たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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映画「ヒミズ」

先週ですが、園子温監督の「ヒミズ」が IFI で公開されたので観てきました。

 

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ネタばれしますよ。

 

終わりなき日常をどう生きるか、みたいなテーマで映画の製作に取り掛かったら、3・11の地震・津波が襲ってきた。この世が終わるんじゃないかというような大災害ですから、園監督が脚本を急遽書き換え、被災地のシーンを挿入したのは、話題性を狙ったとかではなくて、必然であったと思います。

 

でも、やっぱり時間が足りなかったのかなーとは思う。教室で先生が「君たちは世界にひとつだけの花なんだよ」とか (わざと臭くしたいのはわかるんだけど、それでももうちょっとなんかあっただろう)、スミダの借金を返しに行った夜野が「なんで他人の借金を代わりに返すんだ?」と聞かれて「(若いスミダは) 希望」だからだと答えたり (「未来」だったっけな、ちょっと忘れた)、ラストシーンの「がんばれ、スミダ」に被災地の映像がかぶさってくるところとか、さすがにストレートすぎて説教臭くなってしまった。

 

9・11をテーマにした「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」はかなりよかったんだけど、ああいう大きな衝撃を物語に昇華するには10年ぐらいかかるのかな。

 

原作者の古谷実さんの稲中が好きだったので、漫画の「ヒミズ」の方も読んでたんだけど、ラストシーンをどうするんだろうと思いながら見ていたら、映画のスミダは生き延びた。地震がなかったら、園監督は原作どおりにスミダを殺していただろうと思う。だから、この映画は、あの天災をテーマにした物語というよりも、あの天災によって私たちが体験した心の動きを記録した映画として見た方が合点がいくかもしれない。ただ、それは外国の人には伝わらないと思うけど。

 

この映画は、「あっち側にいっちゃいそうな男の子を女の子が必死に引き戻そうとする」系のラブストーリーでもあるんですけど、ラストシーン直前の 2 人で寝っ転がって話をするシーンは良かったです。そこまで延々、暴力と狂気と金切り声の連続だっただけに、茶沢の「想像してみて」が心に沁みます。主演の 2 人は熱演。

 

余談ですけど、おととい新海誠監督がライトハウスシネマに来て、「星を追う子供」の上映ならびに観客との質疑応答をやった。チケットが売り切れてて私は行けなかったんだけど、見に行った K ちゃんによると、観客のひとりが「監督の映画では強くてしっかりとした女の子が登場することが多いですが、それはなぜですか?」と質問して、監督が「それはやっぱり女の子に守ってもらいたいという気持ちがあるのかなー」と答えて、場内がどよめいたそうだ。それは思ってても言っちゃだめだよなw

 

なんだか歯切れの悪い感想文になってしまったんだが、どっちにしても園監督が誰にでもお勧めできる映画を撮るわけないから、まあいいかw 私は見てよかったと思ったけど。