たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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新型コロナウイルスがアイリッシュ・ウイスキー業界に与える影響

2020年515日付のアイリッシュ・タイムズ紙に、「アイリッシュ・ウイスキーの売り上げに悪影響。400人の職が失われる可能性」という記事が掲載されていたので、かいつまんでご紹介します。

 

アイリッシュウイスキー2019年の年間売り上げは13700万本を記録。これは2010年と比較して2倍の数字だそうです。しかし、アイリッシュウイスキー協会(IWA)の最高責任者であるウィリアム・ラベル氏によると、ロックダウンにより世界中でパブや空港のデューティー・フリーが閉鎖されているため、成長が脅かされているとのこと。

 

「発注はキャンセルされ、在庫を引き取ってくれという要請もある」

 

蒸留所のビジター・センターで働く409人のうち、その多くは政府のCovid-19賃金支援を受けているとのこと。

 

「別の部署に回って仕事を続けている人もいれば、賃金支援を受けている人もいる。状況は毎日のように変わっており、IWAのメンバー企業は雇用を確保することに懸命に取り組んでいる」

 

ウイスキーの生産部門で働く約1000人のほとんどは現在も仕事を続けているとのこと。

 

ジェムソンを生産するアイリッシュ・ディスティラーズ・グループ(IDG)タラモア・デューのブランドを持つウィリアム・グラント社は、自社の製造ラインを活用してハンド・サニタイザー用のアルコール・ジェルを生産しています。

 

さらには、新進の小規模蒸留所もサニタイザーの生産に協力しています。たとえば、コナハト・ウイスキー社は、80,000本の250mlボトルを医療機関に提供し、個人消費者にも販売しています。

 

Ibec (アイルランドの経営者の団体、日本で言えば経団連みたいなところ傘下にあるアルコール飲料の業界団体のドリンクス・アイルランド (Drinks Ireland) は、ウイスキーの売り上げを推進するため、大学のマーケティング学科の卒業生をウイスキー業界で雇用するにあたって、その賃金の70%を支援してくれるようにアイルランド政府および北アイルランド自治政府に要請するとしています。70%の支援というのは過去にも事例があるそうです。

 

ラベル氏は、こうした支援は、パンデミック後のウイスキー業界の再興と、マーケティング学科の卒業生の雇用促進に役立つとしています。

 

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さて、少し古い記事(3/23に公開された記事)になりますが、新型コロナウイルスアイリッシュウイスキー業界に関する話題をもう1つご紹介します。こちらは、fft というアイルランドのホスピタリティ産業の業界紙に掲載されていた記事です。アイルランド蒸留酒産業が、品不足が問題となっているハンド・サニタイザーの製造に取り組むという記事です。

 

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ディングル蒸留所が製造したウイスキー(左)とハンド・サニタイザー

 

この記事によれば、アイルランドのさまざまな蒸留所がハンド・サニタイザーの生産により、Covid-19との戦いに協力しています。(以下、記事の要約ですので、「現在」などの記述は3月中旬時点を指すことにご注意ください)

 

-  ディアジオ (ギネス/ロウ&コ・ウイスキーのオーナーは、世界で200万リットルを超える中性スピリッツ(アイルランドでは50万リットル)を製造し、ヘルスケア企業に提供します。

 

-  ゴールウェーのマイクロ・ディスティラリーであるMicil蒸留所は、ポティー(アイルランド特産のポテトを原料とする蒸留酒)の生産を一時停止し、ハンド・サニタイザーを生産します。ここで作られた製品は、主にゴールウェー近辺の慈善団体や医療機関に提供されます。

 

-  ケリー県のディングル蒸留所は、初回の計画として35,000本のミニ・ボトル入りサニタイザーを製造し、地元の企業/商店/家庭医に提供します。

 

-  メイヨー県のコナハト・ウイスキー社は、3月末までに6,000本の250mlボトルを製造。需要が高まれば生産量を増やすとのこと。

 

-  ラウズ県のリストーク蒸留所は、今回アイルランドで真っ先にハンド・サニタイザーの生産に取り組んだ蒸留所です。最初の2000(250ml)は、友人、家族、地元企業に提供して24時間経たないうちになくなりました。現在(3月時点)2000リットルのアルコール・ジェルを生産中で、蒸留所で販売するほか、慈善団体、家庭医、警察署には寄付するとのこと。

 

-  コーク県のクロナキルティ蒸留所では、製造準備が整い次第、5000ボトルの生産を開始するとのこと。地元の慈善団体に寄付するほか、主に地元のコミュニティに販売する予定。

 

-  アイリッシュ・ディスティラーズ社 (ジェムソンなどのオーナーは、地元の化学会社と協力して大量のアルコール・ジェルを生産し、HSE (アイルランド政府のヘルスケア統括部門に納める予定。

 

-  リートリム県のシェッド蒸留所では、まもなく消毒用アルコールの製造を開始する予定とのこと。生産したアルコールは、ハンド・サニタイザーを生産する化学会社に納品されます。

 

-  ダウン県ドナハディのコープランド蒸留所では、今後数週間で30,000リットル以上のアルコールの生産を予定しています。最初の500リットルは地元の慈善団体等に寄付。その後は、寄付と共に、卸/小売りへの販売も計画しています。

 

上記以外にも、ダウン県のモア (Mór)アイリッシュ・ジン社やファーマナ県エニスキレンのボートヤード蒸留所が、消毒用アルコールを製造しているほか、体制が整い次第、製造を開始する予定の蒸留所がいくつもあります。

 

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これ以外にも、ギネス・アイルランドは、Covid-19の影響を受けたアイルランドのバー従業員やコミュニティのために、150万ユーロの支援金を提供することを約束しています。

 

ドリンクス・アイルランドのディレクターであるパトリシア・カラン氏は、「先行きが不透明なこの時期に、Covid-19対策のために飲料業界が役割を果たしているのは素晴らしいこと。この戦いでは、政府、医療/公共機関、産業、社会が協力する必要がある。業界として支援できることを実行していきたい」と述べています。