ハイネケンはアイルランドではコークに醸造所を持っています。ハイネケンやクアーズなどのラガー・ビールのほかに、マーフィーズとビーミッシュという2つの黒ビール (スタウト) のブランドも展開しています。そのハイネケンがなぜ同社で3番目の黒ビールとなるアイランズ・エッジ (Island’s Edge) を市場に投入するのか?
「黒ビールのカテゴリを広げ、若返らせ、お客様に新しいスタイルのスタウトを提供したいのです」とスタウト担当マーケティング・マネージャーのポーラ・コンロン氏は言います。「黒ビールの市場はこのところイノベーションもなく、停滞していました。一味異なる何かをお客様に提供し、以前はスタウトを飲むことなど考えてもいなかった人々にアピールしたいのです」。ブランドのイメージとしては、軽くてカラフルなビール。従来のスタウトの黒と白のイメージと一線を画すものにするそうです。
「人々はスタウトのどこが難しいと感じているのだろうか、と私たちは自問自答した」と醸造責任者のPJティアニー氏は言います。1杯目はいいけれども、2杯目までは飲めないとか、苦い後味が苦手だとか、最初から良さは分からない味だとか、お腹いっぱいに感じるとかいうフィードバックがあったそうです。
ハイネケンはケリー・フード社の協力を得て、商品のターゲットとなる18歳から35歳ぐらいまでの人が好むような新しい味を開発するために2年ほど費やしました。チョコレート・モルトなどスタウトに欠かせない原料ももちろん使われていますが、珍しい原料も2つ使用されています。紅茶とバジルです。
紅茶は、ホップに由来する苦みを取る効果があるそうです。紅茶の味がするというわけではありません。普通は一口飲んで20~30秒するとホップの苦みが口の中に広がります。しかし、紅茶を入れるとそれがなくなるのだそうです。理由はわかっていないそうです。
バジルはスタウトにフレッシュな味わいを与えます。かすかなミントの後味が出てきます。パイントを半分ぐらい飲んだところで、すっきりとした感触が得られます。
また、スタウトは重たいという人も多かったので、スムーズでクリーミーなビールにすることも心掛けたそうです。アルコール分や酸味は一般のスタウトと変わりません。
アイリッシュ・タイムズのジョン・ウイルソン記者は、先週ダブリンのあるパブで、アイランズ・エッジとギネスの飲み比べをしたそうです。ウイルソン記者によりますと、どちらのビールにもクラフト・ビールのスタウトのような強烈なパンチはない。アイランズ・エッジのヘッドはギネスよりもクリーミーのようだ。アイルランズ・エッジは確かに焙煎したコーヒー豆やチョコレートの味がする。ギネスとの違いがはっきりするのは後味。ドライだが、スタウトによくある苦さはない。その代わり、喉の渇きをいやすような、もっと飲みたくなるような、爽やかな味わいがある。ウイルソン記者によれば、従来のスタウト愛飲者の口には合わないかもしれないが (天気のいい日などには楽しめるかもしれないが)、そもそもこの商品はそうした人々をターゲットとしたものではない。
アイランズ・エッジは来月、ダブリンの300軒ほどのパブで飲めるようになります。数か月のうちには、アイルランド中のオフライセンスで入手可能になるようです。
オフライセンスで販売する缶の写真は見つからなかったので、デザインがまだできていないんでしょう。ハイネケンはサイダーのオーチャード・シーヴスを市場に投入したときも、大掛かりなマーケティングを仕掛けていましたから、今回もいろんな広告を打ってくるのかもしれません。
ハイネケンはマーフィーズを1983年に買収したあと、マーフィーズを世界的なブランドにしようと頑張ったんですけど、うまくいかなかったんですよね。1980年代後半から1990年代くらいでしょうか。マーフィーズはやはりコークのスタウトという印象が強いですので、ダブリンでの売り上げを伸ばすためにも新しいブランドを開発したという面があるのかもしれません。