(前編はこちら)
旧ミドルトン蒸留所は、もともとは毛織工場であり、それが兵舎になったあと、1825年に蒸留所として生まれ変わりました。実際に稼働したのは1975年まで。新しい蒸留所が隣に建設されたので、この施設はお役御免となったのです。1992年に博物館的なビジター・センターとしてオープンしました。現在の正式名称は “Jameson Experience, Midleton”。俗に “Old Midleton Distillery” などとも呼ばれます。毎年約10万人の観光客がここを訪れるそうです。
この蒸留所の元々のオーナーはコーク・ディスティラリー社です。この会社は、今も販売されているパディー (Paddy) というウイスキーやコーク・ドライ・ジン *Cork Dry Gin” というジンを作っていました。
ご存じの方も多いと思いますが、20世紀に入ってからアイリッシュ・ウィスキーは退潮の一途。それに歯止めをかけるため、コーク・ディスティラリー、ジェムソン、ジョン・パワーの3社が1966年に合併してアイリッシュ・ディスティラーズ社という会社を作り、このミドルトンを生産の本拠地としたわけです。
アイリッシュ・ディスティラーズ社は大企業だけあって、敷地は広いですね。北アイルランドのブッシュミルズよりも大きいと思う。マイクロ・ディスティラリーの比ではありません。
ロビーで待機した後、ツアー出発です。日曜日ということもあってか見学者は30人ほどの大人数。国際色も豊かです。
ビデオを見せてもらった後、旧蒸留所の建物の中に入ります。非常に古い造りのまま保存されていて、1970年代まで使用されていたというのがちょっと信じられないほどです。
こちらの大きな建物は、原料である大麦の貯蔵庫として使用されていたようです。
動力源である水車。この蒸留所は、ダンガーニー川という川のほとりにあります。
今は使用されていないポットスティル (蒸留器)
ポットスティルとカラム (コフィ―/連続式)スティルの原理を説明する図。
ツアーの途中で、稼働している新蒸留所の姿を見ることもできます。手前の古い小屋の後ろに見える近代的な建物がそれです。
この旧蒸留所は稼働していないと書きましたけど、実は小規模の蒸留施設が設置されているんですね。ここでは研究・実験のために利用しているようです。
それからこちらは樽職人の作業場だったところです。
お役御免になった古い設備が庭に飾ってあったりします。
最後にお楽しみのテイスティングですね。車じゃないので心おきなく飲めます。
今回のツアーで一番驚いたのは、”パディー” ウイスキーがアメリカの会社に売却されたという情報を聞いたことです。”パディー” はこの蒸留所の主力商品だったわけですから。ガイドさんの説明では、たまたまこのツアーの翌日が所有権の移る日だと聞いたと思ったんだけど、今Wikipedia を見ると2016年ということになってるな。2016年に交渉が成立して、実際に移行したのが2019年ということか。
鉄道の旅は時間が列車の時刻表に縛られるという難点はありますが、本を読んだり、車窓から景色を眺めたりしながら、のんびりと旅ができるのがいいですね。
今回、私は日帰りでしたが、週末に1泊旅行でコーク市内やコーブの街などを見て回るのもいいのではないでしょうか。
さて、ミドルトンは小さな町ですが、和食屋が2軒ほどありました。そのうちの1軒、Ramenという店に入り、Japanese Udon Noodles というのを食べました。チキン入りで12.95ユーロ。焼うどんですね。
ソフトクリームがもれなくついてきます。カップだけもらってセルフサービスで盛るのです。不器用な私ですが、わりと上手にできました。
ツアーの所要時間は75分間ほど。2020年3月現在の料金は23ユーロです。48ユーロでプレミアム・テイスティング・ツアーというのもあるようです。