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アイルランド大統領選のまとめ (1/2)

日本に住んでらっしゃる方はまったく興味ないと思うんですけど、今回の大統領選は個人的にはほんとにおもしろかったんで、最後にまとめだけ書かせてください。これで終わりにします (たぶん)。

 

公示される前からノリス氏のスキャンダルやらシンフェインのマギネス氏の立候補やらで大騒ぎになっていて、実際の選挙戦が始まって一週間ぐらいでもうお腹いっぱい、ここからは何もおこらないだろう、と思っていたら、そこからひと波乱もふた波乱もあったのです。

 

全候補者が集まってのディベートが全部で 8 回 (テレビで 5 回、でラジオで 3 回)。人気の高かったノリス氏が最初の方のディベートで脱落。この人はゲイでジョイス研究家で上院議員なんだけど、やっぱり端っこの方にいてこそ輝く人なんですよね。初期のディベートでも大統領のオーラをまとおうとして頑張ったんだけど、似合ってなかった。最後の方のディベートでは当選しないことがわかってたので、開きなおって、いわゆるガヤっていうんですか、横から茶々入れたりするのが凄くウィッティーで観客にも大受けだったんだけど、やっぱりあれが本来のノリスさんの持ち味なんだと思う。現在 67 歳。次はあるかな。もしあったら、今度は最初から本来の自分を出して勝負してほしい。

 

中盤の話題をさらったのはなんといってもダナ氏。ダナさんはアメリカの国籍を取っていたことが明らかになって、それってアイルランド大統領としてどうなの? っていう話になった (ダナは二重国籍を隠していたわけでもないし、国への忠誠のコンフリクトもないと反論)。

 

それから、10 月 12 日に行われたディベートでは、ダナがいきなり「重大なお知らせがあります」と言いだして、こういうのはだいたい婚約発表のときに使う言い回しなんだけど、とにかく彼女の家族の誰かが悪意に満ちた言いがかりの対象になっていると。詳細については話そうとしないいんで、司会のミリアム・オキャラハンも「それじゃテレビ見てる人、なにもわかんないじゃん」と詰め寄ったんだけど、後日明らかになったところによれば、ダナの著作権の問題で家族の間で争いが起きていて、彼女の弟 (または兄) に性的虐待を受けたと彼女の妹 (または姉) の娘が訴えたらしい。まあ、たぶんダナが大統領になったら面白くないということでしょう。

 

あと、ダナの乗った車のタイヤがパンクしたりして、これも誰かが悪意をもってタイヤを傷つけた可能性もあるとか言ってたんだけど、結局事件性はないってことになったのかな。ちょっとここまでくると被害妄想入ってるかなと思わないでもなかった。

 

同じディベートで、元IRA のマギネスさんが司会のオキャラハンに「殺人者」呼ばわりされて、それも宗教とからめての発言だったので、ディベート後にマギネスがオキャラハンの楽屋にどなりこんだらしい。

 

また、IRA に父親を殺された人が父親の遺影を胸に遊説中のマギネスに対峙し、「私の父親を殺した人の名前を教えろ」と詰め寄ったのも大きな話題になった。

 

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選挙戦の終盤に差し掛かるまではヒギンズ氏の独走状態で、これは鉄板だなと私も思っていたんだけど、選挙一週間ぐらい前の複数の世論調査で無所属のギャラハー氏がトップに躍り出た。ある調査では、ギャラハーさんは前回調査から支持を倍増させて 40% の支持率。2 位のヒギンズに 15% の差をつけた。ブックメーカーのオッズも一夜にして大逆転。

 

このいきなりの支持率増加についてはちょっと私には理解不能。ギャラハーは実業家なんで、企業家精神とか雇用創出とかを言い募るんだけど、もちろんそれはとても大事なことだとしても、私としてはそれだけだと大統領としてはちょっと一面的にすぎると思っていた。

 

最後のディベートは投票 3 日前に行われました。司会はパット・ケニーで、観客からのあらかじめ用意した質問に候補者が答えるフォーマットだったんだけど、このディベートが一番面白かった。アイルランドは単記移譲式っていう変わった投票方式なんで、2 番目、3 番目に好かれるっていうのも大事になってくる。なるべく敵をつくらないようにすることも大事だから、序盤戦は八方美人のやり取りになりがち。だけど、ここまで来ると誰を蹴落とさないといけないかがはっきり分かっているから、議論も活発になります。

 

もちろん、攻撃の的になったのはギャラハー氏。世論調査でトップだし、この人は選挙前は無名だったので、この段階でも「ギャラハーって誰よ?」という有権者は結構多かったと思う。

 

ギャラハーは無所属っていうことで立候補してたんだけど、元々はフィアナ・フォイル (FF) の党員。FF は経済の混乱をもたらした主犯ということで支持率は最低。ギャラハーは FF では草の根レベルの運動員に過ぎなかったということを印象付けようとしていた。それから、経営していた会社のことで税金上のあやしい部分もあった。

 

(続きます)