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アイルランド大統領選のまとめ (2/2)

 
最初の刺客はシンフェインのマギネス。マギネスはこの時点で当選の可能性はほぼない 3 位だったので、いちかばちかでギャラハーを刺しにきた。
 
マギネス「FF の草の根の支持者には何の問題もない。しかし、FF の真ん中の方はほんとうに腐っている。そして、私から見れば、ショーン(ギャラハー) はその一部である」
 
「ここに来る数時間前にある紳士と話をした。彼によれば、2 年前にショーンに FF の資金集めパーティに招待され、首相と写真を撮らせてもらい、5000 ユーロを寄付した。ショーンは小切手を彼の家にまで取りにきた」
 
つまり、ギャラハーは無邪気な下っ端の運動員じゃなくて、お金集めみたいな重要な仕事もしてたんですよ、っていうことをマギネスは印象付けたかった。
 
ギャラハーはこれを最初否定してたんだけど、CM 明けに司会のケニーが「この紳士が明日インタビューに応じると Twitter でシンフェインがつぶやいている」と言ったところ、ギャラハーの応答がむにゃむにゃし始め、なんだか古いタイプの政治家みたいな答弁になった (「記憶にございません」とかほんとうにで言った)
 
後にその Twitter アカウントはフェイクだと判明。マギネスの主張も細部にちょっと誤りがあったことが翌日にわかった。
 
それから、スタジオの観客のひとりがギャラハーの会社のお金の動きについて質問した。ギャラハーはなんか答えたんだけど、その観客は「そんな話があるはずないっていうのは、会社を経営している人ならだれでもわかりますよ」と問い詰めた。
 
 
ギャラハーは翌日のラジオに出演して、この観客 (女性) はどこかの政党が仕込んだんじゃないかと発言したんだけど、その女性が「私は仕込みなんかじゃない。どこの政党とも関係ない」ってその番組に電話してきたらしい。
 
お金集めの件にしても会社のお金の動きにしても、法律に違反していることじゃないんで、それ自体はそんなにダメージになることではないはずなんだけど、ギャラハーはどちらの質問にもうまく対応できなかった。若くて新鮮な息吹を政界に吹き込んでくれるかと思ったら、いきなり古いタイプの政治家の答弁になっちゃうんだもの。逆にいうと、ギャラハーは政治家じゃないふりを貫き通せるほど老練な政治家ではなかったということか。
 
このディベートが終わったとたんにブックメーカーのオッズも再び逆転。労働党推薦のヒギンズがそのまま逃げ切って大差で当選することになりました。
 
開票日に選挙の大勢が出たところでシンフェインのアダムズ党首と労働党のギルモア党首がばったり出くわして、アダムズは「ウチにおっきい借りが出来たよねー」と笑いながら話しかけたそうだ。ギルモアは絶対認めないだろうけど。
 
新聞の記事の中ではアイリッシュタイムズ紙のフィンタン・オツールの総括がよくまとまっていた。
 

www.irishtimes.com

 
オツールによれば、今回の選挙はアンチ政治のムードが支配的だった。経験豊かな政治家以外の顔を持たなかった FG のゲイ・ミッチェルは惨敗したし、ギャラハーも独立候補みたいなこと言ってるけどほんとは政治家なんじゃないかという疑いが強くなると支持が急降下した。
 
だけど、非政治的なムードっていうことは、ほとんど誰もがこのムードに乗じることができるということ。その証拠にギャラハーはほんとうに大統領のイスにほとんど手の届くところまでいった。
 
また、今回の選挙戦で目立ったのは「人々の力」だった、とオツールは書いています。すなわち、この選挙戦の 2 つの決定的な瞬間はいわゆる「普通の人」によってもたらされた。デビッド・ケリー (父親の遺影を胸にマギネスに対峙した人) とグレナ・リンチ (テレビの観客席からギャラハーを問い詰めた人) です。
 
「リンチとケリーは非常に異なる動機を持っていたけれど、2 つのことで結ばれていた。二人とも道徳的な目的から行動したし、二人とも『私に真実を話してくれ』という単純な要求を持っていた。(中略) 人々の力はいまだに集団的なものではなく個人的なものだけれど、アクティブでほんとうに民主的な市民権とはどういうものかを垣間見ることができた」
 
「メアリ・マカリース現大統領は前任者のメアリ・ロビンソンについて、『大統領の感情的な領域は憲法的な領域よりもずっとずっと広いことを教えてくれた』と語った。」
 
「今回の選挙戦に感情的な領域を与えたのはリンチとケリーだった。この島で起きてしまったことに対する深い怒りが、効果的で道徳的に行動する市民になる勇気をもたらした」
 
 
 
 
 
 
おまけ。俳優のコルム・ミーニーは若い頃にシンフェインの党員だったそうで、今回もマギネス支持を表明していました。たまたま、『Parked』っていう主演映画が公開される時期だったので、プロモーションでメディアに登場してはその話をしていた。
  
 
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マギネスさんの伝記映画を作るんだったら、マギネス役はミーニーで大丈夫ですね。