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演劇『グローニャ』(Grania)

アビー・シアターで演劇『グローニャ』(Grania)を見てきました。『グローニャ』はアビー・シアターをWBイェーツなどと共に立ち上げ立ち上げたオータスタ・グレゴリー (グレゴリー夫人) が1912年に発表した戯曲。アイルランドの神話というか伝承文学のフィン物語群にある『グローニャとディアムッドの追跡』に想を得た作品です。

 

主人公のグローニャは上王コーマックの娘。フィアナ騎士団の団長フィン・マックールとの結婚が決まっています。フィンは妻を亡くしたばかりでグローニャよりもかなりの年上。グローニャはフィンの部下で騎士のディアムッドと恋仲になり駆け落ちします。それを追いかけるフィン。

 

アルスター物語群のデアドラとニーシャとコンフォヴァル・マク・ネサ、アーサー王物語のトリスタンとイゾルデランスロットと王妃グィネヴィアなどにもみられる、年配の権力者と若い男女の三角関係にまつわる愛憎劇ということになります。グレゴリー夫人は特に、性的なものも含めて女性に対する抑圧を跳ねのける存在としてグローニャを描いた部分があったのではないかと思います。

 

1907年にアビー・シアターで上演された J.M.シングの『西の国のプレイボーイ』が暴動の引き金になったのは有名な話です。この劇は父親殺しと三角関係が主題という物議を醸す内容だったわけですが、暴徒のみなさんは父親殺しのスキャンダラスさもさることながら登場する女性たちの振る舞いがふしだらだとも感じて暴れたようです。グレゴリー夫人はこの劇の出来には批判的でしたが、女性の描かれ方は好意的に見ていました。

 

実はグレゴリー夫人の実生活もグローニャの生きざまに重なる部分があるんですね。グレゴリー夫人は28歳のときに35歳年上のウイリアム・グレゴリー卿と結婚します。しかし、夫婦ででかけたエジプトで若いイギリス人の詩人のウィルフレッド・スカウェン・ブラントという詩人夫妻と仲良くなります。ここからグレゴリー夫人とブラントとの情事は始まり、彼女が書いたソネットをブラントが書いたものとしてブラントの本に含めたりもしたそうです。

 

グローニャを演じたのはカーロー出身のエラ・リリー・ハイランド (Ella Lily Hyland)。アマゾン・プライムの『Fifteen Love』などに既に主演しています。フィンを演じたのはダブリン出身のローカン・クラニッチ (Lorcan Cranitch)。ベテランのバイプレイヤー。ディアムッドを演じるのはベルファスト出身のナイル・ライト (Niall Wright)。BBC北アイルランドの『Hope Street』という犯罪ドラマ・シリーズでメイン・キャラクターの1人を演じています。演出はアビー・シアターの芸術監督であるカトリーナ・マクラクラン (Caitriona McLaughlin)です。

 

アビー・シアターでの公演は10月26日まで。

 

 

 

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