たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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少子化と移民 (1/4)

たまたまなんだけど、少子化の問題とか、それに伴う労働人口減少を補うために移民を入れるかどうかみたいな議論にたてつづけに 3 つ触れる機会がありました。

 

最初のは、テレビ朝日の『スーパーモーニング』という番組の「家庭で移民を考えよう!」っていうコーナー。少子化が進むと働き手がいなくなるから移民を1000万人入れましょう、という話。あまりにひどい議論だっていうんでネットで話題になってました。

 

2 番目は、内田樹さんのブログに載ってた『目指すは「気分のよい老人国家」そして「後世への贈り物」を』っていう記事。少子化は「問題」ではなく、「解答」である。だからこのまままったりいけばいいじゃん、っていう話。内田さん、あいかわらず枝葉を気にせずスパッと切りますわ。

 

3 番目が、ヨーロッパ版ニューズウィーク誌に載ってた『ヨーロッパの選択』って言う記事。順番は逆になりますけど、この記事からまず説明します。

 

イメージ 1

 

ご覧のように表紙にもなってるんだけど、「ヨーロッパの選択」て大きく書いてあって、その下に、「アメリカ式の移民政策を取って繁栄するか、それを避けて日本のように終わっちゃうか」と書いてあります。写真はピカピカの箱に「USA」って書いてあって、ぼこぼこになった箱に「Japan」って書いてあります。

 

表紙では大きく取り扱われましたけど、本文中に日本が出てくるのは2か所だけ。

 

まず、「カナダ、オーストラリア、アメリカのように伝統的に移民で成り立った国のモデルに基づき、よりオープンで動きのある社会になれば、繁栄するだろう。しかし、扉を閉めて、統合の努力をやめれば、しぼみ、外国嫌いで、衰退を甘受する日本のように終了するだろう」

 

ひどいですね。しかし、日本とヨーロッパの違いにもちゃんと触れています。それが 2 つ目の場所。「欧州は日本とは違い、防御可能な同質的な島ではない。人口が爆発的に増えているアフリカと中東に囲まれているし、すでに大勢いる移民たちは、政府が止めさせようとしても、家族を呼び寄せ続けるだろう」。だから、欧州には日本みたいに衰退してもいいやー (日本がほんとにそう思ってるどうかは別として)、っていう選択肢はないっていう議論です。

 

日本がしぼんじゃってるってのはともかく、外国嫌い (xenophobia) で衰退を甘受 (resigned to decline) っていうのは一面的な見方だと思いますが、まあ、移民入れないと日本みたいになっちゃうぞー、っていう恐怖をあおる戦術ですから、ちょっときつい目の言葉を使いたかったんでしょう。

 

話はずれるんですけど、ステレオタイプの日本のイメージに乗っかっちゃって、言いたいこといってるので、こういうのにもいちいち反論しといた方がいいと思うし、ちょっとは英語ができる人間として反論したい気もするんだけど、反論するにはいろいろ調べなきゃいけないしとか考えてるとそのままになっちゃったりして申し訳ございません。

 

えーっと、この記事を書いてるのは欧州版ニューズウィーク誌の経済担当編集者である Stefan Theil さんという人。徹底的に経済的な側面から移民の必要性を説いています。だから、もちろん社会を機能させるために統合の努力の必要性なんかも口酸っぱく説いてますけど、とても冷徹な議論です。

 

まず、誰でもいいから移民を何人入れましょうみたいな乱暴な議論ではない。アメリカ式の移民モデルを採用しよう、って提案してるんですが、アメリカ式の移民モデルっていうのは何かっていうと、高度な資格やスキルを持った人を人材が足りない分野において選択的に入れましょう、っていうことです。高度な資格やスキルを持った人に流出される国にとっては大きな損害ですけど、そんなことは知ったこっちゃない (とは書いてませんけど)。ヨーロッパがどうしたら繁栄するか、って議論なんだから。

 

また、「不況になれば最初に職を失うのは彼ら (移民) なんだから、それ以外の人々にとってはバッファとして機能する」とも書いてある (これははっきり書いてあります)。また、「移民による福祉へのアクセスを制限するなどして、福祉への依存も軽減する必要がある」とも書いてあります。

 

Theil さんの議論は「経済の発展、繁栄」が善であるってことを前提にしてるから、そこの部分を疑ってる人にはあんまり説得力がないかもしれない。記事には書かなかったけど、そういう人にはそういう人用の説得の手口を用意してるのかもしれないけど。