たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

今月見た映画 2012 年 10 月

 
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What Richard Did (2012 年、アイルランド)
10/18 at Lighthouse Cinema
監督: Lenny Abrahamson
出演: Jack Reynor, Roisin Murphy and Sam Keeley

 

アイルランド映画としては今年一番の話題作。

 

10 年ぐらい前、ブラックロック・カレッジっていう名門私立高校出身の大学生たちが女の子の取り合いで喧嘩になり、1 人が死んで何人かが捕まった事件がありました。経済的には何一つ不自由のない家庭の子弟が起こした殺人事件ということで、メディアなどでもセンセーショナルに扱われました。その事件に想を得たフィクション映画です。

 

監督のレニー・エイブラハムソンは、ダブリンのドラッグアディクト2 人を主人公にした「Adam and Paul」、軽い学習障害のある中年男を主人公にした「Garage」と、社会の端っこの方にいる人を描いた映画で高い評価を受けた人なんだけど、この映画では恵まれた社会階層の人々を描くことにしました。これは映画として成立させるのは難易度がちょっと高いですね。だって、そんな強者の苦悩なんてのには感情移入しにくいから。

 

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主人公のリチャードは、スポーツもできるし、勉強もできるし、ユーモアのセンスもあるし、誰もがこんな青年に自分の娘を嫁にやりたいと考えるような大学生。実際、女の子にももてます。

 

ある日、パーティーの後、女の子の取り合いで友人と喧嘩になり、仲間も加勢して、友人が倒れ込んだところをリチャードがとどめで頭に蹴りを一発。おそらくそれが致命傷となって友人は死亡してしまう。

 

仲間以外は見ていなかったので、警察は犯人がわからない。自首すべきなのか、仲間たちでこの秘密を守るべきなのか。リチャードは父親にも告白するのですが、父親も苦悩します。

 

映画は、主人公が「正直が一番」と悟って警察に自首するとか、逆に金のあるやつはやっぱり心が汚いなーみたいなカタルシスを観客に与えるために彼らを悪役にするとか、そういう安っぽい道徳観の押しつけにはなりません。道徳的判断をなるべく避けて、リチャードや父、仲間たちの心の動きを追っていきます。最後まで。だから、映画が終わったとき、観客は宙ぶらりんの気持ちのまま放りだされます。

 

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Room 237 (2012 年、アメリカ)
10/26 at Lighthouse Cinema
監督: Rodney Ascher
キューブリックの映画「シャイニング」について語るドキュメンタリー。何人かの熱心な愛好家が、この映画の隠された意味について議論します。白人によるインディアン虐殺の暗喩だとか、ナチスによるホロコーストを意味しているとかですね。映像は「シャイニング」のほか、キューブリックの他の映画の場面がふんだんに使われています。

 

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Beasts of the Southern Wild (2012 年、アメリカ)
10/27 at Lighthouse Cinema
監督: Benh Zeitlin
出演: Quvenzhané Wallis, Dwight Henry

 

ハッシュパピー役の女の子が熱演。6 歳らしいんだけどすごいな。ほかのキャストもほとんど地域に住んでる素人さんらしい。ファンタジーとリアルなドラマの間を行きつ戻りつしながらその境界線がぼやけていく。映画見たなー、という気分にさせてくれる映画。カンヌ映画祭カメラドール賞受賞。