(http://blogs.yahoo.co.jp/tarascoffeeshop/24620824.html から続き)
それで、テレビ朝日の『スーパーモーニング』という番組の「家庭で移民を考えよう!」です。ニコニコ動画で見れます。一応リンクを貼りますけど、15 分と長いですので、物好きな方、または時間の有り余っている方にしかお勧めしません。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9830289
まず、番組の形態なんですけど、名村さんというテレ朝の経済部長の人が先生役、鳥越さん、東ちづるさん、サッカーのラモスさんなんかが生徒役になって、経済についてわかりやすく解説するっていう趣向らしいです。
日本のマスコミって、テレビ局や新聞社の偉い人が何でも知ってる物知りおじさんみたいな役ででてきます。ニュース番組でも司会者の横に新聞社の編集委員みたいな人がいて、なんだかあたりさわりのないことを一言いうんだけど、あれはどういう意味があるんでしょう。
落語では八つぁん熊さんに講釈たれる長屋のご隠居さんみたいな人に任せとけばすべての問題が解決しますけど、現実にはそういうアルカイックな世界はも失くなちゃったんだってことに多くの人が既に気が付いてるはずなんですが、テレビはいつまでこんなことやってるんでしょうか。
移民の問題っていう難しい問題を考えるなら、そして「家庭で移民を考えよう」って呼びかけるならなおさら、経済学なり社会政策の専門家を呼んできて、移民の良い点悪い点を議論してもらい、名村さんは経済関係のジャーナリストとして議論の筋道を整理し、視聴者が聞きたいであろう質問を専門家に投げかけるという構成にしてほしかったです。最後に「移民のことを家庭で考えよう」って呼びかけるんだけど、考えるべきポイントを整理もせずに、丸投げされてもなー、って思います。
次は、ロジックの甘さ、っていうか欠如って言ってもいいぐらいですが。名村さんは、1000 万人移民を推進したい派のようなんですが、その結論に導くためジックが意味不明です。
導入部では「日本の失業率が高くなった」というデータが紹介されます。うーん、困った問題だなー、と思っていると、次に、このままいくと 2055 年には日本の人口が 9000 万人まで減ってしまうという話題になります。また、今は 5 人に 1 人が 65 歳以上だけど、2055 年には 5 人に 2 人になるというデータが紹介されます。そこで、移民 1000 万人構想だそうです。
労働人口が足りないから移民を入れてバランスを保とうっていうオプションがあるのは理解できますけど、そもそも雇用がないんだったら来てもらっても福祉の負担が増えるだけです。「働く場所がないと、来ても意味がないすよ」ってラモスさんが言うんだけど、全くその通りです。その辺を名村さんはどう考えているんでしょうか。
移民が増えるっていうことは違う文化と文化が出会って軋轢が生まれるわけですから、移民を社会に統合、統合って言う言葉がいやなら包摂でもいいですけど、そのための社会的なコスト (ここで言うコストはお金だけじゃなくて、ホスト・ネイション (日本で生まれ育った人) の心理的負担みたいのも含みます) みたいなものが当然かかるわけです。名村さんが 1000 万人移民を推進したいんだったらですね、そのコストを正当化する理由を提示して、私たちを説得するべきだと思うんです。たとえば、前回のエントリで説明したニューズウィーク誌の Theil さんみたいにです。名村さんの説明は、その理論付けが甘いっていうか、なんだか説得材料を提供する必要すら感じてないかのように、ロジックが破綻・欠如しています。
最後の点はですね、ラモスさんを除く出演者、特に名村さんと鳥越さんなんですが、なんか移民に手を差し伸べてる俺って素敵やん、っていうところで終っていて、厳しい現実的な議論を、わざと避けているのかわかってないのかしらないけど、とにかくしない。
日本の一部のヒダリ方面の人たちの話を聞いててときどき思うのは、なんか弱者のアイデンティティに寄生して、大声だしたり、勇ましいこと言ったり、いい人に思われたりしたいだけなんちゃうの、無責任だなー、ってことなんですが、今回もちょっとそんな感じがした。
(http://blogs.yahoo.co.jp/tarascoffeeshop/24676042.html へ続く)