ハートブレイカーズやラモーンズが歌ってる「チャイニーズ・ロック」という曲は、別に中国のロック音楽のことではなくて、麻薬の歌だというのは知っていた。だが、5年ほど前にテレビジョンがダブリンに来た時に聞きにいって、そのとき何で「チャイニーズ」なのか初めて知った。
テレビジョンは前座でストーリーテラーのおっさんを連れてきていた。ギターとベースの演奏をバックに、ストーリーを語るの。そのおっさんは、テレビジョンがぶいぶい言わせていた70年代のニューヨークの生き証人で、語り部をやっているわけです。
彼によれば、ある時点までNYのヘロイン市場はプエルトリコ系が支配していたんだけど、あるとき中国系ギャングがその市場に殴り込みをかけてきて、品質がよかったもんだから、ユーザーを根こそぎ奪ってしまった。だから、チャイニーズ・ロック。ほかにもいろいろ枝葉の話もしてたんだが忘れてしまった。
テレビジョンは私はすごく好きなバンドで、アイルランドに来るときにCDを売ってしまったのだが、こちらで買いなおそうと思って中古CD屋に行った。で、アイルランドで家を借りるとだいたい家具付きなのだが、当時(90年代半ば)はテレビは付いていないのが普通だった。
週払いでテレビを貸す店もあったし、中古テレビ屋もあった。そのCD屋は学生が多く暮らす地区にあったので、中古テレビも一緒に売っていた。店員が「何か探してる?」というので私が「テレビジョン」と答えると、「ああ、いまテレビ担当者が外出中なんだ。後でまた来て」と言われ、私も面倒臭かったのでそのまま帰った。
その頃、私が別の場所で買った中古テレビは、ファーガソンというイギリスのメーカーのものだったが、当時としても見るからに古めかしかった。大きなボタンを押してチャンネルを上下させるタイプ。だが、映りは異様によくて、顔がしわくちゃなのに、白髪染めで髪の毛だけ黒々している人みたいだった。
