たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

ギネスのトレイ

オークションで昔のホウロウ看板やポスターを買い始めた時に、やっぱりとっかかりとして興味をひかれたのはギネス・ビールのものです。

 

ウイスキーに興味が移る前はいろいろ買ったのですが、いや、なんでこれ買ったのかなー、とか、これにこの値段はないな、という失敗もしました。もちろんすごく気に入っているものもあります。

 

おいおいご紹介していきたいと思いますが、今日はまず小物ということで、ギネスのトレイを集めてみました。

 

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ギネスの広告というと、動物を戯画化したユーモラスなものが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。こちらのトレイもそうしたデザインの1つです。これは、ジョン・ギルロイというイギリス人アーチストの作品です。

 

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1898年生まれのギルロイは1925年に広告会社のSHベンソン社に入社します。1928年にベンソンがギネスの広告代理店としての契約を勝ち取ったので、ギルロイにこの仕事が回ってきたわけです。

 

現在でも、アイルランドのさまざまなパブで彼のデザインを見ることができます。

 

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次はこちら。これも画風からいってギルロイのデザインだと思います。

 

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ネイティブ・インディアンの男が何人もが乗ったボートを片手で持ち上げています。もう1つのギネスの有名なモチーフとして、「ギネスを飲むと力がでるよ」(Guinness for Strength) というのがありまが、このデザインもその1つ。今で言えば、レッドブルを飲むと羽根が生えるよ、みたいなものでしょうか。

 

テキストに「Him Strong!」とあって、「彼、強い」みたいな片言の英語になっています。いまだとポリコレ的に文句言う人がいそうだな、と思います。

 

次はこちら。これは、もう少し新しいもので、60~70年代のものではないかと思います。

 

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赤と黒と対比が印象的です。赤地にギネスのグラスをフィーチャーした図柄は、最近復活してパブのサインなどにも使用されていました。

 

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それからこちら。これも赤字にギネス・グラスのデザインですから、すぐ上のものと同じ時期のものかもしれません。個人的にはこれはすぐ上のトレイに比べるとインパクトに欠けるかな、という気がします。

 

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それからこちらのデザインですが、これはギネスにしては毛色の変わったデザインのように私には思えます。

 

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男女のモデルさんがギネスをおいしそうに飲むデザインなんですが、モデルさんが割と年配、しかも上品・裕福そうに見えます。そういった層にギネスを売り込もうという意図があったのかもしれません。構図やレタリングはやっぱりかっこういいですね。

 

ここまでご紹介したトレイは、すべて別々にイギリスからeBayで購入したものです。なので記録が残っていないのですが、郵送料を含めてそれぞれ50~60ユーロぐらいではなかったかと記憶しています。

 

そして、最後です。これは、何かの看板を買ったときにおまけで付いてきたもの。そんなに古いものではありません。

 

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このトレイの素材は金属ではなくてプラスチック。デザイン的にはあまりおもしろくありません。あと30年くらいすれば味が出てくるのかもしれません。ただ実用的には縁が高くてグラスが落ちにくいし、金属のトレイのようにデコボコになったりしないし、おそらく製作費も安価という長所があるのだと思います。

 

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FC2 有料ブログで AdSense に承認されました

別口でやっている FC2 有料ブログで AdSense に承認されたので、他の方のご参考になればということで、私の状況をメモしておきます。

 

AdSense に承認されたブログはこちらです。

 

tarafuku10.net

 

 

現地に住んでいることを強みとして、アイリッシュ・ウイスキーの歴史、蒸留所めぐり、新聞記事などを紹介するブログになっています。

 

AdSense に申請したのが、5月15日(金)の朝、承認通知が来たのが5月18日(月)の朝。所要期間は丸3日でした。

 

申請時点での記事数は6つ。その後、承認通知が来るまでに記事を2つ追加しました。いずれの記事も、文字数は2000文字を少し超えるくらいです。

 

記事の中には、この「たらのコーヒー屋さん」ブログに書いた内容に修正・加筆したものもあります。他のブログと被っていると承認されにくいという話でしたので、元になった「たらのコーヒー屋さん」ブログの記事には、検索エンジンにひっかからないようにするコードを追加しました。

 

はてなブログで特定の記事を検索結果に表示させない方法については、こちらのブログを参照させていただきました↓。

 

www.marorika.com

 

また、ブログ村に登録していると、ブログ村のサーバーに残っているテキストが検索に引っかかるという話も聞きましたので、「たらのコーヒー屋さん」のブログ村への登録もいったん外しました。

 

画像はない方が承認が下りやすいという話も聞いたのですが、著作権違反と思われる可能性のある写真を数枚外しましたが、自分で撮った写真はかなりの枚数使いました。Creative Commons ライセンスの元に使用が許可される写真も、次の例のようにライセンスを明記したうえで2枚ほど使用しました。

 

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だいたい私の状況は以上のようなところです。

 

私ははてな無料ブログで2つブログを書いていて、昨年の8月ごろから何度か AdSense に挑戦していたのですが、まったくうまく行きませんでした。無料ブログではほぼ無理という話も聞いていましたが、はてな無料ブログだとAdSense に認識されないという話があって、私の申請もその理由で却下されていました。とりあえず FC2 のブログで承認されてほっとしました。以上、FC2有料ブログで AdSense の申請をしようとされている方のご参考になればと思います。

 

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新型コロナウイルスがアイリッシュ・ウイスキー業界に与える影響

2020年515日付のアイリッシュ・タイムズ紙に、「アイリッシュ・ウイスキーの売り上げに悪影響。400人の職が失われる可能性」という記事が掲載されていたので、かいつまんでご紹介します。

 

アイリッシュウイスキー2019年の年間売り上げは13700万本を記録。これは2010年と比較して2倍の数字だそうです。しかし、アイリッシュウイスキー協会(IWA)の最高責任者であるウィリアム・ラベル氏によると、ロックダウンにより世界中でパブや空港のデューティー・フリーが閉鎖されているため、成長が脅かされているとのこと。

 

「発注はキャンセルされ、在庫を引き取ってくれという要請もある」

 

蒸留所のビジター・センターで働く409人のうち、その多くは政府のCovid-19賃金支援を受けているとのこと。

 

「別の部署に回って仕事を続けている人もいれば、賃金支援を受けている人もいる。状況は毎日のように変わっており、IWAのメンバー企業は雇用を確保することに懸命に取り組んでいる」

 

ウイスキーの生産部門で働く約1000人のほとんどは現在も仕事を続けているとのこと。

 

ジェムソンを生産するアイリッシュ・ディスティラーズ・グループ(IDG)タラモア・デューのブランドを持つウィリアム・グラント社は、自社の製造ラインを活用してハンド・サニタイザー用のアルコール・ジェルを生産しています。

 

さらには、新進の小規模蒸留所もサニタイザーの生産に協力しています。たとえば、コナハト・ウイスキー社は、80,000本の250mlボトルを医療機関に提供し、個人消費者にも販売しています。

 

Ibec (アイルランドの経営者の団体、日本で言えば経団連みたいなところ傘下にあるアルコール飲料の業界団体のドリンクス・アイルランド (Drinks Ireland) は、ウイスキーの売り上げを推進するため、大学のマーケティング学科の卒業生をウイスキー業界で雇用するにあたって、その賃金の70%を支援してくれるようにアイルランド政府および北アイルランド自治政府に要請するとしています。70%の支援というのは過去にも事例があるそうです。

 

ラベル氏は、こうした支援は、パンデミック後のウイスキー業界の再興と、マーケティング学科の卒業生の雇用促進に役立つとしています。

 

***** ***** *****

 

さて、少し古い記事(3/23に公開された記事)になりますが、新型コロナウイルスアイリッシュウイスキー業界に関する話題をもう1つご紹介します。こちらは、fft というアイルランドのホスピタリティ産業の業界紙に掲載されていた記事です。アイルランド蒸留酒産業が、品不足が問題となっているハンド・サニタイザーの製造に取り組むという記事です。

 

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ディングル蒸留所が製造したウイスキー(左)とハンド・サニタイザー

 

この記事によれば、アイルランドのさまざまな蒸留所がハンド・サニタイザーの生産により、Covid-19との戦いに協力しています。(以下、記事の要約ですので、「現在」などの記述は3月中旬時点を指すことにご注意ください)

 

-  ディアジオ (ギネス/ロウ&コ・ウイスキーのオーナーは、世界で200万リットルを超える中性スピリッツ(アイルランドでは50万リットル)を製造し、ヘルスケア企業に提供します。

 

-  ゴールウェーのマイクロ・ディスティラリーであるMicil蒸留所は、ポティー(アイルランド特産のポテトを原料とする蒸留酒)の生産を一時停止し、ハンド・サニタイザーを生産します。ここで作られた製品は、主にゴールウェー近辺の慈善団体や医療機関に提供されます。

 

-  ケリー県のディングル蒸留所は、初回の計画として35,000本のミニ・ボトル入りサニタイザーを製造し、地元の企業/商店/家庭医に提供します。

 

-  メイヨー県のコナハト・ウイスキー社は、3月末までに6,000本の250mlボトルを製造。需要が高まれば生産量を増やすとのこと。

 

-  ラウズ県のリストーク蒸留所は、今回アイルランドで真っ先にハンド・サニタイザーの生産に取り組んだ蒸留所です。最初の2000(250ml)は、友人、家族、地元企業に提供して24時間経たないうちになくなりました。現在(3月時点)2000リットルのアルコール・ジェルを生産中で、蒸留所で販売するほか、慈善団体、家庭医、警察署には寄付するとのこと。

 

-  コーク県のクロナキルティ蒸留所では、製造準備が整い次第、5000ボトルの生産を開始するとのこと。地元の慈善団体に寄付するほか、主に地元のコミュニティに販売する予定。

 

-  アイリッシュ・ディスティラーズ社 (ジェムソンなどのオーナーは、地元の化学会社と協力して大量のアルコール・ジェルを生産し、HSE (アイルランド政府のヘルスケア統括部門に納める予定。

 

-  リートリム県のシェッド蒸留所では、まもなく消毒用アルコールの製造を開始する予定とのこと。生産したアルコールは、ハンド・サニタイザーを生産する化学会社に納品されます。

 

-  ダウン県ドナハディのコープランド蒸留所では、今後数週間で30,000リットル以上のアルコールの生産を予定しています。最初の500リットルは地元の慈善団体等に寄付。その後は、寄付と共に、卸/小売りへの販売も計画しています。

 

上記以外にも、ダウン県のモア (Mór)アイリッシュ・ジン社やファーマナ県エニスキレンのボートヤード蒸留所が、消毒用アルコールを製造しているほか、体制が整い次第、製造を開始する予定の蒸留所がいくつもあります。

 

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これ以外にも、ギネス・アイルランドは、Covid-19の影響を受けたアイルランドのバー従業員やコミュニティのために、150万ユーロの支援金を提供することを約束しています。

 

ドリンクス・アイルランドのディレクターであるパトリシア・カラン氏は、「先行きが不透明なこの時期に、Covid-19対策のために飲料業界が役割を果たしているのは素晴らしいこと。この戦いでは、政府、医療/公共機関、産業、社会が協力する必要がある。業界として支援できることを実行していきたい」と述べています。

自粛警察カレン

スペクテーター誌の米国版に「カレンがあなたのコミュニティを破壊するのを許すな」(Don’t Let Karen Kill Your Community)という記事が掲載されていて、そんなヤバいことするカレンって誰だろうと思って調べてみたら、特定のカレンさんを指す言葉ではなかったのでした

 

spectator.us

 

Wikipedia の英語版にも「Karen (Slang)」として項目が立っています。

 

en.wikipedia.org

 

それによれば、ある特徴を持つ人を揶揄するときに、その人を指し示すために本名に関係なく使う名前だそうです。その特徴とは「白人、中年、アメリカ人女性で、思い通りにいかないと攻撃的な態度を取る人。特に、すぐに『店長を呼んで頂戴』などと言い出す人。ボブ・カットの人が多い」

 

本名がカレンの人はお気の毒ですが、唐突にボブ・カットがやり玉に挙げられているのが面白かったです。

 

元々の由来は、アメリカの2チャンネルみたいな掲示板である Reddit で、”Fuck_You_Karen” というハンドル名のユーザーが、離婚した元妻のKarenに対しての罵詈雑言を投稿していた。2人の子供と家を取られたとかなんとか。本人は真面目に怒っていたのですが、読んでる分にはとても面白かったらしくて、他のユーザーによるミームなども数多く生まれたとか。

 

で、最近は、新型コロナの自粛要請や規制を守っていない人を見つけては注意・通報するような人をカレンと総称しているそうです。

 

不愉快な特性を持つ人々を十把一絡げにして馬鹿にするための代名詞として使われる人名というのはほかにもいろいろあるみたいで、「Karen (slang)」のWikipedia ページの関連項目に記載されています。

 

たとえば、ベッキー(Becky)。人種的問題や社会的問題に関心がなく、スターバックスやアグ・ブーツを好む白人の若い女性。

 

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チャド(Chad)。都市に住む若い男性。裕福。女性とのつきあいも活発なアルファ・メイル。日本語でいう「リア充」に近い感覚の言葉かと思う。これの女性版がトリクシー (Trixie)、またはステイシー(Stacey)。

 

カイル(Kyle)。ゲームばかりやっていて、いつも怒っている白人のティーンエージャーの男の子。モンスター・エナジー・ドリンクを飲んでいる。など。

 

※ ※ ※※※※※※

 

話は変わりますが、昨日もいろいろ散歩していたところ、天気が良かったこともあって、住宅地や集合住宅の中庭にPAを設置して、いろいろイベントをやっていました。

 

ダブリン1区のLinen Street のあたりでは、おばあさんが椅子に座って、キーボード演奏をバックに歌を歌っていました。たぶん、彼女の誕生日だったのでしょう。近所の人が50人くらい集まっていて、けっこう「密」な感じでしたけど。

 

それから、ビンゴをやっているところもありました。Bridgefoot Streetのあたり。アイルランドの公営の集合住宅は、中庭があって、それを囲むように建物が立っているところが多いんですね。中庭にPAを置いて、ビンゴ・マスターがマイクで番号を読み上げるわけです。プレイヤーは自宅前の通路に出て自分のカードに書かれた数字をチェックします。バルコニー・ビンゴと呼ばれます。

 

ロックダウンが始まってから、ソーシャル・ディスタンシングを守りながら楽しめるエンターテイメントとして、バルコニー・ビンゴは人気のようです。実際の様子については、こちらの動画で見ることができます。

 

www.irishtimes.com

 

また、リバティーズのスイフツ・ストリートのあたりでは、大きな音でディスコみたいに音楽を流していました。住人は机と椅子を出して、たぶん家族ごとにということなんでしょうけど、集まって飲んだり食べたりしていました。

 

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キナハンズ・ウイスキー

私はときどきオークションでウイスキー関係の昔の広告やパブミラーを買ったりします。こちらは、5年ほど前にあるオークションで買った額縁入りのウイスキーのポスターです。

 

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思いのほか安く競り落とせて、ハンマー・プライスが20ユーロだったと記憶しています。これに手数料が付くので、支払ったのは25ユーロくらい。文字しか書いていない地味な広告だったので、欲しいと思う人はあまりいなかったのでしょう。

 

いつ頃のポスターかということですけど、裏に新聞紙が貼ってあって、そこに「アーマー大司教ダルトン枢機卿」の文字が見えます。ダルトンがアーマーの枢機卿だったのは1946年から1963年までなので、おそらくその時期のものだと思われます。

 

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ジェムソンの12年物のウイスキーのポスターですけど、下部に小さめの文字でバゴッツ、ハットン & キナハン (Bagots, Hutton & Kinahan) と書いてあります。BH&K はいわゆるボンダー (Bonder) またはボトラーですね。ボンダーというのは、自前で保税倉庫を持っていて、蒸留所から買ったウイスキーを樽につめて熟成させ、その後、瓶に詰めて消費者に販売するのです。保税倉庫というのは、その中に保管している間は酒税の支払いを猶予されていて、そこから出す時に初めて酒税を払えばよいという許可を得た倉庫のことです。今は蒸留所が自社で瓶詰めしますけど、昔は、樽で各地のボンダー/ボトラーウイスキーを卸していたんですね。

 

さて、今回はこの Bagots, Hutton & Kinahan (以下BH&Kと書きます)にいう会社について調べてみたことを書きたいと思います。

 

会社の登記情報を参照できるWebサイトをあたってみると、BH&Kが設立されたのは1927年。会社登記事務所に最後に書類を提出したのは1981年だということがわかります。

 

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つまり、1981年前後には会社としての存在はなくなっていたはずなのですが、最近になってキナハンズ (Kinahans) というウイスキーが復活したのです。

 

会社の Web サイト の「歴史」ページによれば、キナハンズのブランドは1779年にダブリンのトリニティ・ストリートで生まれました。キナハンズ・ウイスキーはかなり人気があったようで、1819年にはダブリンの中心部に4階建てのビルを構えるようになり、1845年には英国王室御用達となります。

 

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1862年には、アメリカの伝説のバーテンダーであるジェリー・トーマスが、その著書の中でキナハンズ・ウイスキーを取り上げます。また、キナハンズの人気が高いことから、キナハンズのボトルに他社の劣等なウイスキーを入れて販売する不届き者が続出。これを差し止めるためにキナハンズは裁判に訴え、1863年に勝訴します。

 

ところが、20世紀にはいって潮目が変わってしまいます。アイリッシュウイスキー業界全体が退潮する中、一族の中で経営に大きな役割を果たしていたジョージ・キナハンが逝去。売り上げも低迷します。

 

会社は1912年にバゴッツ & ハットンに吸収され、BH&Kが生まれるわけです。バゴッツ & ハットンも長い歴史のあるワイン/蒸留酒販売業者だったようです。

 

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BH&Kは米国で禁酒法が始まる1920年にキナハンズ・ウイスキーの販売を終了。その後は、冒頭の広告にあるようにジェムソンを販売したり、バゴッツ (Bagots) というブランドでウイスキーを販売していました。

 

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そして、キナハンズ・ウイスキーが、100年近い眠りから目覚めて復活したのは2014年のことでした。

 

さて、ここで私が疑問に思うのは、現在の経営者はキナハンズの創業家と関係があるのか、ということです。

 

現在のキナハンズ・ウイスキーを販売する会社について、会社登記情報を調べてみると、経営者はルパート・クレバリーというイギリス人のパブ経営者のようです。この人の名前で検索すると、彼が登場する新聞記事がいくつも出てくるので、その業界ではかなり有名な人なのではないかと思います。

 

ここからは私の推測になりますが、クレバリーさんはイギリス人だということからしても、キナハン一族とは関係がなく、キナハンズのブランドの権利を購入してウイスキー事業に参入したのではないかと思うのです。パブを経営しているわけですから、一定の販路は確保できているわけですし。

 

この会社は自社で蒸留所を構えている様子はないので、アイルランドのどこかの蒸留所からウイスキーを購入し、ブレンドして、自社ブランドで販売しているのでしょう。もちろん、それが悪いわけではありません。そういう会社はいくつもあるし、味が良ければ誰も文句はいわないわけです。昔のキナハンズも元々はボンダーだったわけですしね。

 

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確かティーリング・ウイスキーのジョン・ティーリングだったと思いますが、良いウイスキーを作ることと良いブランドを作ることは別、みたいなことを言っていました。味がいいだけではダメ。ブランド力も必要というわけですね。良いブランドをゼロから作り上げるには時間がかかるので、過去の有名ブランドの権利を買うというのは、これまでもいくつか例がありました。

 

たとえば、ティーリング自身もクーリー蒸留所を経営していたときにワット蒸留所のフラッグシップ・ブランドだったタイコネル (Tyconnell) を蘇らせました(このブランドを現在所有するのは、クーリー蒸留所を買収したサントリー・ビーム社です)。バークス (Burkes) という古いブランドも復活しました。

 

さて、一方のバゴッツ・ハットンはどうなったのでしょうか?

 

実はリフィー川沿いにバゴッツ・ハットンというワイン・バー/レストランが2012年頃にオープンし、2018年頃まで営業していました。今年の2月ぐらいまで残ってたバゴッツ・ハットンのツイッター・アカウントのホームページには、「1829年以来、優れたワイン、紅茶、コーヒーをお届けしています」と書かれていました。

 

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BH&Kのバゴッツ・ハットンの流れを汲むことは明らかですが、このお店の詳細も不明なのです。バゴッツ・ハットンの創業家の人がやっているのか、それとも誰か (クレバリー氏の可能性もありますが権利を購入して経営しているのか。

 

お店は閉じましたが、まだ外装が残っていたので写真を撮ってきました。残念ながら、私は一度も入ったことはありません。

 

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1枚のポスターを巡っていろいろ調べてみると面白かったのでブログ記事にしてみました。他にもオークションで買ったウイスキーの広告やパブミラーがあるので、それについてまた記事を書いてみたいと思います。

 

ロックダウン解除の第一段階が月曜から始まります

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金曜夜にレオ・バラッカー首相のスピーチがあり、5月18日(月)に予定どおりロックダウン解除に向けての第一段階に移行することが発表されました。

 

www.irishtimes.com

 

たとえば、以下のような活動が許可されるようになります。

  • 自宅から5km以内で4人までの家族または友人と屋外で会うこと
  • 建設業や造園業など、屋外での仕事
  • ハードウェアの小売店の営業 (ホームウェアの店は入らない)

いずれも、ソーシャル・ディスタンシングの基準を守ることが条件です。

 

状況によっては予定どおり第二段階に進めない可能性があること、また逆戻りする可能性があることも注意書きとして添えられています。

 

そして、マスクです。アイルランド政府はフェイス・マスクではなくフェイス・カバーという言い方をしています。マスクが医療関係者に優先的に回るようにという配慮ですね。上にリンクを張ったアイリッシュ・タイムズの記事でも Mask という単語は1回もでてきません(Coverings という単語は9回出てきます)。

 

今回、政府は公共交通機関や込み合った屋内でフェイス・カバーを着用することを推奨しました。ただし、フェイス・カバーは魔法の楯ではない、ソーシャル・ディスタンシングや手洗いの方が重要と強調しています。

 

バラッカー首相は北アイルランドの首脳陣や英国のジョンソン首相にも電話連絡で状況を伝えました。グレート・ブリテン島からアイルランドに入ると14日間の隔離が要求されているのですが、これはまだ継続するとのこと。

 

それから、将来のある段階で増税が必要となる可能性にも言及したとか。いやーん。

 

バラッカー首相は、「今日のアナウンスメントは希望の光となるだろうが、祝福するのは早い。道のりは長く、紆余曲折もあるだろう」とスピーチしています。一国の首相たるもの、このくらいのポエムは照れずに言えないといけませんね。さすがです。

 

さて、パンデミックが収束した後、パンデミック前とまったく同じ生活が戻ってくるかと言うと、そうじゃないかもしれないということで、アイルランドでは「New Normal」などという言葉をよく聞くようになりました。日本では「新しい生活様式」と呼んでいるようですね。

 

先日、ツイッターを見ていたら、ポーランドに住むポーランド人のツイートが私のタイムラインに流れてきました。

 

 

ポーランドトヨタが挨拶のハンドシェイクをやめて日本風のお辞儀にするっていうので、冗談だろ、と思ってトヨタのディーラーに行ったら、レセプションの男がほんとうにお辞儀してきて真実と悟った」っていうツイートなんですが、いやあ、これはNew Normal感がすごい、と思いました。礼をする柔道家のイラストが味を出しています。

 

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アイリッシュ・ウイスキーの発展を促すための税制改革の提案

アイルランドは酒税が高いので、ウイスキーも高いです。先日、スーパーマーケットのテスコに行って調べてきたんですが、スタンダードの700ml入りだと、ジェムソンが25ユーロ、パワーが22ユーロ、ブッシュミルズ、パディー、タラモアデューが20ユーロでした。近所のお高めのスーパーだとジェムソンが30ユーロです。たぶん普通の酒屋だともちょっとします。アマゾンで調べてみると、ジェムソンは日本では2000円弱で買えますものね。

 

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以前も書きましたが、アイリッシュウイスキーはここ10年くらいで復興の槌音も高く、稼働中、建設中、承認待ちの蒸留所を合わせると35くらいあるそうです。輸出産業の柱の1つに成長しつつあると言っても過言ではありません。また、ウイスキー・ツーリズムと言って、蒸留所の見学に訪れる観光客も多いわけです。

 

アイリッシュウイスキー協会(IWA)の推定によると、2018年には約923,000人の観光客が蒸留所を訪問しています。この数は5年以内に数百万にまで上昇するのではないかと同協会は見ています。ウイスキーが目的の観光客は1人平均約60ユーロを使うので、アイリッシュウイスキー業界の売り上げに約5,500万ユーロほど貢献しています。これにプラスして、宿泊費や交通費がアイルランドに落ちるわけです。

 

しかし、酒税が高いため、蒸留所を見学に来たのに、お土産にウイスキーを買う気にならないわけですよ。自分の国に帰って買った方が安いわけですから。蒸留所でしか買えないスペシャル・エディションは別として。

 

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さて、私は『アイリッシュウイスキー・マガジン』という季刊誌を購読しているのですが、最新号にアイリッシュウイスキーの税制に関する3つの提言という記事が載っていたのでご紹介したいと思います。筆者は、アメリカ人のジョゼフ・V・ミカレフさんというワイン/蒸留酒評論家の方です。 

 

提言その1: 最初の10万リットルまでのウイスキーにかかる酒税を50%以上低くする

 

まず、アイルランドの酒税がどれだけ高いか、他国と比較してみましょう。アイルランドの酒税は純アルコール1リットルあたり34.58ユーロ、イギリスが33.57ユーロ、アメリカが約7.4ユーロ。日本は約1000円だと思います。

 

アイルランドの場合、酒税にもVAT(消費税に似た税) 23%かかります。イギリスの場合は酒税分にはかかりません。アメリカはVATはありませんが、小売価格に州が定める売上税が加算されます。アイルランドは高いです。

 

そこで、ミカレフさんは、蒸留所が産出する最初の10万リットルにかかる税金を下げてみてはどうか、と提言します(記事にははっきり書いてないのですが、年に10万リットルということだと思います)

 

これは、大規模な蒸留所にはたいしたメリットにはならないかもしれませんが、小さな蒸留所には大きな意味があります。事業を始めたばかりの蒸留所にとって、キャッシュフローの改善や財務の安定という点で、この税金優遇措置はありがたいはずです。

 

こうした税制改革には、EUの法律の改正が必要です。しかし、これには前例があるのです。ビールの醸造については、一定限度まで税の優遇が認められており、マイクロ・ブリュワリーはその恩恵を受けています。IWAアイルランド政府にロビー活動をして、法律の改正をEUに要求するようにプレッシャーをかけたのですが、残念ながらアイルランド政府は拒否したそうです。

 

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提言その2: 蒸留所のギフトショップに免税店と同じような税の優遇を認める

 

これは冒頭でも書きましたが、自分の国に帰って買う方が安いのであれば、わざわざギフトショップで買って、持って帰ろうとはしません。そこで、蒸留所に併設のギフトショップには免税店に匹敵する税制優遇措置を与えて、観光客の購買意欲を刺激してはどうか、という提言です。蒸留所にとっては、当然のことながら、ギフトショップで直売した方が、利益率は高くなるわけですから。

 

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提言その3:  樽で購入する消費者には、樽の購入時ではなく、熟成して瓶詰めにした時点で課税する

 

これはある程度お金を持っている方の趣味になりますが、蒸留して樽詰めした時点で樽ごとウイスキーを買う方がいるわけです。ある種の投資として購入する人もいます。新しい蒸留所にとって、これは財政的に非常に助かるわけです。3年とか熟成させなくても、すぐにお金が入ってくるわけですから。

 

酒税を樽の購入時ではなく、瓶詰めにして倉庫から出すときに支払うことにすれば、初期費用が小さくなります。したがって、より魅力的な商品になる、ということですね。

 

ミカレフさんの提言は以上です。

 

 

 

アイリッシュウイスキーのブームは始まったばかりだ」とミカレフさんは書いています。その成長はこれからも長く続くだろうが、アイルランド政府のサポートや税の優遇があれば、ウイスキー産業は大きなメリットを受けるだろう、とも。

 

政府の税収が大きく減らすことなく、アイルランドウイスキー産業の振興を図ろうというこれらの提言。具体的で実行可能なものばかりではないでしょうか。19世紀後半のアイリッシュウイスキーの栄華を取り戻すためにも、ぜひ真剣に検討してもらえたらいいなと思います。