奇人変人というと失礼な言い方かもしれませんが、いつも町を浮遊している不思議な人がいます。以前もUCDを住処にしているオールド・マン・ベルフィールド氏のことを書きました。
学生でもないのにトリニティ大学に入り浸っていた日本人のマテオさんや、腰にぶらさげた大きな鍵を銃に見立てて、西部劇よろしくバンバンと人を撃つマネをする通称 Bang Bang さんという人もいました。
アイルランドではそうした人をStreet Characterという言い方をします。通りにいる個性的な人ぐらいの意味でしょうか。
もちろんアイルランド第二の都市であるコークにもいらっしゃるらしくて、同市出身のフランク&ウォルターズというバンドは、そのバンド名を2人のストリート・キャラクターの名前からとっているそうです。
ダブリンのそういう人たちをテーマにした大判の絵本も出版されています。
この本では「Walking Class Hero」なんて書いていますね。Working Class Hero (労働者階級の英雄) をもじって、散歩者階級の英雄ということでしょうか。この本にはマテオさんのことも載っています。
さて、前置きが長くなりましたが、今日の新聞にパリのシャルル・ド・ゴール空港で18年間暮らしたイラン人の男性が亡くなったというニュースが掲載されていました。
この方は1945年生まれのマーラン・カリミ・ナセリさん。見出しを読んだときは、ここ最近の18年間を空港で暮らしていたのかと思ったのですが、そうではありません。暮らしていたのは1988年から2006年までとのこと。ところがここ数週間空港に戻ってきてまた寝泊りしていたそうです。死因は心臓発作。死期が近いことを感じ取って戻ってきていたのでしょうか。そのあたりのことはわかりません。
ナセリさんはイギリスで学業を修めた後、イランに戻ったのですが、反体制活動に従事したことでパスポートなしで追放されたそうです。ヨーロッパのいろんな国に亡命申請をして、ベルギーの国連難民高等弁務官事務所に難民認定をもらったのですが、パリの鉄道駅でその証明書を盗まれてしまったそうです。
そうこうするうちにフランス警察に捕まったのですが、パスポートなどがないため国外退去処分にすることもできず、シャルル・ド・ゴール空港に住み着きました。
最初は仕方なくそうしていたのですが、空港の職員とも仲良くなり、アルフレッド卿というニックネームももらい、そのうちに自分の意志で住み続けることにしたようです。
ナセリさんは、スピルバーグが監督してトム・ハンクスが主演した『ターミナル』という映画にインスピレーションを与えたそうです。