たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

シービーン (Shebeen)

 

 

コロナが発生してからよく聞く言葉として「ウェット・パブ」というのがあるという話を以前書きましたが、もうひとつ、シービーン (Shebeen) というのがあります。

 

これはライセンスなしで違法営業している酒場のこと。ロックダウンでパブの営業は禁止されていますから、もぐりで酒場をやっちゃう人が出てくるわけです。

 

コロナ前には違法にパブをやっている人なんかそんなにいませんから、シービーンという単語は大昔の話をするときにしか使っていなかったような気がします。

 

昨日の新聞にも、シービーンが警察の手入れを受けたという記事が載っています。

 

www.irishtimes.com

 

メイヨー県ウェストポートのシービーンが、タレコミを受けて警察に強制捜索を受けました。生ビール・サーバーやフリーザーなど本格的な設備を備えていたとか。

 

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ウェストポートで摘発を受けたシービーン

 

アイリッシュ・タイムズのサイトで Shebeen で検索をかけると、いくつも出てきますね。

 

こちらは1月2日、リムリック県ラスキールのシービーンが手入れを受けた記事。

 

www.irishtimes.com

 

1月1日、キルデア県。

 

www.irishtimes.com

 

昨年11月29日。ケリー県とモナハン県。

 

www.irishtimes.com

 

などなど。

 

Shebeen という単語は元々アイルランド語の síbín から来ています。英単語としてオックスフォード辞書にも載っています。同辞書によると発音は [ʃɪˈbiːn]。「シビーン」のように読んで、アクセントは第二音節。

 

ところが、私が先日購入した「The Dictionary of Hiberno-English」によると、発音は [ˈʃiːbiːn]。「シービーン」のように読んで、アクセントは第一音節です。

 

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たとえば、次の RTE の記事の中に動画があるのですが、その動画の 11:00 あたりで政治記者が「シービーン」と第一音節にアクセントを置いて読んでいます。

 

www.rte.ie

 

ほかにもいろいろ RTE の動画を見てみたのですが、「シビーン」と第二音節にアクセントを置いてオックスフォード辞書風に読む人、「シービーン」と最初の音節を伸ばしつつ第二音節にアクセントを置いて読む人、「シービーン」と第一音節と第二音節を2つとも強調しながら読む人など、さまざまなんですね。

 

経験上、こういう場合は英語風に読むよりはアイルランド語風に読む方が受けがいいので、「シービーン」と第一音節にアクセントを置いて発音した方がいいと思います。

 

Shebeen はアイルランドだけではなくて、イギリスや北米、カリブ諸国、南アフリカなどでも使われるようです。

 

特に南アフリカの話はおもしろくて、アパルトヘイト時代に、合法のパブに入ることを禁じられた黒人が集まるもぐりの酒場をシビーンと呼んでいたそうです。酒を造るのは女性という伝統に従い、こうした酒場の主人は女性で、シビーン・クイーンと呼ばれていました。女主人が自家製の酒を客に提供し、客は社会や政治の話に花を咲かせていたとか。ちょうど昔のイギリスのコーヒー・ハウスのように、コミュニティのハブのような役割を果たしていたようです。もちろん非合法なので警察に見つかると閉鎖させられるのですが、ほとぼりが冷めた頃に営業を再開。庶民の逞しさが感じられます。アパルトヘイトが廃止された後もシビーンの名は残り、今は合法的な酒場として営業しているそうです。(南アフリカはたぶん「シビーン」と発音していると思うので、「シビーン」と書きました)

 

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