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イギリスの郵便ポストに刻まれる国王の装飾頭文字

エリザベス女王が旅立たれ、チャールズ3世が即位されました。一つの時代が終わり、新しい時代が始まるわけですが、これに伴い、いろいろな変化があるようです。たとえばイギリスの国家は「God Save The Queen」から「God Save The King」に変わります。クイーンズ・イングリッシュという言い方もキングズ・イングリッシュに変える必要があるのかもしれません。またイギリスの紙幣にはエリザベス女王の肖像が使われていますし、切手にも横顔があしらわれています。これもチャールズ国王のものにかわっていくのでしょう。

 

郵便関係が趣味の私にとって気になるのは郵便ポストに描かれる装飾頭文字です。チャールズ3世になれば、C と III と R を組み合わせた装飾頭文字になるはずですが、どのようなデザインになるのでしょうか。

 

なんのことかといいますと、イギリスの郵便ポストにはその時の君主の装飾頭文字が刻まれるのです。古いポストも使えるものは使うので、昔のいろんなポストも現役ですが、エリザベス2世の治世が長かったので北アイルランドとかに行くと「EIIR」と刻まれたポストだらけです。E は Elizabeth、II は 2 世、R はラテン語で王位を意味する Regina (女性形) です。

 

 

ベルファストから南に車で30分ほど下ったところにヒルズボロという町があります。ここにはヒルズボロ・キャッスルというカントリー・ハウスがあります。これは女王陛下のレジデンス、つまり、北アイルランドに来たときに宿泊する場所です。この町には150年ほど前に使われていた初期型の六角柱のポストが置かれています。

 

 

六角柱のポストは北アイルランド唯一の世界遺産であるジャイアンツ・コーズウェーにもあります。ここは4万もの石柱群 (主に六角柱) が並ぶ奇景で知られる場所です。ただ、UKの六角柱ポストは観光用のレプリカのものもあるらしいので、私がここで紹介したポストが実際に約150年前に作られたものかどうかは不明です。

 

 

アイルランドも1922年にアイルランド自由国としてイギリスから分離する前は、英王室の装飾頭文字入りの赤いポストを使っていました。分離後すぐにポストをエメラルド・グリーンに塗り替えることに決定しましたが、これは、一般市民に体制が変わったことを視覚的に知らせるという意味で大きな効果があったようです。

 

 

装飾頭文字も一部のポストでは削って消したのですが、まあいいかと思ったみたいで英国王・女王の頭文字入りポストがアイルランドでは今でも数多く使われています。この写真はヴィクトリア時代のもの。ヴィクトリアの在位期間は 1837-1901 ですが、ポストの使用は1850年代に始まったようです。

 

 

ヴィクトリアを継いだのはエドワード7世。彼の治世は10年足らず(1901-1910)と短かったのですが、この時期に郵便制度が著しく発展したらしく、彼の装飾頭文字をあしらった郵便ポストはアイルランドにもたくさん残っています。装飾頭文字は E と R と VII の組み合わせです。

 

 

アイルランド独立前の最後のイギリス王はジョージ5世。1910年即位でアイルランド自由国がイギリスから分離して成立したのが1922年ですから、期間も長くなく、彼の装飾頭文字をあしらったポストはアイルランドにはあまり残っていません。

 

 

アイルランド自由国となってからは SE および P&T のアルファベットを組み合わせた2つの装飾頭文字が使われるようになりました。P&T については次の段落で説明しますが、SE は Saorstát Éireann の頭文字。アイルランド語で「アイルランド自由国」という意味です。SE の装飾頭文字の入ったポストは今ではめったに見かけません。ダブリンだとダンレアリのフォーティーフットにあります。

 

 

1937年にアイルランドという国名で真の主権国家になってからは、SE の装飾頭文字が消えて、「P&T」のロゴだけが入るようになりました。これは郵便電信省(Department of Posts and Telegraphs) の頭文字をとったもの。ケルト書体なので「&」が数字の「7」のように見えます。

 

 

1983年、郵便電信省が行っていたサービスのうち、郵便部門は An Post という名前の新しい国有企業が担当することになりました。An はアイルランド語の定冠詞 (つまり、英語の The にあたる) です。1983年以降に作られた郵便ポストには下の写真のようなロゴが表示されています。

 

 

ジョージ5世の後を継いだエドワード8世はいろいろあって1年足らずで自分から退位しました(1936年)。在位期間は短かったですがそれでもポストは作られています。イギリスには全部で12万個を超えるポストがあるそうですが、エドワード8世のポスト現在171個残っているそうです。

 

 

こちらは変わり種。存在しないはずのエリザベスの緑のポスト。実はこれはカトリックが多く住む北アイルランド・西ベルファスト地域にあるもの。誰かが勝手に緑に塗り替えてそのままになっているらしいです。ただし、景観への配慮ということでイングランドにも国立公園などに緑のポストはあるそうです。

 

 

ロイヤルメールの発表によりますと、EIIR (エリザベス2世) の郵便ポストは全体の60%以上。次にジョージ5世が約15%。以下、ジョージ6世、ヴィクトリア、エドワード7世エドワード8世と続きます。

 

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