たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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ロスト・イン・トランスレーション

Lost in Translation (2003)
監督: ソフィア・コッポラ
主演: ビル・マレー&スカーレット・ヨハンセン
アカデミー脚本賞受賞

 

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この映画はとても好きな映画です。公開時に一人で2回も映画館に見にいきました。そんなことをしたのは「ロスト・イン・トランスレーション」が最初で最後です。

 

まず、スクリーンに映し出される東京の風景がかっこいいのです。高層ビルが立ち並ぶ景色もゲームセンターで無心にプレイする若者たちも。これはたぶん私が長く日本を離れているせいでもあるでしょう。

 

そういうクールな (日本人にはどうかわかりませんが、外国人にはクールに見えてると思います) 風景の中で、男女が出会って、淡い恋をして、最後は自分の場所に戻っていく、っていうオシャレ恋愛映画として見ることもできますけど、ビル・マレーに感情移入するともうちょっと違う見方ができます。

 

マレーが演じるのは、かつては凄く人気があったけど、今は落ち目の中年俳優です。昔は売れてたわけだから、金も蕩尽したかもしれないし、刹那的な女性関係もいろいろあったのかもしれません。

 

だけど、異国の地で知り合った若いヨハンソンとは同じベッドの上で服を着たまま一夜を過ごすのですが、関係を求めることはしません。そういう風に彼は決めたのです。つまり、欲望にまかせて若い女性を食い散らかすことをやめ、大人として精神的なサポートを若い人たちに与えることにしたのです。

 

このシーンの前で、酔っ払ったマレーはバーのハウスバンドのジャズ・シンガーと寝てしまいます。ジャズ・シンガーはマレーと同じ様な年代です。これはまあ、ちょっと生々しい話ですみませんが、彼が不能ではないっていうことを見せるためですね。彼が不能だからヨハンソンと寝なかったのではなくて、自分の意思で寝なかったのだと。

 

だから、この映画は中年男が決断して、成長していく物語として見ることもできます。50を過ぎても人間は成長できると。勇気付けられます。

 

この映画は若い女の人には人気があるでしょう。女の子が大事にされる映画だからです。でも、若い男の人にはどうかな。ビル・マレーに感情移入できないとすると、なんだか雰囲気だけで流れていく映画に見えるかもしれません。いや、もうそこは押し倒せよ、相手は待ってるだろ、とか。まあそれが、ものすごく間違ってるわけではないところが (強引さも時に必要だという意味で)、恋愛の難しいところです。