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ジョン・トレーシー: アイルランド陸上界のレジェンド

 

 

ジョン・トレーシーは、アイルランドの元陸上長距離ランナーです。彼のことを初めて知ったのは、1984年ロサンゼルス五輪のマラソンでのこと。日本からは瀬古さんと宗兄弟が参加し、瀬古さんが優勝候補に挙げられていたこともあって、このレースには日本でも注目が集まっていました。残念ながら瀬古さんは14位に終わり、日本勢最高位は宗猛選手の4位でした。

 

 

このレースで銀メダルを獲得したのがジョン・トレーシーです。2位と3位が大接戦で、争いは競技場の中にまでもつれ込みました。トレーシーを追うのはイギリスのチャーリー・スペディング。私は確かリアルタイムでテレビ中継を見ていて、当時は別にアイルランドが好きとかそういうことはなかったのですが、10メートルほどの差を保ったままトレーシーがゴールするのをハラハラしながら見ていました。

 

 

で、今日の新聞にジョン・トレーシーのことが載っていたんですね。ロサンゼルス五輪の話かなと思ったら、1980年にロンドンで行われた国際競技会の5000メートル・レースの話でした。

 

www.irishtimes.com

 

レースは終盤に差し掛かり、勝負はイギリスのスティーヴ・オヴェットとトレーシーとの争いとなります。最終コーナーを回ったところでオヴェットがわずかにリード。ここで何を考えたのかオヴェットは勝利を確信したかのように右手を高く上げます。トレーシーが追い込んで差が縮まる。それに気付いたオヴェットが加速して差が広がる。そこでオヴェットは今度こそほんとうに勝負あったと思ったのでしょう。ゴールの直前で速度を緩めます。そこにトレーシーがオヴェットのわきの下をかいくぐるような感じで体を前に倒しながら飛び込み、勝利をつかみました。

 

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そのときの動画はこちら。

 

www.youtube.com

 

ゴールしたとき、トレーシーは横でオヴェットが「Fxxk」とつぶやくのを聞いたそうです。

 

 

このときレースを中継していたBBCの実況が、勝負がついた後、トレーシーのことを Treacey The Mudlark と呼ぶんですね。この Mudlark というのは初めて聞く言葉なので調べてみたのですが、これは鳥の種類ではなくて、18~19世紀にロンドンの川で金目のモノを探してゴミあさりをしていた貧しい人々のことだそうです。

 

 

トレーシーはもともとクロス・カントリーのスペシャリストで、世界クロス・カントリー選手権で2連勝したこともあります。勝ち方が勝利を「かすめとった」みたいなイメージだったことと、泥だらけで走るクロカンのイメージから、Mudlark という言葉が出てきたのでしょうが、一瞬でこの言葉が出てくるアナウンサーはやっぱり凄いですね。アナウンサーは別にトレーシーが汚い勝ち方をしたと言っているわけではなくて、「オヴェットは自分以外を責めることはできない」とも言っています。

 

 

Youtubeでは「Celebrating Too Soon」 (喜ぶには早すぎた) などのタイトルで、勝負が下駄を履く前に喜んでしまって結局負けてしまった、みたいなシーンを集めたコンピレーション動画がいくつも上がっていて、私もよく見ています。でも、このトレーシーとオヴェットのレースはこれまで一度も見たことありませんでした。

 

 

トレーシーは引退後は、スポーツ・アイルランド (旧称: アイリッシュ・スポーツ・カウンシル) という公的機関の代表を務め、アイルランドのスポーツの発展に尽力しています。

 

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最近のジョン・トレーシー

 

 

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