先日、アイルランドの政党支持率の世論調査結果がツイッターで流れてきて、シンフェイン(SF)がフィネゲール(FG)とフィアナフォイル(FF)に10%以上の大差を付けていたので驚愕しました。
🚨 POLL 🚨
— Next Irish General Election (@NextIrishGE) 2021年9月11日
B&A/Sunday Times
SF: 33% (+3)
FG: 23% (-2)
FF: 21% (-1)
LP: 5% (nc)
GP: 5% (nc)
SD: 2% (+1)
PBP-S: 2% (-1)
AÚ: 0% (-1)
I/O: 8% (-2)
September 2021
+/- July 2021.
と思っていたら、ほぼ同時期に行われた別の世論調査ではFGとはそんなに差が付いていなかった。ミホール・マーティン首相率いるFFはどっちもダメだったけれど。
🚨 POLL 🚨
— Next Irish General Election (@NextIrishGE) 2021年9月11日
Red C / Sunday Business Post
SF: 29% (nc)
FG: 28% (-2)
FF: 13% (nc)
LP: 5% (+2)
SD: 5% (+1)
GP: 4% (-1)
PBP-S: 3% (+1)
AÚ: 2% (nc)
I/O: 10% (-1)
3rd-9th September, 2021
+/- 26th June, 2021
Sample: 1,031
それから、アイリッシュ・インデペンデント紙のサイトに今日載っていたんだけど、シンフェイン党首のメアリー・ルー・マクドナルドが GoLoud というコメディ・ポッドキャストの番宣ビデオにお母さん役で出演している。
ダレン・コンウェイとジョー・マクガケンという主役の2人がポッドキャストのゲストが決まられないと言って悩んでいる。そこにシンフェイン・カラーの緑のトップを来たマクドナルドがドアをバタンと開けて登場。「車に乗せてってほしいの?」と母親口調でダレンに尋ねる。ダレンは母親をウザったがる息子の口調で「いまポッドキャストのゲストを誰にするか相談してるんだからちょっと待ってくれ」という。するとジョーが「お前のお母さん、シンフェインの党首じゃないか。メアリー・ルーに出てもらおう」とダレンに言う。「そんなカッコ悪いことできるか」とダレン。「出てもいいわよ。ただし、ダレンが部屋を掃除することが条件」とマクドナルド。「絶対掃除なんかしない」とダレン。「します、します。ダレンは掃除しますから」とジョー。「わかった、かあちゃんポッドキャストに出てくれ」とダレン。マクドナルドが扉を閉めて出ていくと、「部屋を掃除なんかするもんか」と言いながらダレンは二本指サイン。
マクドナルドはお母さん役が板についています。
昨日のことですが、この SF の支持率の高さについて考察するスレッドがツイッターで流れてきました。ここ↓から続く一連のスレッド。
SF is now the most popular political party in all public opinion polls.
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
So, rather than lazily assuming some malevolent manipulation is at hand, if one is serious about winning them back you need to understand how this has happened and who this *third* of voters are.
1/
シンフェインの支持率が高い理由:
その1: 長期的な人口動態の変化が左派に有利に働いている
まず、80年代以降、FFとFGの支持率は低下傾向にある。さまざまな研究によると、労働者階級の有権者が右派政党を支持する要因は宗教である (FFとFG は中道右派)。80年以降、アイルランドの宗教性はかなり弱まってきている。
2020年の総選挙で、ミサに行く人だけを対象にした質問では、昔の2.5大政党時代に似た結果が得られる。ただし、0.5の部分が労働党からSFに代わっている。
Indeed if you were to exclude non mass-goers from the 2020 general election, the composition looks remarkably familiar (though not quite) like the old two-and-a-half party system (except SF replacing Labour).
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
3/ pic.twitter.com/Nmh7tImjXS
党派への忠誠心や宗教性が薄まり、持ち家率が低下したことにより、自分が左派だと考える人が増えた (特に労働者階級)。そして、より多くの人が、”あからさまに”左翼 (社会主義、社会民主主義、共産主義を標榜する政党) に投票することを厭わなくなる。こうした政党に投票する人の割合は、アイルランドはかつてはヨーロッパでも飛びぬけて低かったのだが、最近は多くなっている。
So, more people are more open to supporting a party that is *overtly* defined as left wing. And have they?
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
Yes. Ireland had much lower levels of support for these parties at about ~15% in the 80s but today is no different from other Euro democracies with ~30% (and rising).
5/ pic.twitter.com/1ewuIM2jyI
シンフェインは左翼ではないのでは? そんなことはない。シンフェインの支持者は自分のことを左派だと思っている人が多い。
"But Sinn Féin aren't left wing they're..."
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
Not true. Their supporters do predominantly self-identify as left wing. (The following data relates to the 2020 GE)
6/ pic.twitter.com/OKA5uCjMZl
その2: ポピュリスト的な意見がSFに有利に働いている。
SFの支持者は、支持する主な動機として「変化」と「FF/FG (への不満)」をあげる。彼らの81%がほとんどの政治家を信頼していない。(ここでは、ポピュリズムは「人気のある政策を支持すること」ではなく「エリートへの不満」を指すものとする)
But I know where this is going and yes..
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
#2. SF benefits from populist opinion. When asked, SF voters cite 'change' & 'FF/FG' as their primary motivations. 81% don't trust most politicians.
(read populism as a disaffection with elites; not advocating popular policies)
7/ pic.twitter.com/owiiyS9ZOW
では、SFのポピュリズムの左派的な部分とは何か? それは移民などの社会的な問題ではない。それは、経済的な不満に根差すものである。
統計として総体で見れば、アイルランドの経済モデルは比較的成功しているように見えるが、個別ではそれほどうまくいっていない人もいる。そういう人がSFに投票する傾向にある。
Instead it is a left wing populism that seems more rooted in economic disaffection.
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
Hidden in aggregate economic statistics of a relatively succesful economic model is the fact that some are not doing *as well* as others.
And they tend to vote for SF.
9/ pic.twitter.com/Ber8jBZf7N
こうした人々は再分配の強化を望んでいる。
所得別でみると、年俸60,000ユーロ以上のところでSFの支持率ががくっと下がるのがわかる。
Income is a feature in this. You'll see how the SF vote share falls off a cliff in the 60k plus categories.
— Kevin Cunningham (@kevcunningham) 2021年9月12日
11/ pic.twitter.com/Qi7YuuuDAb
まとめ: SF の支持率の高さの要因は、1つはポピュリズムであり、1つは左派であり、1つは経済的弱者である。そして、これらの要素は互いに重なっていることがおおい。
以上です。
シンフェインはいま世界的に流行りの文化的には右で経済的には左ということで人気が出ているのでしょう。トランプもそうでしたし、お隣のボリス・ジョンソン首相もそうです。日本では安倍さんがそうでしたし、今回の総裁選では高市早苗さんががんばっています。