たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

クイーンズ・イングリッシュとデリー

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もう随分前の話だし、仕事の内容とは直接関係のない話なので、もういいだろうということで書きます。昨日の日記に出てきた、デリー出身のカソリックの社長さんの話です。

 

前回とは別のプロジェクトで日本の企業と取引するということで、日本人インターフェイスとして呼ばれて行ったんです。半分通訳なんですが、第三者というよりもその会社の人間として、やってきた日本人に対応するみたいな立場です。会議も順調に終わり、契約を結ぶことが決定になりました。そこで日本からやってきた社長さんが、「私自身は英語は下手ですけれど (日本人によくある謙遜で、実際はうまかったです)、実際に作業が始まれば問題はないです。今回は連れてこれませんでしたけれど、日本には非常に英語の達者な社員がおります。彼女は、クイーンズ・イングリッシュを喋るんです」と言ったんです。

 

「クイーンズ・イングリッシュ」という言葉を聞いたとたん、こちらのデリー出身の社長さんの顔色がサーッと変わったんですね。私も一瞬「ヤバイ」と思いましたし、アイルランド側のスタッフは皆な気付いたみたいで、会議室の空気が凍りつきました。ふっと副社長さんの顔を見ると、うつむきつつも私に目配せして笑っています。

 

日本人にとって「クイーンズ・イングリッシュ」は英語がうまいという褒め言葉ですけれども、カソリックでデリー出身の社長さんにとっては英国は憎き敵。ましてやその国を司る女王のように喋る人となんて話したくないわけです。もちろん、この日本人の社長さんには悪気がなかったことはわかっているからいいんですけど、褒め言葉として「クイーンズ・イングリッシュ」は使わない方がいいかと思います。あ、それからデリー (Derry) もイギリスではロンドンデリーと呼びますけれど、アイルランドではデリーにしてください。ロンドンデリーはイギリスが付けた呼び名なので。

 

話は変わりますが、私はアイルランドの都市の中ではデリーが一番美しい街だと思います。町の中心は小高い丘で、城壁に囲まれています。城壁の上に登って歩けるんですが、そこから見渡す風景も素晴らしいです。東側にはフォイル川という大きな川が流れています。たぶんアイルランドでこれより川幅が広いのはシャノン川だけなんじゃないでしょうか。西側はなだらかな丘陵になっているんですが、民家がびっしりと軒を並べている様が壮観です。また、デリーで有名なのは政治的な壁画です。写真は一昨年デリーに旅行したときに撮影してきたものです。2 枚とも 1972 年の「血の日曜日」事件を題材に取ったものと思います。下の写真では足場が組まれてますので、たぶん壁画は制作中なんでしょう。
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デリーはアイルランドで私が一番好きなバンドであるアンダートーンズ (The Undertones) を生んだ町でもあります。アンダートーンズの話はまた今度したいと思います。