たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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シンフェインの支持率とスキャンダル

先週のサンディ・インディペンデント紙に、同紙が調査機関と共同で行った世論調査の結果が載っていました。

 

政党別の支持率ではついにシンフェインが 26% (「わからない」を除いた上でのパーセンテージ) でトップに立ちました。政権与党のフィネゲール (22%) と労働党 (7%) は数字を落とし、フィアナフォイルは 20% です。

 

今回の世論調査には 2 つの大きな問題がどう反映されるかが注目されてました。ひとつは水道料金の問題。先週土曜日には全国約 90 カ所でデモが行われ、総計 150,000 人が参加したといわれます。水道料金を払うかどうかについてもこの調査では質問されてまして、「払う」が41%、「払わない」が25%、「場合(条件)による」が18%でした。政権与党の支持率が落ちたのはこれが原因です。

 

もうひとつの問題ですが、これは北アイルランドの女性がティーンエイジャーのときに IRA の幹部にレイプされたということを BBC の番組でインタビューに答えたんですね。そして、それだけではなく、シンフェインが組織的にそれを隠ぺいした、という証言をしたんです。これは国会でもメディアでもこの 2 ~ 3 週間ほど大きな問題となっております。

 

その影響がシンフェインの支持率にどう影響が出るかというのが注目だったのですが、結果としては党の支持率は 4 %アップ。ただし、党首個人としてジェリー・アダムズに不満足な人は 8% アップの 56% となっております。

 

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ショッキングな話なんですが、このマリア・カハルさんという女性は、IRA が取り仕切る私設裁判に出席させられて、犯人もいるところで尋問されたそうです。警察に行ったら、犯人を自由にするぞ (つまり、犯人はあなたを殺しにいくだろう、ということ)、と脅されて。

 

紛争の激しかった 70 年代あたりは、べスファストやデリーでは警察がロイヤリストの味方で、カソリック側が攻撃されても見ないふりをするならいいくらいで、攻撃の手助けしてたようなものですから、カソリック側はバリケードを立ててその中では IRA が自警団みたいになってたそうです。牛乳配達人への不満から結婚相談から犯罪の処罰まで、IRA が取り仕切ってたんですね。警察に行くのは交通事故のときぐらいだったそうです (保険が下りないので)。

 

しかし、それはまあ 80 年代の初めぐらいまでで、マリアさんの事件は 1997 年の話ですからそんな私設裁判が許されるわけありません。しかも、犯人はボーダーの南 (つまり、アイルランド共和国側) に「島流し」になったそうで、こっちに住んでる人にとってもたまったもんじゃありません。そういう「島流し」になった性犯罪者が8~10人ぐらいいるといわれています。

 

シンフェインは、レイプがあったことは認めているものの、組織としてこれを隠ぺいしたという事実はないとしております。

 

このスキャンダルによるシンフェインへのダメージですが、ある新聞記事によりますと、北の方ではほぼ影響ないだろう、と。北でシンフェインを応援するリパブリカンにとっては、私設裁判が必要だった背景がわかっているので、マリアさんの話にはそんなに驚かないだろう、ということでs。

 

しかし、南では話は別で、今回の世論調査では大丈夫でしたけど、これからまだ問題は大きくなる可能性もありますから、そうなると支持率に影響が出てくるかもしれません。ただ、シンフェインは性犯罪がらみのスキャンダルが過去にも 2 回ぐらいあったんですけど (アダムズのお兄さんが娘を性的虐待してたのをシンフェインが隠してたという疑い)、党勢には影響なかったんですよね。

 

しかし、マリアさんは、性犯罪被害を公にするだけでもたいへんだと思いますが、彼女の場合は自分の属するコミュニティー自体も敵に回す可能性があるわけで (彼女のおじいさんもIRAの幹部だったそうです)、とても勇気のある方だと思います。

 

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1 枚目の写真はジェリー・アダムズ、2枚目は取材に答えるマリアさん (アイリッシュタイムズ紙より)。