先月の話になりますが、2020年12月18日、オファリー県のシャノン川沿いにあるレーンズボロ火力発電所が操業を終了しました。その1週間前にはオファリー県のシャノンブリッジ火力発電所が操業を終了しています。
この2つの発電所に共通するのは、ピート (泥炭) だけを燃やすことで発電していたという点です。泥炭を燃料にした火力発電所って、アイルランドらしいですよね。
ただ、環境への配慮という観点から、CO2を大量に出す泥炭を燃やすことは抑えるようにとEUなんかからも厳しく言われていまして、2019年の11月にアイルランドの電力会社であるESBはこの2つの発電所の閉鎖を発表していました。
泥炭を燃料に使っている発電所はアイルランドにもう1つあって、それはオファリー県のエデンデリー発電所です。ただし、こちらはピートだけでなく、バイオマスも合わせて燃やすことで電力を生み出しており、少なくとも2023年まではこの形態で操業を続ける許可をもらっているようです。
レーンズボロ発電所の閉鎖を報じる RTE の記事を見てみますと、この発電所が排出する温水により川の水も温まり、このあたりには魚が豊富に泳いでいるそうで、ヨーロッパ中から釣り愛好家の皆さんが何千人も訪れていたそうです。これから徐々に川は発電所ができる前の状況に戻るわけで、ここを訪れる釣り人も少なくなるのでしょう。
したがって、発電所の閉鎖は、自主退職や配置換えを余儀なくされる発電所職員の皆さんだけでなく、地域にも大きな影響があるようです。
環境の面から言いますと、タイワンシジミ (Asian Clam) などの外来種が住み着いて生態系に害を及ぼしたりもしているようで、住民の皆さんは ESB や政府に新たな投資と環境の整備を求めています。
もちろん地元の皆さんも手をこまねいているわけではありません。レーンズボロの町にはラク・リー蒸留所というジンやウイスキーを作っている会社があるのですが、ここのCEOがインタビューに答えて「私たちは、製造業や観光業など、新しい産業をこの町に呼び込もうとしている」と語っています。
そんなラク・リー蒸留所は、発電所の閉鎖を記念する意味で、限定版のウイスキーを2種類発売しています。その名もザ・ステーション (英語で発電所は Power Station です) とマウントディロン (町の近くにある山の名前)。
これらのウイスキーは、アイリッシュ・ウイスキーとしては珍しいピーティッド・ウイスキー。つまり、ピート (泥炭) で温めて発芽させた大麦を原料に使っているのです。このアイデアはお見事と思います。