たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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ロバのジェニー

 

映画『イニシェリン島の精霊』でコリン・ファレルに寄り添っていたロバ。あれがジェニーです。親友に絶交を言い渡されたパドリックを精神的に癒します。ジェニーは役名ですが、本名も同じだそうです。アイルランド生まれです。

 

ジェニーはミニチュア・ドンキーの中でもとりわけ体が小さく、荷物の運搬などの使役にはあまり役に立ちそうにありません。ファレル扮するパドリックはそんなジェニーをかわいがります。そんなところに、あまり知的とはいえないけれども情に厚いパドリックの性格がよくでています。

 

先日のアカデミー授賞式でも司会のジミー・キンメルがジェニーを連れて舞台に登場しました。

 

 

キンメル「こちらはミニチュア・ドンキーのジェニー。『イニシェリン島の精霊』のスターの一人だ。ジェニーは演技ができるだけでなく、精神的支援の免許ももっているロバなんだ。いやまあ、そう申告してアイルランドからの飛行機に乗せたんだがね」

 

しかし、マーティン・マクドナー監督によると、あれは本物のジェニーではなかったようです。そのへんのロバを連れてきただけみたい。

 

ジェニーは演技をするのは初めてだったのですが、マクドナー監督はジェニーのことが好きすぎて、エンターテイメント業界から足を洗って平和に暮らしてほしいと、お金を払って引退してもらったのだそうです。今はアイルランドのどこかで静かに暮らしています。レポーターなどの嗅ぎつけられると面倒なので、正確な居場所は秘密になっています。

 

さて、映画の撮影現場では、ジェニーに何かあっては困るということで代役も用意されていました。保険会社に要求されたようです。

 

ジェニーは体が小さいので、似たようなロバを見つけるのは難しかったのですが、ようやくロージーというロバを見つけてイギリスから連れてくることができました。ロージーがやってきて仲間ができたということで、ジェニーの精神状態もよくなって演技が格段に安定したそうです。

 

さて、先月行われた英国アカデミー賞(BAFTA)では、『イニシェリン島の精霊』は英国作品賞を受賞しました。そのときの受賞スピーチでもマクドナー監督がジェニーとロージーに触れていました。

 

マクドナーさんは「英国作品賞をありがとうございます」という言葉でスピーチを始めたあと、「この映画にかかわったアイルランド人のキャストやスタッフは、『英国?』と思っているかもしれませんが」と軽くジャブを入れます。マクドナーさんはアイルランド人の両親のもと、ロンドンで生まれた人です。この映画はアイルランドが舞台ですが、出資したのは主にイギリスの会社です。

 

お決まりの感謝の言葉のあと、いよいよロージーとジェニーの話です。「最後に、代役としてスタンバイしてくれていたロバのロージーに感謝します。あ、彼女はブリティッシュです」。ここで笑いがおきます。ロバにはのろまという意味もありますからね。「いや、ほんとに彼女はストーク・オン・トレントの生まれですから」とイングランドの都市の名前をあげます。「ロージーは一度も画面に映ることはありませんでした。ちょっと太り気味だったので。しかし、ジェニーは彼女のことが大好きでした。ロージーなしにはこの映画は完成しませんでした。ありがとうロージー」。

 

ジェニーがアイルランドの隠喩、ロージーイングランドの隠喩だと考えると、このスピーチは奥が深いですね。

 

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