たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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ホロコースト・ジョーク

 

 

開会式の演出チームの一員だった小林賢太郎さんが、20年以上前にホロコーストを揶揄するようなコントを演じていたということで議論が巻き起こり、五輪開幕直前に解任されました。

 

確かに不謹慎なジョークであり、お天道様のあたるところでやるようなジョークではないのですが、かなり前のことであり、辞任しなければならないほどの問題ではなかったと個人的には思います。

 

Twitterで私がフォローしているある方が、リッキー・ジャーベイスのスタンドアップ・コメディーの動画をツイートしていました。その中にナチスをネタにしたジョークがあったのでご紹介します。ジャーベイスは英国のコメディアンで、「The Office」というBBCのコメディ・ドラマで主役(演出と脚本も)を演じました。

 

www.youtube.com

 

最近、年のせいか、いろんなことを知りたくてたまらない。うちにデジタルTVがあって、72チャンネルもあるんだけど、ディスカバリー・チャンネルとヒストリー・チャンネルを交互に6時間ぶっとうしで見たりする。鮫とナチスのことならなんでも聞いてくれ。やつらは皆が言うほどひどい奴らじゃない。鮫のことね。ナチスはダメだ。鮫はすごい生き物だ。体にセンサーがついていて水のわずかな動きも感知して獲物を追い詰める。目もいい。汗とか血とかほんのわずかな人間の分泌物を遠くから嗅ぎ分けることもできる。鮫ならアンネ・フランクを一瞬で見つけただろう。ナチスはほんとうにマヌケだ。

 

いちおうナチスを否定するというテイにはなってます。

 

それからこちらは英国のコメディアン、デビッド・バディールがホロコースト・ジョークに関する考え方を述べたインタビュー。この人はユダヤ系です。左派でアイデンティティ政治に割と肯定的なので、その部分は私はあまり好きではありません。

 

www.youtube.com

 

バディールによれば、ジョークにしてはいけない題材はない。つまり、ホロコーストもOK。ただし内容による、とのことです。

 

ナチス肯定でもなく、被害者をばかにするのでもないホロコースト・ジョークの例として彼があげたジョークがこちら。

 

ホロコーストを生き延びた人が戦争が終わってしばらく経って、ホロコーストと関係ない病気かなんかで死んだ。天国に行くと神様に「なんか面白いホロコースト・ジョークを話してみろ」と言われた。その人がジョークを言うと、神様は「それ、詰まらないな」と言った。そこでその人は「その場にいた人じゃないとわかんないんですよ」と答えた。

 

ちょっとわかりにくいので野暮を承知で解説すると、ホロコーストで苦しんでいるときに被害者はみんな「この世に神はいないのか」なんて思っていたわけです。で、ホロコーストを生き延びて天国にきた人が、「俺たちが苦しんでるときにおまえどこ行ってたんだよ」と神様に詰め寄ってるという図式です。

 

もう1つ。10年程前、サッカーのプレミアリーグで、アーセナルマンUに大敗した試合がありました。そのときに、トニー・カスカリーノという元アイルランド代表がスカイ・スポーツで解説していたんですが、アーセナルのトラオレ選手がマンUのナニ選手にいいようにやられていたのを、「対面のナニによってホロコーストを味あわされている (having a holocaust)」と描写しました。

 

www.theguardian.com

 

視聴者からは苦情がきて、司会者はその場で謝罪しましたが、カスカリーノ自身は釈明はしても謝罪はしなかったし、仕事をクビにもならなかったと記憶しています。The Holocaust (いわゆる「ホロコースト」)ではなく a holocaust (一般名詞の「大惨事」)と言っただけだから、という釈明。ナチスの文脈以外で holocaust なんて単語が使われてるのを聞いたことないし、ナニがナチにかかってるのは明らかなんですけどね。

 

小林さんの話に戻りますけど、解任に際して小林さんが発表したコメントを読みました。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 

私にとってはこの手のコメントの中で今までで一番しっくりくるものでした。「思うように人を笑わせられなくて、浅はかに人の気を引こうとしていた頃だと思います。」「当時の自分の愚かな言葉選びが間違いだったということを理解し、反省しています。」のあたりですかね。

 

小林さんもこのジョークがあまり質のよいものではなかったことをわかっているのだと思います。いや、不謹慎ネダだからダメっていうわけではないんですよ。上のジャーベイスやバディールのジョークに比べると捻りも何もないでしょう。あるのは「ユダヤ人皆殺し」という不謹慎な言葉だけ。言い方悪いですが、幼稚園の子が「うんこ」といって回りの大人があたふたするのを楽しむのにも似ています。

 

あとは、不謹慎ネタをするにしても、ネタを置きに行っているんですよ。野球のピッチャーが安易にストライクを取りにいくという意味での「置きに行く」です。1997年というYoutubeもないころですから、ユダヤ系の人の目に止まる可能性は低いでしょう。不謹慎ネタと言いながら安全なんですよ。ユダヤ人云々のかわりに、たとえば「広島への原爆投下」とか「東京大空襲」とか言えたかといえば言えなかったと思うんですよね。

 

ユダヤ人ジョークを含むラーメンズのネタ『できるかな』をフルで見たい方はこちらからどうぞ。英語字幕を付けてくれています。

 

 

 

小林さんの仕事で私が一番好きなのは、「日本の形- 鮨」です。

 

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