久しぶりにローズ・オブ・トラリー (Rose of Tralee) をまじめに見ました。
ローズ・オブ・トラリーは毎年この時期にケリー県のトラリーという街で行われる、ビューティー・ぺイジェント (いわゆるミスコン) です。イベントの名前自体は「ローズ・オブ・トラリー」っていう19 世紀のバラッドにちなむものです。
ミス・ユニヴァースあたりの大規模なイベントになると、参加する女性たちもプレイボーイ誌のグラビアに登場するようなゴージャスな方々になりますが、こちらのイベントに出てくるのは隣のお姉さんタイプの方たちです。
出場資格はアイルランド人またはアイルランドの血を引く人です。ですから、アイルランドだけでなく、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ヨーロッパの各国などからも代表がやってきます。特に水着審査などはなく、ステージに登場して司会者とおしゃべりし、出し物があるのであれば歌を歌ったり、ダンスを踊ったり、楽器を演奏したりします。今年は蛇遣いの女の人がいてびっくりしました。
このイベントが他のミスコンと異なるのは、アイルランド人としてのアイデンティティを祝福する場となっていることです。世界各地に散らばった同胞たちが、それぞれの場所で伝統を継承し、育んでいることを再確認するのです。出場者たちは、アイリッシュ・ダンスを踊ったり、アイリッシュ・トラッドを歌ったりします。国家規模・民族レベルのリユニオン・パーティー (同窓会) として機能しているわけです。
日本でも似たようなものがあるとすれば、NHK ののど自慢でしょうか。ときどき、海外の日本人コミュニティーが多い場所 (サンパウロとか) に出かけて公開放送をしています。番組のフィナーレでは、出場者たちが一同に会して、ひっちゃきになって日本に向けて手を振ります。日本にいたころは、そこまで一生懸命になることもないだろうにと思っていましたが、海外暮らしが長くなった今となっては、その人たちの気持ちもよくわかります。
ケリー県には、観光拠点として有名なキラーニーという街もあります。10 年ほど前にこの街を訪れた時ですが、リリー・オブ・キラーニーというイベントがあることを知りました。パブかどこかに、イベントの写真が貼り出してあったのです。スヌーカー・プレイヤーのケン・ドハティーさんがゲストとして招かれていました。ローズ・オブ・トラリーに対抗して、リリー・オブ・キラーニーとはベタだなーと思ったのですが、「リリー・オブ・キラーニー」というオペラも実際にあるようです。検索してみても、このイベントについてはまったくひっかからないので、たぶん短命に終わったのではないでしょうか。
(写真は優勝したロンドン代表 Charmaine Kenny さん)
