たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

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岡村昭彦写真展 @ Photo Museum Ireland

 

私は絵葉書を集めているので、テンプルバーの Photo Museum Ireland のブックショップによく行きます。先週の土曜日にも新しい絵葉書が出てないかと見に行ったんですね。そしたらありました。Akihiro Okamura という日本人のフォトグラファーの撮影した北アイルランド紛争の写真の絵葉書です。どういうわけか岡村さんの本も平積みになっていました。日本語の本とこちらで出版された写真集です。

 

岡村さんの名前はそれまで聞いたことがなかったので、北アイルランド紛争の写真を撮っていた日本人がいたんだなあという感想でした。そして、絵葉書と本を2冊とも買って帰りました。

 

家に帰ってインターネットで調べてみると、岡村昭彦写真展を上の階でやっていたようなのです。見逃しました。アイリッシュ・タイムズなどの大手メディアでも紹介されていました。

 

そこで、さっそく水曜日に行ってきました。平日昼間というのに人はかなり入っていました。

 

岡村昭彦さんは1929年東京生まれ。お父さんは海軍参謀でエリートの一族といってもいいでしょう。共産主義に傾倒して医学校を退学になり、無免許で医療を行い逮捕されるなど、波乱の多い前半生だったようです。

 

岡村さんを写真家として有名にしたのはベトナム戦争です。「醜いベトナム戦争」と題する9ページにわたる記事が米国『LIFE』誌に掲載されたのは1964年のこと。その後、南ベトナム政府から5年間の入国禁止処分を受け、その間に取材対象となったのが北アイルランドでした。

 

岡村さんの写真の特徴として一目でわかるのはカラーであること。当時は新聞が主な発表媒体でしたからほとんどの報道写真はモノクロです。北アイルランド紛争の写真でカラーなのはあまり見たことはありません。岡村さんは『LIFE』誌などの雑誌への掲載を狙っていたのでカラーで撮っていたようです。

 

また、岡村さんは心情的には被抑圧者という立場のアイルランドに思いをよせていたようですが、部外者/アウトサイダーの目で一歩引いたところから現場をとらえているようです。しかも、暴力の現場というよりも、暴力と暴力のすきまの時間を捕えた写真が数多くあります。手持無沙汰の兵士、焼けただれた家の前でたたずむ人、路面に残る血のりと死者を悼む黒旗など。

 

特に印象に残るのはきれいに整列した6本の牛乳瓶。配達されたばかりなのか封はされたままです。毎朝の規則的な日常の光景なのですが、飲み干された後の牛乳瓶は何に使われるのか。北アイルランド紛争を知っている人ならピンとくるはずです。

 

岡村さんは実際にアイルランドに何年か住んでいたそうです。アイルランドで子供も生まれ、そのうちの少なくともお1人はそのままアイルランド人としてこの国に暮らしています。メディアの取材にも応えていらっしゃいました。

 

写真展では岡村さんに関する短いドキュメンタリー映像も見られるんですが、岡村さんの写真はこれまでアイルランドでもほとんど知られることがなかったそうです。

 

岡村昭彦写真展は6月6日まで。日曜と月曜はお休み。入寮無料です。

 

 

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