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リスボン条約にYes

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お騒がせしておりましたリスボン条約の件ですが、金曜日に国民投票が行われ、Yes が地滑り的勝利を収めました。投票した人のうち、3 分の 2 が Yes を選択、つまり、Yes が No の 2 倍の票を集めたのです。

今日の新聞でYes が勝利した原因が分析されていましたが、最も大きな理由は 15 ヵ月前の前回の投票後に起こった世界的な不況とのこと。その分析によれば、今回の経済危機は、アイルランドという小さな開放市場にとって、EU がいかに重要かということを思い知らされる機会になったと。たとえば、危機に陥ったアイルランドの銀行を欧州中央銀行が支援してくれたりしたわけです。有権者は条約の細かい内容は知らないかもしれませんが、EU に加盟していないアイスランドが今どんな状態になっているかはみんなしっています。今回もNoになれば、アイルランドへの直接投資が減り、失業率があがるかもしれません。EU内での友好国もいなくなってしまうかもしれません。そうした恐怖が有権者にYesに投票させた大きな要因になったとのことです。

それ以外の要素としては、
○ 政府が、中絶、中立、税制、アイルランドの欧州委員を維持することなど、重要な問題について変化はないことを保証したこと。

○ Yes陣営がうまく準備し、機能したこと。政府はまず上記の保証を取り付けることで、有権者を説得できる材料をそろえてから国民投票に入った。メディアも使い、街を歩いて積極的に運動した。与野党の協力関係もよかった (国会に議席を持つ政党でNo陣営だったのはシンフェイン党だけ)。政党以外の市民団体も活躍した (サッカーアイルランド代表のロビー・キーンもYesに投票するよう呼び掛けてたのは知らんかった)。

○ Noキャンペーンが下手だったこと。政治的に左 (労働者を守れ!) と右 (アイルランドのアイデンティティを守れ!) の人たちがNoを推進したわけですが、有効な議論もなく、大政党の力に屈してしまった。以前に紹介したCoirのポスターもセンセーショナルすぎて逆効果になった可能性がある。

○ 前回の投票でNo陣営の中心人物として活躍したデクラン・ガンレー (Declan Ganley) さんが、欧州議員の選挙で落選したことなどもあり、うまく押さえこまれたこと。

○ ライアンエア、インテル、マイクロソフトなどの大企業が積極的にYesをサポートしたこと。Yesへの投票を呼びかけるインテルの広告がダブリンバスの側面に掲出されているのを私も見ました。

○ 印刷メディアがYesをサポートしたこと。前回は、メディア王ルパート・マードックさんが所有する新聞がNoを推進したんですが、今回は中立なスタンスを取った。

○ 有権者が賢く、国内政治とリスボン条約を分けて考えたこと。国内政治に対する不満を表すためにNoに投票するといった行動は取られませんでした。

今回、アイルランドがYesの意思表示をしたことで、リスボン条約は全加盟国が批准し、発効することとなります。(10/6 追記: ポーランドとチェコがまだ批准していませんでした。ポーランドは問題なくまもなく批准するようですが、チェコはちょっと法律面の整理が必要なようです)