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ダブリン・マラソンとW.B.イェイツ

アイルランドは文学の国として知られています。ノーベル文学賞の受賞者を4人も輩出していますし、2010年にはダブリンがユネスコ文学都市に選ばれています。

 

今年はW.B.イェイツがノーベル文学賞を受賞してから100周年なんですね。そこで毎年行われているダブリン・マラソンの完走者に贈られるメダルに、イェイツの肖像と彼の言葉が刻印されることになりました。

 

彼の言葉とは「ここには見知らぬ人などいない。これから友人になる人がいるだけだ」。ダブリン・マラソンはフレンドリーな雰囲気がウリだそうで、それにふさわしい警句でもあります。

 

 

ところが、この言葉はイェイツのものだと広く信じられているものの、確かにそうだという証拠はないらしいのです。

 

まあ有名な作家にはこういうのはつきものです。たとえば、ジョージ・オーウェルの言葉とされる「ジャーナリズムとは報じられたくない事を報じることだ。それ以外のものは広報にすぎない」ですが、これもオーウェルの発言だという証拠はどこにもないそうです。

 

ダブリン・マラソン組織委員会は、どうもメダルを作ったあとにイェイツの言葉だという証拠がないことに気づいたらしく、スライゴーにあるイェイツ・ソサエティに相談します。ソサエティのディレクターであるスーザン・オキーフさんも、この言葉がイェイツのものでないことはほぼ確実だと認めたのですが、この間違いに怒るどころかちょっと面白がってすらいるようで、「間違って引用されるのは偉大さのしるし」とまで言っています。「イェイツも微笑みながら(天国から)見下ろして、『その言葉、自分がいっときゃよかったな』と思っているかもしれません」だそうです。鷹揚ですね。

 

今回のエピソードは海外にも伝わり、イギリスのガーディアン紙やアメリカのNYタイムズの記事にもなりました。

 

アイルランドの作家が間違って引用されるのがニュースになるのは今回が初めてではありません。

 

2013年にアイルランド中央銀行がジェイムス・ジョイスをモチーフとした記念硬貨を発行したのですが、肖像画とともに描かれたユリシーズの一節が間違っていたんですね。余計な関係代名詞の that が入っていたそうです。そのときに私が書いたブログ記事がこちらです。

 

www.irishtimes.com

www.irishtimes.com

 

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