 

しかし、マスクを普段から着用する東アジアでコロナウイルスの被害が少ないことから、マスクは実際に予防に役立つのかが大きな話題となっています。以前ご紹介した台湾の医師へのインタビューでも、記者がかなり執拗にマスクについて質問していました。

www.irishtimes.com

tarafuku10.hatenablog.com

 

どうも近日中に、買い物や移動の際にマスクを着用することが公式に推奨されるようになりそうなんですね。そこで、アイリッシュタイムズにもマスクに関する記事が出ていました。

 

www.irishtimes.com

 

マスク “スンナ” 派 (否定派) とマスク “シーヤ” 派 (肯定派) の闘いは、現在はシーヤ派に軍配が上がりそうな勢いです (ムスリムの2大勢力に喩えたスンナ派とシーヤ派という言い方が面白かったので、ここでも採用させていただきます)。

 

もともと、WHO も含めたスンナ派は、マスクの着脱を不適切に行うことでかえってウイルスが広がる、そしてマスクで安心するため手洗いなどの他の予防措置が疎かになる、という理由で、マスクの効用を否定していました。

 

しかし、西洋のスンナ派からまず米国疾病対策センター(CDC)がシーヤ派に転向します。これは、このブログでも紹介した「しゃべるときにツバが飛ぶよ」という論文が発表されたからです。現在では50を超える国がマスクの着用を義務化しているそうです。

 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2007800

tarafuku10.hatenablog.com

 

その後も、科学的なエビデンスとしては、シーヤ派に有利な研究結果が出てきているそうです。先週、UKの主要な科学者/疫学者が発表した分析では、物理的に距離を取ることが難しい状況では、無症状感染者や感染初期の患者が他の人にウイルスを移すのを防ぐ役割がある、とされました。彼らの結論は明確です。「お手製の布マスクであっても、正しく使用すれば、ウイルスの伝染を減らす効果がある」

 

また、医療用のN95マスクほどではありませんが、非医療用マスク、防塵マスク、布マスクでも、かなりの効果があることが、さまざまな調査からわかっています。手作りマスクでも十分役に立つとのこと。

 

アイルランドには、国民公衆衛生緊急チーム (NPHET) という保健省に属する専門家チームがあります。このチームも当初はWHOと同様にスンナ派だったのですが、最近の研究結果に基づいて態度を軟化させつつあるようです。その結果として、まもなくマスク着用推奨がアナウンスされることになるようです (義務ではありません)。

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アイルランド大学コーク校のジェリー・キリーン教授 (疾病管理) の意見としては、マスクの着用を義務化すべきだ、特に警察官を含むエッセンシャル・ワーカーが感染を広める可能性もあるので、彼らにはぜひマスクをチャ区報してもらいたい、とのことです。

 

この記事の結論としては、手洗いやソーシャル・ディスタンシングほどの効果はないが、コロナウイルス征伐に重要な役割を果たすということで、マスクの着用を推奨しています。このパンデミックが始まってから2か月ほどで、市民はさまざまな社会的変化を円滑に受容してきた。マスク着用もその一環としてスムーズに受け入れることができるのではないか、と記事は楽観的かつ勇気づけるようなトーンで締めくくられています。

 

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ダブリン・リバティーズ蒸留所

今回は、リバティーズ地区に3番目の蒸留所としてオープンしたダブリン・リバティーズ蒸留所についてご紹介します。

 

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ダブリン・リバティーズ蒸留所は、クイントエッセンシャル・ブランズ (Quintessential Brands) 社がオーナーです。ロンドンに本拠を置く同社は、主に蒸留酒の製造と販売を業務としています。投資銀行に勤めていたウォレン・スコット氏とカンパリの社長を務めたエンゾ・ビゾーネ氏により2011年に設立されました。

 

同社は、まずリーシュ県のアビーリーシュにあるファースト・アイルランド (First Ireland) 社を買収してアイルランドに進出します。オマーラズ (O’Mara’s) やフィーニーズ (Feeney’s) というブランドのクリーム・リキュールを製造しています。

 

その後、同社は2015年に新進のウイスキー会社であったダブリン・ウイスキー・カンパニー (Dublin Whiskey Company) を買収。リバティーズ地区に蒸留所とビジター・センターを建設することを発表しました。マスター・ディスティラー (主任蒸留技師) として、ブッシュミルズ蒸留所で17年の経験を持つダリル・マクナリー氏を迎えています。

 

2019年の2月の末頃ですが、カフェでお昼ごはんを食べようと思って久しぶりにティーリング蒸留所に行きました。それで、ダブリン・リバティーズ蒸留所がそろそろこのあたりにオープンするという話を聞いていたので、あたりを散歩してみました。

 

そうしますと、ティーリング蒸留所の裏の通りに新しい蒸留所が見つけました。ティーリング蒸留所の裏口とダブリン・リバティーズ蒸留所の入り口の距離は50メートルもないくらいの位置です。

 

オープンしているようでしたので中に入ります。ショップでミニボトルを3本ほど購入。POSコードのスキャンの仕方とか、50ユーロ札の偽札発見ペンの使い方とか、まだ慣れてない感じです(アイルランドでは50ユーロ札を使うと、レジの人がペンを走らせて偽札かどうかをチェックすることがよくあります。たぶん透かしが良く見えるようになるペンだと思います)。

 

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お店の人に、いつオープンしたのか聞いてみると、実は正式オープンは翌日とのこと。今日はスタッフのトレーニングも兼ねて、仮オープンの状態なのだそうです。

 

見学ツアーについても聞いてみたところ、実は3時からツアーをやるのだといいます。時計を見ると2時50分。ツアーもトレーニングを兼ねているので、今日は参加料はいらないとのこと。もちろん参加させてもらうことにします。

 

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今日のツアー参加者は12人。近所に住んでいるアイルランド人5人、スウェーデン人の熟年カップル3組、そして私です。みんな、たまたま迷い込んできた人です。


 ガイドさんは、若いスペイン人女性のミリアムさん。語り口も初々しい感じ。

 

ツアーは「ウォーター・ルーム」と呼ばれる部屋から始まります。ここでウェルカム・ドリンクとしてハチミツ入りウィスキー・リキュールをいただきます。モニターも用意されていたので、本来ならビデオ上映を行う計画があるのかもしれませんが、今日はガイドさんのお話。アイリッシュ・ウィスキーの簡単な歴史とか、ここリバティーズ地区の歴史とかですね。

 

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いよいよ製造設備の見学に入ります。残念ながら撮影禁止でしたので写真はありません。

 

ここの設備は独立系の蒸留所としてはかなり大きいです。仕込みや発酵のタンクは3階建てビルの高さほどあります。ポットスティル(蒸留器)は3つあって、これもしっかりしたサイズです。

 

稼働したばかりということもあってか、匂いや熱などの現場感はまだありせんでしたが、樽をうまい具合に配置したりして、見学者向けに「見せる」演出も工夫していました。

 

さて、いよいよバーでの試飲です。

 

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ここの蒸留所のウィスキー・ブランドは2種類あって、1つが「ダブリナー」、もう1つが「リバティーズ」です。きょう試飲するのはダブリナーの3年ものと、リバティーズの5年ものです。

 

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私の個人的な好みでは、リバティーズの5年ものがおいしかったです。スパイシーで複雑な深みのある味わいです。

 

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(上の写真はすべてミニボトルです)

 

Webサイトでお値段を調べてみますと、700ml ボトルでダブリナー3年ものが28ユーロ、リバティーズ5年ものが45ユーロ、ウイスキー・リキュール(赤ラベル)が22ユーロでした。

 

あと、デッド・ラビット (Dead Rabbit) というブランドのウイスキーもショップで売っていました。ニューヨークにデッド・ラビットという有名なアイリッシュ・パブがあるのですね。そこのパブとの提携で作っている製品ではないかと思います。

 

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(ミニボトルです)

 

しばらくしたら、もう一度行ってみようと思っていたのですが、残念ながら現在は新型コロナウイルスの影響で休業中です。ロックダウンが終わったらまた訪ねてみたいと思います。写真撮影もOKになるような気がするので。見学ツアーは16ユーロと32ユーロのコースがあるようです。

 

また、カフェも併設されています。

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ダブリン・リバティーズ蒸留所Webサイト 

 

参考資料

www.irishtimes.com

www.irishtimes.com

失くしたクレジットカードが返ってきた話

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私は普段は基本的に現金派でして、クレジットカードを使うのはオンラインで買い物するときか、大きな買い物をするときだけでした。

 

しかし、新型コロナ騒動が始まって以降、お店ではコンタクトレス・カードの使用が推奨または必須となっており、私もカードを積極的に使用し始めたわけです。

 

ところが、慣れないことをするものではありません。私はカードを3枚持っていたのですが(デビットカードが2枚とクレジットカードが1枚)、そのうち2枚を相次いで失くしてしまったのです。

 

カードを使用した後、すぐに財布に戻さずに、ポケットの中に入れたり、スマホと一緒に手に持って歩いたりしていて、失くしたか、どこかに置き忘れたかしたわけです。

 

本来ならすぐに金融機関に連絡してカードを止めるべきだったんでしょうが、家の中で失くしたような気もして、探せば出てくるかなあ、などと思ってしばらくそのままにしていました。もちろん、オンラインで明細書はチェックして、不正使用がないことは確認していましたが。

 

ところが今日、朝コーヒーを買ってきてアパートメント・ブロックに入ってくるときに、上の階の住人とすれ違いました。そしたら彼が、「あなた日本人」と訊いてくるので、「そうだよ」と答えたところ、10日ほど前に日本人の名義のクレジットカードを拾ったとのこと。郵便ボックスの上に置かれていたとのことです。

 

私の住んでいるアパートメント・ブロックはそんなに大きくなくて、東洋人はたぶん私しか住んでいません。それで声をかけてくれたのでしょう。

 

名前を言って、カード上の名義を確認して返してもらいました。ほんとうにありがたい。カードから毎月引き落としで支払っているものもありますので、余計な手続きを省くことができました。

 

失くしたもう1枚の方もさっそく銀行に連絡してキャンセルしました。もしかしたら家の中にあるかなあ、などともやもやしていたので、これでいちおう一件落着です。とにかく、カードを使ったらすぐに財布にしまいましょう。肝に銘じます。

 

  

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ピアース・ライオンズ蒸留所

ダブリンのリバティーズ地区にティーリング蒸留所に次いで産声を上げたのが、ピアース・ライオンズ蒸留所 (Pearce Lyons Distillery) です。2017年秋にオープンしたこの蒸留所は、新しい会社とは思えないほど豊富な歴史とエピソードに彩られています。

 

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まず、設立者であるピアース・ライオンズ博士の実業家としてのサクセス・ストーリー。生化学博士の学位をアイルランドで取得した彼は、アメリカにわたり、家畜飼料のビジネスで大成功します。その後、ケンタッキーでビール醸造事業に乗り出し、こちらも軌道に乗せます。

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そして、かつてウィスキー醸造の中心地だったリバティーズで古い教会が売りに出されると聞き、一生に一度のチャンスだということで迷わず購入。建物を蒸留所として使用することにします。元々、ライオンズ一族はウィスキー産業とは無縁ではなく、博士のおじいちゃんやひいおじいちゃんは、ジェムソンの蒸留所でクーパー(樽職人)として働いていたそうです。

 

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教会の塔がガラス張りになっているのがおわかりでしょうか。これは、1948年の落雷で崩壊したあと放置されていたものを、博士が購入後に修復したものだそうです。塔がなかったころの写真がこちら。

 

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私はこの蒸留所の見学ツアーに2回参加したのですが、20192月に訪れた時の経験を以下にご紹介させていただきたいと思います。

 

チケットを買って、ツアーが始まるのを待っている間、ロビーのモニターで蒸留所の簡単な説明を読んだり、ウィスキーのクイズをしたりして時間をつぶすことができます。

 

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この日のツアーは、イギリスから来たご夫婦二組と私の5人。昨日、ラグビーシックス・ネイションズイングランドが番狂わせでアイルランドに勝ったので、私以外の4人はハッピー・ピープルです。ガイドは、アイルランド30代男性のティアナンさん。

 

こういうツアーでは必ず最初に「どこから来たの?」とお客さんに聞くのですが、そこでティアナンさんとイングランドの人はさっそくラグビー話に少し花を咲かせていました。

見学ツアーの最初のコーナーはビデオ鑑賞です。この蒸留所を設立したピアース・ライオンズ博士が私たちに語り掛けてくれます。

 

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10分ほどのビデオが終わると、次は屋外に出て、教会や墓地の歴史についてのお話です。

 

この教会の名前はセント・ジェームズ教会というのですが、その歴史は12世紀にまで遡ります。最初はカトリックの教会だったのですが、政治的なもろもろの紛争の末、16世紀にプロテスタントの教会となりました。その後、教区民の減少により1960年代に教会の役目を終えています。

 

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前回来たときは若い女性のガイドさんが、ボディースナッチャーの話をしてくれました。ボディースナッチャーとは死体泥棒です。新鮮な死体を夜中に盗み出して、解剖用の死体を必要としている医療関係者に売るのです。捕まれば重罪ですから、リスクの高い仕事でした。

 

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今回のティアナンさんは、この墓地に眠る高級娼婦の話をしてくれました。彼女は割と裕福な家の出なのですが、最初の結婚に失敗し、処女ではないカトリックの女性が生きていくにはほかにやりようがなかったとか。彼女のお客さんは、当時の政治家とか法律家とか実業家とか錚々たる面々だったのですが、彼女が晩年、回顧録を書くにあたって、実名を出してほしくなければお金を渡しなさいと、名士たちを脅したそうです。

 

プロテスタントの教会になったあとも、墓地を持つことが許されていなかったカトリック教徒は、この教会に埋葬されたのです。そんなに広くない墓地ですが、約800年の間に約10万人が埋葬されました。博士の親族も何人かここに眠っているそうです。

さて、いよいよ教会の建物に入ります。この中にウィスキーの製造工程、ティスティング用のバー、お土産ストアがすべて入っています。

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製造工程の説明を聞いたり、製造途中のアルコールや麦芽の匂いを嗅いだりなど、蒸留所見学ではおなじみの段取りはありますが、何と言ってもこの蒸留所の見どころは新しく作られたステンドグラスです。

 

4枚あるのですが、そのうち3枚がウィスキーの製造工程に関するもの。

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そして、もう1枚はカミーノ・デ・サンティアゴにまつわるものです。ご存じのように、これはサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路なわけですが、このスペインの街には聖ヤコブ (スペイン語サンティアゴ、英語でセント・ジェームズ)の遺骸があるとされています。巡礼に出かける人々は、セント・ジェームズにちなんだ教会に集まってから出発することが多かったので、アイルランドの巡礼者はダブリンのこの教会から旅立っていた可能性が高いのだそうです。

 

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ピアース・ライオンズ蒸留所の見学料は20ユーロ、25ユーロ、30ユーロの3つあって、その違いはテスティングできるウィスキーの数です。私は20ユーロでしたので3種類でしたが、イギリス人夫婦の1組は30ユーロを選択したらしく、ウィスキー4種類とジンを味わっていました。

 

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ウィスキーの種類は、緑ラベルのOriginal (ブレンド)赤ラベルDistillers Choice ()、金色ラベルのCoopers Select ()黒ラベル Founders Choice (シングルモルト)があります。アイルランドでの700ccボトルのお値段は42ユーロから70ユーロぐらい。アイルランドは酒税が高いので、ウィスキーは基本的に日本の方が安いです。(下の写真はミニボトルです)

 

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ティスティングのところでガイドさんと話が弾んだこともあって、所要時間は1時間15分ほどでした。

 

さて、実業家としてアメリカンドリームを成し遂げ、母国に戻ってきて蒸留所を開くという夢をかなえたピアース・ライオンズ博士でしたが、蒸留所オープンから半年後の2018年春、73歳でお亡くなりになりました。かなった夢を楽しむ時間が短かったのは残念だったかもしれませんが、他の人がうらやむような充実した人生だったのではないかと思います。

ピアース・ライオンズ蒸留所のWebサイトはこちら

アイリッシュ・ウイスキーのブログをはじめました。

以前からずっとやりたいと思っていたんですが、アイリッシュ・ウイスキーのブログを始めました。

 

tarafuku10.net

 

この「たらのコーヒー屋さん」のブログが Hatena ブログなので、ウイスキーのブログも Hatena を利用したかったんですけど、今回は FC2 さんにお世話になることにしました。

 

自分でドメイン名を取ってブログを書く、というのをやってみたかったんですけど、これは Hatena も FC2 も有料のブログ・サービスでないとできません。ところが、Hatena は海外で住所を登録していると、有料サービスに移行できないんですよ。Hatena と提携 (?) しているお名前.com も同様です。

 

FC2 はアメリカに本社を置いていることもあってか、この辺はスムーズにできたのでよかったです。こんなに簡単にできるのか、というぐらい簡単でした。

 

海外に住んでいても、オンラインで日本のいろいろなサービスを活用できるので、たとえば20年前とかに比べると段違いに便利なんですが、ときどきクレジットカードが使えないサービスがあったりします。ニコニコ動画チャンネルの有料購読ができなかったりとか (最近はできるようになっているかもしれません)。これは、サービス提供会社の問題ではなくて、日本の金融機関の問題らしいですけどね。

 

というわけで、アイルランドには新しい蒸留所が続々できていますし、私は蒸留所見学が好きなのでいろいろ回って記事にしたいと思っています。あと、ウイスキー関連の歴史や最新のニュースとかですね。

 

もし興味のある方がいらっしゃいましたら、そちらもお読みいただけるとうれしいです。

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