たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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映画「West of Memphis」

West of Memphis というドキュメンタリー映画を見ました。

 

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ドキュメンタリー映画。1993 年にアーカンソー州ウェスト・メンフィスで 3 人の子供が殺害されるという事件が発生し、まもなく 3 人のティーンエイジャーが逮捕される。そのうちの 1 人 (軽い知的障害あり) の自白、証言者の嘘、杜撰な (または意図的に虚偽の) 鑑定に基づき、主犯とされた少年が死刑、後の 2 人も終身刑に処せられる。

 

犠牲者が裸にされ縛られ性器を千切られたりしていたことからセンセーショナルな興味が巻き起こり、悪魔教の儀式なのではないかなどともいわれ、主犯格の少年が過激なメタル系などの音楽のファンで、風体もそんな感じだったので捕まえられたらしい。

 

しかし、捜査があまりにも杜撰ということで冤罪が強く疑われ、聞いていた音楽のせいで犯人に仕立て上げられたということでミュージシャン達も支援の声を上げ、『ロード・オブ・ザ・リングス』監督のピーター・ジャクソンもサポートの輪に加わる (この映画自体もジャクソンと主犯格とされた少年がプロデューサーに名を連ねます)。

 

ジャクソンがかなり金銭的にも運動をサポートしたみたいで、全米の優秀な鑑定医を何人も雇って鑑定をやり直し (先の性器が千切られた件も、死後、動物 (たぶんカメ) にやられた可能性が高い)、新しい証拠 (犠牲者を縛った針金についていた髪の毛) も見つかり、2010 年に再審の決定がでる。

 

裁判が始まるかと思いきや、ここでアーカンソー州が司法取引を提案するわけです。即時釈放するかわりに罪を認めろと。裁判を続ければ無罪が証明される可能性が高いとはいえ、あと何年かかるかわからない。1 人は最後まで無罪を争うかどうか迷ったんですが、結局は罪を認めた上で釈放されました (3 人が全員認めないと釈放されなかった)。これが事件のあらまし。

 

これ見て、やっぱりアメリカすげーなーと思うのは、日本人だとやっぱり無実を求めると思うんですよね。ところが、まあもちろんいろいろ思うところはあるんでしょうけど、人がどう思おうと俺は俺だしみたいな割り切りというか、主犯格とされた元少年 (今は 30 半ば) も「私にとってはもう終わったこと」と心の整理をつけちゃうんですよね。

 

陪審で有罪の判断をした人も映画に出てきて「私はいまでも彼らが有罪だと思う」と泣きながら言ったり、嘘の証言をした (させられた) 人も「嘘をついて悪かった。申し訳ない」と言うし、アーカンソー州の担当者も出てきて「彼らは有罪を認めた。それで話は終わりです」みたいなことを言う。世間様みたいな実態のないものにはみんな興味なくて、「おれ」「私」の粒々が集まって社会ができてる。そんな感じ。お天道様を納得させるために取り繕うなんて努力はしないんですよね。

 

映画では、犠牲者の 1 人の義父 (継父) が真犯人であることを強く匂わせています。


West of Memphis (2012 年、ニュージーランド、アメリカ)
監督: Amy J. Berg
出演: The West Memphis Three