新型コロナウイルスが流行する前は、アイルランドでマスクをしている人はほとんどいませんでした。現在でも、マスクをしている人は圧倒的に少ないです。1~2割くらいでしょうか。
しかし、マスクを普段から着用する東アジアでコロナウイルスの被害が少ないことから、マスクは実際に予防に役立つのかが大きな話題となっています。以前ご紹介した台湾の医師へのインタビューでも、記者がかなり執拗にマスクについて質問していました。
どうも近日中に、買い物や移動の際にマスクを着用することが公式に推奨されるようになりそうなんですね。そこで、アイリッシュタイムズにもマスクに関する記事が出ていました。
マスク “スンナ” 派 (否定派) とマスク “シーヤ” 派 (肯定派) の闘いは、現在はシーヤ派に軍配が上がりそうな勢いです (ムスリムの2大勢力に喩えたスンナ派とシーヤ派という言い方が面白かったので、ここでも採用させていただきます)。
もともと、WHO も含めたスンナ派は、マスクの着脱を不適切に行うことでかえってウイルスが広がる、そしてマスクで安心するため手洗いなどの他の予防措置が疎かになる、という理由で、マスクの効用を否定していました。
しかし、西洋のスンナ派からまず米国疾病対策センター(CDC)がシーヤ派に転向します。これは、このブログでも紹介した「しゃべるときにツバが飛ぶよ」という論文が発表されたからです。現在では50を超える国がマスクの着用を義務化しているそうです。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2007800
その後も、科学的なエビデンスとしては、シーヤ派に有利な研究結果が出てきているそうです。先週、UKの主要な科学者/疫学者が発表した分析では、物理的に距離を取ることが難しい状況では、無症状感染者や感染初期の患者が他の人にウイルスを移すのを防ぐ役割がある、とされました。彼らの結論は明確です。「お手製の布マスクであっても、正しく使用すれば、ウイルスの伝染を減らす効果がある」
また、医療用のN95マスクほどではありませんが、非医療用マスク、防塵マスク、布マスクでも、かなりの効果があることが、さまざまな調査からわかっています。手作りマスクでも十分役に立つとのこと。
アイルランドには、国民公衆衛生緊急チーム (NPHET) という保健省に属する専門家チームがあります。このチームも当初はWHOと同様にスンナ派だったのですが、最近の研究結果に基づいて態度を軟化させつつあるようです。その結果として、まもなくマスク着用推奨がアナウンスされることになるようです (義務ではありません)。
アイルランド大学コーク校のジェリー・キリーン教授 (疾病管理) の意見としては、マスクの着用を義務化すべきだ、特に警察官を含むエッセンシャル・ワーカーが感染を広める可能性もあるので、彼らにはぜひマスクをチャ区報してもらいたい、とのことです。
この記事の結論としては、手洗いやソーシャル・ディスタンシングほどの効果はないが、コロナウイルス征伐に重要な役割を果たすということで、マスクの着用を推奨しています。このパンデミックが始まってから2か月ほどで、市民はさまざまな社会的変化を円滑に受容してきた。マスク着用もその一環としてスムーズに受け入れることができるのではないか、と記事は楽観的かつ勇気づけるようなトーンで締めくくられています。