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『フェアリーテール・オブ・ニューヨーク』の製作秘話 (前編)

アイリッシュ・タイムズ紙にザ・ポーグスの『フェアリーテール・オブ・ニューヨーク』(ニューヨークの夢)の製作秘話みたいな長めの記事が載っていて、これがものすごく面白かった。 

 

 

www.irishtimes.com

 

もともとは、イギリスのガーディアン紙の記事であり、しかも初出は2012年。前に読んだような気もするし、読んでないような気もする。細かい部分をアップデートして再掲載ということらしいです。書いたのは、ガーディアン紙の音楽担当のドリアン・リンスキー記者。

 

記事を要約しながらご紹介したいと思います。

 

www.youtube.com

 

ザ・ポーグスと故カースティ・マッコールが歌うこの曲がリリースされたのは1987年。クリスマスが近くなるとアイルランドのシングル盤チャートに上ってくるわけですが、17の異なる年に合計109週にわたってチャートインしているそうです。

 

バンドでクリスマス・ソングをやろうというアイデアがどこから来たのかについては、意見は一致していません。バンドのアコーディオン奏者で『Here Comes Everybody: The Story of the Pogues』というメモアールを出版しているジェイムズ・ファーンリーによれば、マネージャーだったフランク・マリーがザ・バンドの『今宵はクリスマス(A Christmas Must be Tonight)』をカバーしてはどうかと言い出した。そこで、バンドのメンバーは「あの曲はひどい曲だ。自分らでオリジナルの曲を作る」と言ったのだとか。

 

ボーカルのシェーン・マガワンの記憶は違っていて、ポーグスのセカンド・アルバムをプロデュースしたエルビス・コステロが、ベース奏者のケイト・オリオーダン (後にコステロと結婚) とのクリスマス・デュエット・ソングなんかおまえに書けないだろう、書けるかどうか賭けようぜ、と言ってきたのだとか。

 

この曲をマガワンとともに作詞作曲したバンジョー奏者のジェフ・ファイナーは、まず「クリスマスの日に妻のことを恋しく思う船乗り」のことを歌にしたのだが、奥さんに聞かせたところ、「ダサい」と一笑に付されてしまった。ファイナーによれば、人生が下り坂になったカップルが最後にある種の啓示をうけるというストーリーラインは彼の妻が出してきたものなのだとか。そして、ニューヨークにすむある共通の友人がモデルになっているのだとか。

 

マガワンはこれに関しては詳しく語っておらず、「どこかに移住して運の尽きかけたどのカップルにも当てはまる話だよ」と言っている。

 

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ファイナーはボツにした船員の歌からアップテンポの部分を残し、マガワンはスローテンポの部分とコーラスを作った。このとき、マガワンはまだニューヨークに行ったことがなかった。だが、バンドは1985年秋のヨーロッパ・ツアー中にセルジオ・レオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』をテープが擦り切れるほど見まくった。エンニオ・モリコーネが作曲したテーマソングの影響がもしかしたら聞いてとれるかもしれません。

 

この曲の最初のデモは、『ア・レイニー・ナイト・イン・ソーホー』と同時にコステロによって録音された。ファーンリーによれば、『ア・レイニー・ナイト』に関しては、マガワンはこれまでに見たことがないほど熱心に取り組んでいたとか。しかし、『フェアリーテール』の方は、まったくピンとこない出来栄えだった。ストーリーはアイルランドから始まっていた。曲の出だしのオリオーダンのパート:「クレア県の西海岸の荒れたクリスマス・イブ、海の向こうには何があるのだろうかと自分に問うた」。これではだめだ、とすぐにわかったそう。

 

ファイナーとマガワンは何度も何度も曲を練り直した。毎晩のように。曲の完成までに2年間を費やすことになる。マガワン「これまで作曲または演奏した曲のなかで、ダントツで複雑な曲だ。すばらしい点は、それがとてもシンプルな歌に聞こえるところ」。

 

曲のタイトルについては、アイリッシュアメリカンの作家、JP ドンリーヴィーの1973年の本のタイトルをそのまま頂いている。タイトルを使用することの許可を求めるためにマガワンが訪ねてきたときのことを、ドンリーヴィーはこう回想している。「曲は気に入った。しかし、その曲は私の小説とはまったく関係ないことはすぐにわかった」。

 

1986年2月、ポーグスはアメリカ・ツアーで初めてニューヨークを訪れる。マガワンによれば、「夢に見ていたよりも何百倍もエキサイティングな場所だった」。

 

(後編に続く)

 

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