たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

総選挙の結果に対するアイルランド/イギリスの報道について。

イメージ 1

総選挙は大方の予想通り、自民党の圧勝に終わったわけですが、こちらでも大きく報道されています。

 

「欧米では日本の右傾化が懸念されている」と日本で言われているみたいですが、これはまあ半分本当。もっと正確にいうと、極東地域の安定が崩れることが懸念されている、ということだと思います。

 

昨日(日曜)の夜、Match of the Day 2 を見ようとBBC を付けていたら、その前に 10 時のニュースがあって、現地からのレポートが挿入されていました。

 

レポーターは「Right-wing Liberal Democratic Party (右翼の自民党)」が勝ったという話から始めて、最後は外交の話で、「アベが宥和的な政策をとるか、対立的なアプローチをとるか、まだわからんけど、この地域のテンションが高まる可能性がある」みたいな感じで締めてました。

 

さすがに、英国紳士の BBC だけあって、対立的なアプローチをとること自体が悪いことだという言い方はしていなかった。(わかりにくいといけないので補足しますと、「腹に一物必ずある」という意味で紳士という言葉を使いました)

 

日本語の「右翼」には否定的な意味合いがこびりついちゃってますが、英語でいう right-wing はまあそれほどでもないです。それでも、「右翼的」と呼ばれることが気に入らなくて、学校や職場の友達に「日本の右傾化」について聞かれたりしたら、私だったら、たとえばこういうふうに答えます。

 

「ほかのどの国とも同じように、日本にも自国を守る権利がある。ただ、その権利を行使しているだけである」。中国に領土的野心があるというのは言い切っちゃっていいと思います。彼らは日本だけじゃなくて他の東南アジアの国々にもちょっかい出してます。日本では「自分を守る(Defend)」ことが潔くないことだとされるけど、こっちだと「自分を守る(Defend)」ことは非常に重要な価値ですので、自信を持って言っていただいて結構です。多様性を認める社会は、個人や組織が自分を守る権利を認めないと成り立ちません。

 

上の BBC のレポートは本当にニュートラルなものだったけど、もうちょっと意地の悪い書き方をしているのももちろんある。欧米にしてみたら、日本人は人がよくて、言えばお金出してくれるけど、戦略的な行動はあまりできない人たちのままでいてくれた方が都合がいいし、日本をディスった方が読者受けもいいだろうし。それから、あんまり調べずにいい加減なこと言ってることも多いので(BBC は、選挙当日(日本時間朝)のニュースで、今回の選挙は投票率が高くなりそうだ、なんていい加減なことを言ってた)、日本のメディアが「欧米はこんな風に言っている」なんて報道しても、あんまり間に受けない方がいいと思う。彼らは都合のいいところだけ切り取ってニュースにするから。

 

それから、今日のアイリッシュ・タイムズ紙には、例によってデビッド・マクニール記者のレポートが載っていた。前にもこの記者は偏ってるっていう話を書いたと思うんだけど、今回もひどい。視点がもう中国・韓国目線なんですよ。社民党の福島さんが 10 年前に主張してたようなことをそのまんま書いてる。

 

 

最初の文からして、「... Japan’s conservative Liberal Democrats have scored a remarkable electoral comeback in a victory with potentially ominous implications for the rest of Asia.」(日本の保守的な自民党が前回の大敗から一転して大勝利を収めたんだけど、これは日本以外のアジアにとってどす黒い影を落とす可能性がある)。いや、アジアは中国、韓国、北朝鮮だけじゃないから。

 

あと、この記事でもそうなんだけど、従軍慰安婦を軍が強制徴用したっていう話がもう既成事実になりつつある。これはほんとうに何とかしないといけない感じ。朝日新聞あたりに責任取らせる方向で動かないとまずいと思う。

 

ここから先は私の個人的な考えになりますが、中国と日本の間で問題を起こしたいのはっどっちかというと中国です。向こうの注文相撲に乗って、事を必要以上に荒立てるのは日本にとっては得ではない。ただ、だからといって、対立的なアプローチをとるというオプションをみすみす捨てて立場を弱くするような馬鹿な話もないわけで、瀬戸際外交やってくる相手に対しては瀬戸際外交上等ぐらいの心構えが必要です。

 

そうやって時間を稼ぎながら、東南アジアの国々やインドと協力・交渉・取引して、中国を囲いこんで、彼らが自分で「日本と問題を起こしたら損だ」と思うように仕向けないとこの地域の安定は実現しないだろうと思う。日本の大新聞は中国との宥和政策ばかりを説いて、それ以外のオプションを用意しようとすると文句を言うんだけど、カードが宥和しかないんじゃ足元見られて交渉が不利どころか、まともな交渉もできないでしょう。握手しようと思っても、相手が拳を握り締めてたら握手できないわけで、交渉事は事前にどれだけカード(オプション)を用意できるかが勝負です。


(写真はアイリッシュ・タイムズ紙から)