トム・タジェンダットというイギリス保守党の国会議員がいます。昨年夏の保守党党首選(リズ・トラスが当選したとき)にも立候補していたので、かなりの大物議員といっていいでしょう。現在は安全保障担当の国務大臣をやっています。
この人が月曜日に「It’s Tayto time」というコメントとともに食べかけのポテトチップスの写真をTwitterに投稿したんですよ。ところがこれはアイルランド共和国のテイトーの袋だったのです。
It’s Tayto time. pic.twitter.com/GLUd827MnX
— Tom Tugendhat (@TomTugendhat) 2023年2月6日
ご存じの方も多いと思いますが、アイルランド共和国と北アイルランドにはそれぞれテイトーというブランドのポテトチップスがあり、別の会社が製造・販売しています。たぶん昔、商標に関する争いがあって、販売地域を北と南にわけることで決着がついているのだと思います。
タジェンダット議員は北アイルランドのテイトーのつもりでツイートしたのか、それとも南にも別のテイトーがあるのを知らずにツイートしたのかわかりませんが、UUP(アルスター統一党)のダグ・ビーティー党首から突っ込みが入ります。「やっちまったな。この世にテイトーは一つしか存在しない。そしてそれは(北アイルランド・アーマー県の)タンドラギー村で作られている」。
Shots fired Tom….. only one Tayto & they’re made in Tandragee 😂😂😂 pic.twitter.com/rIdQrkZQiI
— Doug Beattie (@BeattieDoug) 2023年2月7日
そこでタジェンダット議員もすかさず訂正。「テイトーの話になると、それは神学論争になる」とユーモラスに返します。ecumenical matter っていうのは、アイルランドを舞台にした人気コメディ『ファーザー・テッド』からの引用です。そういう名セリフがあったのですよ。
When it comes to Tayto, that would be an ecumenical matter. @MrTaytoIreland @MrTaytoNI https://t.co/Fmp97xth4e pic.twitter.com/a8rTWrL4DU
— Tom Tugendhat (@TomTugendhat) 2023年2月7日
タンドラギーのテイトー工場には、2019年のイギリス総選挙の前に、当時首相だったボリス・ジョンソンが訪れています。ジョンソンはブレグジットを推進したわけですけれども、そのことを北アイルランドのユニオニスト側(主にプロテスタント)の人はおもしろく思ってなかったわけです。ま、それをなだめるための1つの策として北アイルランドを代表するブランドであるテイトー工場を訪れたのでしょう。このとき彼は、テイトーのポテチが大好きで、ダウニング街10番地(公邸)で大きい袋のやつを頬張ったと話していました。
ジョンソンは、2021年にダウニング・ストリートでイギリスの飲食料品マーケットが開かれた際にも、「私はテイトーの信奉者(devotee)」とまで宣言しており、テイトーのマスコットの体形に自分の体形が似ているのがその証拠だとジョークを飛ばしています。イギリス本土にもWalkersなどのポテチ・メーカーがあるのですが、そこの人たちはちょっと面白くない思いをしたかもですね。
アイルランドのテイトーは「フリー・ステートー」(Free State: 昔アイルランドはアイルランド自由国と呼ばれていました)というニックネームで呼ばれることがもありますが、2つのポテチの論争は味に関するものに限られており、政治的な論争に火をつけることはまれなのですが、今回ばかりはタジェンダット議員のおとぼけのせいで巻き込まれてしまったようです。
ちなみにボリスさんのお気に入りのフレーバーはチーズ&オニオンだそうです。
あと、ほんとうはいけないんでしょうが、北アイルランドのテイトーをダブリンでもみかけることがたまにあります。半年ほど前にはLuasのバスアラス駅前のLink Expressというコンビニで売っていました。
参考: